第14話 レインちゃんの戦闘訓練 その2
ステップ2 メイン武装
「今回隼人には、メイン武装を使用した戦闘訓練をして頂きます」
「メイン武装?」
「はい。これです」
そうしてレインが見せたのは、SF映画に出てくるようなパワードスーツだった。色は白と青系の薄花色で塗装されいる。バイザーはオレンジ色だ。
「かっこいい!!」
「これは、特殊戦術強化服。通称ベクタースーツと言います。隼人にはこれを装着して戦闘を行って頂きます。特徴としては、全環境での活動が可能です。戦闘スタイルは立体軌道を主眼としているので、背部には縦に双発の粒子スラスターが設置されています。脚部にも粒子スラスターが一機ずつ取り付けられています。装甲材はナノ合金を使用してします。防御性能を例えるなら、戦車の砲弾がしてもかすり傷一つ着きません。武装も両腕に
「へぇ~」
「また、動力源には縮退炉が超小型に空間圧縮されて内蔵されています」
「まじか」
...縮退炉なんて物語の世界でしか聞いたことないよ。実現できるんだ...
「ベクタースーツの構造としましては、3種構造になっています。内側から順に
空中にホログラムが出現した。内容はどうやらこれらの説明のようだ。
次に
「最後にヘルメットですが、通常モードと戦闘モードの二つ存在しています。通常モードはバイザー(オレンジ色のフィルター)だけの時です。これは、緊急時や内部の超小型カメラが損傷した時に視界を確保するための物で基本的には使用されることはありません。次に戦闘モードですが、装着した際にヘルメットが変形し顔全体を
ヘルメットが変形すると上部と左右の装甲が展開、変形し通常(戦闘)モードが出来上がった。
「ここまでが、特殊戦術強化服もとい、ベクタスーツの基本性能になります。何か質問はありますか?」
そう聞かれると、隼人は輝きを増す瞳を一旦抑えてレインに向き直った。
「ありすぎるけど時間かかりそうだからやめとく」
「分かりました。聞きたい事があれば、いつでも仰ってください」
「ありがとう」
「では実際に装着してみましょう」
「はい」
隼人は、空中の表記指示に従って
装着が終了し、試しに歩いてみると意外と動きやすく
「どうです?」
「体の重さを感じないかな」
体感だと鳥の羽の様な感覚だ。
「ならよかったです。それでは最後にヘルメットを装着してください」
隼人はヘルメットを手に取り、ゆっくりと被った。
ヘルメットとボディー側がフルメタルナノマシンで結合し、首元のアタッチメントに接続された。プシューッという音ともに空気が内部に入ってきた。
カチャカチャ
ヘルメットが、隼人の頭の形に合わせて最適化されていく。最後にヘルメットが変形して戦闘モードへと変形した。
「映像は、ニューロリンク
「大丈夫、違和感ないよ」
「では、メイン武装の解説に移ります」
すると隼人の目に見たことない銃と四角い筒のようなものが出現した。形はブルパップ式だが全体的にメカメカしい印象が見て取れる。
「型式番号VR-9。 正式名称は可変式ライフルtype9、通称ヴァリアブルライフルです。この銃の特徴は、実弾、レーザー、ビームの3種類の弾が発射可能であり、全距離対応型の銃です。そして距離や弾薬に応じて形態変更します」
レインは横の四角い筒に目を移した。
「こちらは自動装填
...なんとまぁ、男のロマンのが詰まった武器が出てきた...
「でも、これ攻撃が当たったらまずくない?」
武器庫を素のまま戦場で持ち歩いているようなものだ。被弾したらひとたまりもないだろう。
「その辺りは検証済みです。使用されている材質は、極めて強固な素材で実践での検証は、熱光学兵器はおろか物理的攻撃でさえ損傷を与えることはできませんでした。全環境での動作可能で、マグマの中でさえ問題なく動作します」
...まじか...
「それに装弾数は多いんだね」
「それは、これから訓練する戦闘方法に関係しています」
「?」
「では、自動装填
隼人は表記の指示に従って、右腰のロボットアームに自動装填
「それでは、立体機動戦闘術の訓練に移らせて頂きます。立体機動戦闘術とは、1対多を主眼とした3次元軌道による一撃離脱戦法のことです」
「ごめん、もっと分かりやすく教えて下さい」
「はい。分かりやすく言うと立体軌道をしつつ多数の敵を相手取る戦法の事です」
...ふむふむ...
「こればかりは、隼人の場合実際に動いて頂いた方が理解されるかと思います」
...確かに、さっきから説明ばかりで全然頭に内容が入らなかった...
