第17話 上海攻略/初陣②

 隼人は、戦場を駆けた。都心の中心部に近づくにつれて、目の前からは弾幕の嵐が吹き寄せていた。実際、実弾と言うのは曳光弾でない限り見えない。それか、弾頭が巨大であるかどうかだ。だからどの位置に敵がいるかなど目視だと、とても分かりにくい。

 アニメや漫画では過剰表現がされているが解釈を改めろと内心愚痴った。索敵するとその数は30体で先の倍である。回避に集中し過ぎて攻撃するすべがない。


 『ネクシス1、妥協せずに行きましょう』


 「でも攻撃が激しくて」


 『大丈夫です。私の指示で動いてください』


 「了解」


 『ミサイルポッドを全弾無誘導で発射してください』


 隼人は言われた通りに発射すると散らばるようにしてミサイルは飛翔した。


 SN-1レイヴンはミサイルを察知すると迎撃行動に入った。ミサイルが迎撃されると同時にレインが指示を出す。


 『今です。加速してください』


 加速をかけてミサイルの爆煙に飛び込んだ。爆煙からを抜け出し眼前にレイヴンを1体目視した。頭部に向かって射撃、白色の光線が直撃した。


 『右です』


 右からSN-1レイヴンが近接戦を仕掛ける。瞬時に間合いを取り照準を合わせて射撃。これも頭部に直撃した。


 『後ろです』


 多少掠ったが感覚的に下に降下すると、銃弾の雨が頭上を舞った。直ぐに動いていなかったらハチの巣にされているところだ。そのまま地上に着地、前方に蹴り出すと同時に反転してミサイルをロック、全弾発射した。次々に命中していく中、数体がミサイルを掻い潜り接近してきた。


 ...やっぱり、一発では終わんないか...


 ヴァリアブルライフルを、ラックに固定し自動照準せ援護させつつ、両腕の光粒子剣フォトンソードを、展開すると射撃で怯んだ隙をついて切り裂く。

 

 裂け目からSN-1レイヴンが見えた。回避しようするも判断よりも先にに銃弾の雨が隼人に降りかかった。


 「くっ!」

 

 隼人は両腕で体を庇いながら、粒子スラスターを吹かして接近していく。銃弾は、装甲シェルに弾かれるように散らばっていく。そのまま、光粒子剣フォトンソードを両方展開しクロスするようにしてSN-1レイヴンを切り裂いた。


 

 前方から10体のレイヴンが見えた。向こうから、銃撃が来ると隼人は背部ウェポンアームからロケットランチャーを受け取り3連射。


 前の1体はシールドを破壊された後に2発目が直撃し爆散した。隼人は、後退しつつロケットランチャーを打ち続けた。


 『ネクシス1、後方に注意を』

 

 後ろを振り向くと壁がすぐそこにあった。


 「うわ!」


 隼人は、急ブレーキをかけ上昇をした。もちろんレSN-1レイヴンもそれに合わせて追ってくる。ビルの壁に沿って頂上を抜けると、いつの間に都市が一望できるだけの高さにいた。そんな、風景に浸るのもつかの間に至るとこから、銃撃が隼人を襲った。


 隼人はビルを超えて直ぐに遮蔽物のある地上に向かう。後ろからの攻撃もあるので、至る所が蜂の巣のようなものだ。


 ビル街に降りると、前から何か光が見えた。瞬間、音速を超える勢いで何かが隼人の横を通過した。着弾と同時に背後のビルが倒壊していく。


 前方にはロケットランチャーのようなものを装備しているSN-1レイヴンを見た。


...なんだ!...


 『超音速ロケットランチャー、カール・Mk-2です。音速で飛翔するロケット兵器です。回避しつつヴァリアブルライフルのレーザーで対処可能です、敵は連携しています』


 「了解」


...しかし、どうやって...


 無反動砲と同じぐらいのロケットが飛んでくるの兵器だ。正面突破では、まず撃ち落とされるだろう。それに、一体だけとも限らない。

 隼人は、ロケットランチャーを2発撃ち、ヴァリアブルライフルに持ち替えると直ぐに、左からSN-1レイヴンを責めた。後ろからの追撃が激しい為、早くにでも片を付けたかった。しかし、その焦りが命取りだった。


 左からの射線が通った時レーザーをフルオートで発射した。だが、同時にレイヴンもこちらを捉えていたのだ。


 「なっ」


 瞬間、強烈な衝撃が隼人を襲う。一瞬スローモーションになる感覚を過ぎると、一気に後方に吹き飛ばされた。


 「ぐはっ!」


 胸のあたりに、鈍器で叩かれたような感覚が響いた。だが、スーツへのダメージは皆無だ。衝撃に対しての、耐性が隼人にはできていなかったため受け止めきれなかったのだ。そのまま、隼人はビルの壁に叩きつけられた。


スーツのお陰で痛みは余り感じないが重い感覚が全身にのしかかったような感じがした。 今ので完全に動きが止まってしまった。そして最悪なことにレーダーから60体以上のIAが押し寄せていた。前からは追ってきたレイヴンがこちらに向かっ来るのが見えた。


 ...このままじゃ、殺される...


一瞬、あの時の感覚が過ぎった。母を目の前で殺された日だ。あの恐怖心が未だに抜けないのは、隼人にとって大きな痛手だった。


 『ネクシス1、この場合はチャージショットが有効です。威力の高いビームで掃討できます』


...行けるのか?...


『信じてください』


思いとは逆に体が動いた。

コンクリートにめり込んだ体を無理やり引き剥がして、地に足を着く。両手で構えて足場を固定し射撃準備が完了した。隼人は、マガジンをリロードして前方のSN-1レイヴン郡に向ける。引き金に指をかけると銃口が輝き出力が一気に上昇していくのが分かる。ターゲットが次々とロックされていく。


 『いつでも撃てます』


 腹に息を含み力強く引き金を引いた。巨大な粒子の塊が銃口から発せられ、直線状に伸びていく。直撃したSN-1レイヴンは、蒸発し触れたものや付近にいたIAは、その圧倒的熱量によってバッテリーが誘爆し爆散していく。最後に残ったのは、熱量によって溶解し抉れたコンクリートだけだった。 周囲には、IAの残骸が広がっている。


『敵IA撃破確認お見事です』


「死ぬかと思った」


隼人はほっと胸を撫でおろした。初陣にしてはよくやった方だ。60体のIAを倒せたのは、スーツの性能によるものが大きいが、それを短期間で操れるにまで至った彼のセンスこそが生死を分けたのだ。


『一度帰還しましょう』


「了解」


 隼人は指示された座標に従って母艦へと帰還した。








 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る