第13話 レインちゃんの戦闘訓練 その1


 隼人は水槽から出ると横にかけてあるタオルで体を噴き、白い患者服を着た。


 身体をまさぐるとさっきまであった傷は綺麗になくなっているが、欠損した右腕はそのまんまだった。先端にはまだ機器が取り付けてある。


 二日しかたっていないのに、この治癒速度は以上だ。多分あの水槽の液体の効果なのだろう。


 左目に関しては、何にも違和感なく見えている。しかも触っても痛くない、何とも不思議な感じだ。


 「この左目は何?」


 「それは義眼です。戦闘用にも対応したの高性能の物になっています。隼人を救出した際に、目に破片が杭噛んでいたのでその代わりとさせて頂きました」


 ...そっか、戦闘用か~......ん?


「ちょっと待って今なんつった?」


「はい、救出した際に目が負傷と」


 「違う違うそうじゃない、その前」


 「戦闘用の義眼と申しました」


 「ちゃっかり、戦闘用にしてんじゃねーか!」


 「隼人は頼みを引き受けてくれると私は最初から分かっていました」


  落胆しながら隼人は肩を落とした。 


 「ありがとう。ちゃんと見えてるよ」


 「それは、良かったです。では行きましょう、着いてきてください」


 そう言って2人は部屋を後にした。部屋を出ると隼人は、少し船内に違和感を感じた。雰囲気が来た時と少し違う気がしたのだ。


 「この中は?なんか来た時よりも長く感じる気がするんだけど」


 「はい、私たちがいるのは敵船の中ですからね」


 「はぁ!大丈夫なのそれ」


  バクンと心臓が跳ね上がった。


 「ご安心を、隼人が乗り込んだ脱出艇をコアとして今は完全に私の管理下ありますので大丈夫です」


 「へぇ~。じゃあ、あの人型ロボットとかいるの?」


 「これは、空母ではありません。どちらかと言うと、ステルス戦艦なので、隠密行動向きのものでありますが、内部にIAは搭載されていませんでした」


 「そっか、良かった~」


 隼人は胸を撫で下した。まだ、レイヴンに対してトラウマがまだ残っている分、見てしまった時は動悸が止まらなかっただろう。


 長い廊下を歩くこと数分、一室に着いた。中はトレーニング器具一個もない個室で、中央に大きなカプセルベッドがあるだけだ。


 「あれ、訓練するんじゃないの?」


 「しますよ。あの中で」


 「あれで」

 

 隼人はカプセルベッドを指した。


 「はい、隼人には仮想世界で訓練して頂きます」

 未来の技術を体験できるなどそうそうないであろう。隼人の少年心が今にも弾けそうだ。


 「未来では当たり前のシュミレーターですからね」


 カシュ―


 カプセルベットが開くと隼人は中に入り仰向けに寝そべった。


 「これで合ってる?」


 「合っています」


 カプセルのカバーが閉じて、中に空気が充満していく。酸素ベッドみたいで気持ちい感じがしていた。すると徐々に眠気が押し寄せてきた


 「そうしましたら、そのまま眠気に身を任せてください」


 隼人は、レインのぼやける声を聴きながらまた目を閉じたのだった。




 『コネクション完了』


 電子音で目が覚めた。周りは、物が何一つない真っ白い世界になっている。


 「隼人、具合はどうですか?」


 レインの声が空間に響いた。隼人は、体を捻ったり、肩を回したりして確かめる。


 「うん、なんともないよ」


 「分かりました。それでは」



 すると、世界が急に変化した。まるで粒子が収束して世界そのものを創り上げていくような感じだ。射撃場に、武器ラックなどその他、隼人はいつの間にか訓練所のようなところにいた。


 「ようこそ戦闘技能訓練所へ」


 後ろを振り向くとレインがそこにいた。


 「それでは、訓練を始める前に」


 「?」


 レインが空間に浮いたパネルを操作をすると、隼人の体が急に光りで包まれた。


 そして、現れたのは先ほどよりも一回り体格が大きくなった自分がいた。身体は普段よりもより一層筋肉質になり、身長も173㎝から177㎝と伸びていた。欠損していた右腕には義手が付けらていて、右の義眼も問題なく動作している。そして、戦闘服も人体を模したような全身タイツの戦闘服になっていた。


 「これは?!」


 「訓練後、現実世界での貴方の体です」


 隼人は体を動かすと、いつもより体が軽いことに気が付いた。ジャンプすると身長の2倍は飛んだのだ。

 

 「すごい、体が軽い」


 「身体強化措置を行えばこれぐらいのことは容易です。それでは、本日から約一週間の訓練期間を終えたのち戦場へ向かいます」


 「それは、少し早すぎないか?」


  普通の軍人でも最低半年の訓練期間は必要なのに対し隼人は素人でたったの一週間だ。これは、大きな痛手だった。


 「猶予がありません。こればかりは仕方がないのです」


 「わかった」


 「では訓練を始めましょう」


 こうして、隼人の戦士としての第一歩が次始まったのだった。






ステップ1 射撃訓練


「隼人には、射撃の方法及を学んで頂きます」


「はい」


「まず、従来の射撃の仕方ですが、基本的には両手で銃を保持し、足は肩幅に開き、トリガーを握る腕とは逆の足を半歩前に出し、膝を少し曲げ前屈気味に構えます。そして脇を閉めストックを肩にハメてます。そして、サイトで目標を狙います。この時トリガーに指をかけてはいけません」


「はい」


「今回使用するのは、ブルパップ式アサルトライフルAG5です」


 渡された銃は外見はVHS-2を彷彿とさせている近未来的なデザインだ。サイトも光学サイトになっている。マガジンはドラムマガジンで装弾数は40発だ。

 対IA用の専用弾を使用しているらしく、両手で持ってみると体幹で1㎏もなく、でそして固いというのが直感的な感覚だった。横の表記には2㎏と記されている。この軽さは身体強化措置によるものだろう。


 隼人は言われた通りの姿勢をとった。横の確認用の人型アバターを見ながら自分の動作を何度も確認する。


すると10m前に的が7体出現した。


「準備ができましたら、マガジンをリロードしてください」


 隼人は、視界に表記された指示通りにマガジンをリロードしセレクターをセミ合わせる。


 ビィー


 ブザーが鳴った。


 隼人は、直ぐに射撃を開始した。


 バン バン バン バン


 ジーンと手と肩に反動が行く感覚が伝わる。まだ初めてなだけあって、まだ銃身のブレや姿勢保持が少しぎこちない。だが、数発外し程度で、マガジン使い切らずにすべて命中させることができた。打ち終わり空中の表記指示に従って、セレクターと切り替え周囲を確認する。


 「最初は、このくらいでしょう。初めてにしては、上出来です。まずは射撃そのものに慣れて頂いた後に、他の武装も使用していきましょう」


 「うん」



 この後にはロケットランチャーやレールガン等など他の手持ち武装を使用した訓練が続いたのであった。



 



 


 

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