「それでは飛んでみましょう。方法は飛ぶイメージをすればスーツは思い通りに動いてくれます」
「イメージか....」
隼人は、試しに空中に軽く浮遊するイメージをしてみた。すると、浮遊感と共にゆっくりと足が地面から離れた。
「あ、浮いた!」
「その調子です。今度はそのま前に進んでみましょう。ゆっくりで構いませんよ」
「うん」
隼人はゆっくりと進むイメージをしてみた。スーツは思い通りに少しづつ前に進み始めたのだ。
「やったぁ!」
「それでは、一気に上昇してみましょう」
言われたとおりやってみると今度はメイン粒子スラスターの出力が急激に上昇し、拭き束されるように上方へ加速した。
「へ?!」
そして、天井に全身で激突した。
衝撃で気を失った隼人は身を任せるようにし自由落下していく。
地面すれすれでドローンが隼人をキャッチした。
スーツから電気ショックが施されると、隼人は目を覚ました。
「イテテテ」
全身に痛みが走った。衝突間際で、回避の直ぐさを取ったのが帰って受け身になったのだろう。というより、仮想世界にも関わらず、傷みの感覚がリアルなことはむしろ現実と勘違いしてしまいそうになる。
「ふぅ、危なかった」
「もう手遅れですよ」
「空中浮遊に関しては使用者の熟練度が必須です。このまま数時間は、飛行の練習をしてみましょう」
「わかった、やってみる」
数時間後
...なるほどな、イメージと言うよりも体の感覚で動かしたほうがやりやすいんだな...
慣れてくると、コツもすぐにつかめてしまうもので、現在隼人は空中を縦横無尽に飛び回っていた。急加速、急停止はもちろんバク転やバレルロール、ホバー走行など様々な飛行を習得していたのだ。
――――――――――――――
...やはり、知識と感覚の差ですね...
隼人はどちらかと言うと感覚派だ。だが知識が感覚に伴っていないと、まともに動くことすらできないのだ。レインはそれを見抜き、専門知識を感覚的な説明と合わせて指導したのだ。その結果がこれだった。スーツも防御性能を低下させ痛感覚を強調させるのは、性能に頼り過ぎない事が加味された上での措置である。
...体感での訓練でここまでの習得スピードには驚かされました...
習得に個人差はあるが、ここまで相性がいいのは見たことがなかった。
...これなら、少し早めてもよいかもしれませんね...
――――――――――――――――――――
「それでは、次は飛行したまま射撃してみましょう」
「わかった!」
隼人は、自動装填
眼前には、人型ターゲットが数体出現した。
「はい」
ビィー
ブザーが鳴った。
「ふん!」
隼人は、モードを実弾に切り替えた。するとヴァリアブルライフルはレールガン形態へ変形し、マガジン口をコネクタに接続しリロードする。そしてターゲットに向かって構えた。
バン バン バン
まだ射撃には不慣れなことから、距離100mの的を狙うに少し時間が掛かってしまうが、当てることには成功した。
「次に立体飛行しながら発砲してみましょう」
隼人の全方位に的が出現した。しかも一定方向に移動する移動型ターゲットだ。
隼人はスラスターを吹かし一気に急接近した。ヴァリアブルライフルを構えて発砲、命中すれば次にターゲットにめがけて発砲した。そこにトリガーを休める暇などなかった。身体全身を使った射撃は、集中力と体力を同時に奪っていく。
「慣れてきたら片手でもやってみましょう」
「できるか!そんなこと」
「可能です。ヴァリアブルライフルのサイトにはカメラが内蔵されています。カメラ映像を脳に直接情報を送ることで、目で視認せずにターゲットを狙えます」
「つまり、これを使えばノールックショット紛いなことができるっていうこと?」
「そういうことです」
「わかった。試してみr」
隼人は、レインの方に目を向けると唖然とした。そこには、金髪で軍服を身に纏った美女が立っていた。
「一つ質問なんだけどいい?」
「なんでしょう?」
隼人はヘルメット越しに顔を赤面にした。
「それはどうしたの?」
隼人の目線の先には軍服を着た金髪に碧眼の女性がいた。髪を後ろで束ねていて、高身長に服の上からでもわかる張り詰めんばかりの巨乳。瞳の大きい切れ目に綺麗に通った鼻筋。ぷっくりした唇の下にはほくろがある。両手にはタブレットが握られていた。
「隼人の気合いが入るように貴方好みアバターを生成しました。いかがですか?」
...い、いつの間に...
「に、似合ってるよ」
「もっと正直になられた方がいいかと」
「・・・」
「沈黙は肯定と判断してよろしいですね」
レインは微笑んで隼人を見た。
「うん」
「よかったです。そして隼人に残念な報告があります」
船内に警報音が鳴り響いた。
「え?」
「これを持ちまして、訓練を終了します」
「どういうこと?まだ後、4日もあるのに」
隼人は不安になった。飛行には慣れても実戦を想定した戦闘訓練はまだ行ていないからだ。
「はい、仰る通りです。ですが、これ以上はできません。敵の進軍速度が私の想定を遥かに上回っています。これよりプランを繰り上げ隼人には出撃をして頂きます」
突然の出撃要請に胸がキュッと締め付けられた。
「待って。いきなり実戦だけど、俺大丈夫なの?」
「私が全力で貴方をサポートします。なので、心配しないでください」
隼人は、震える体に力を入れて緊張を無理やり抑えた。スーツ内は快適ではあるが全身が汗でびっしょり濡れていたのだった。
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