第6話 ファーストコンタクト
「ん~」
隼人はうめき声と共に目を覚ました。
「いてて」
体が重い。両腕に力を入れて一気に起き上がる。すると、その原因たる木材や砂が背中から雪崩落ちる。
全身がヒリヒリする。吹き飛ばされた衝撃で体を打ったのだろう。
視線を移すと宿に白い楕円形の何かが突き刺さっていた。それを中心に火の手が上がっている。宿周辺は、衝突の影響で建物が倒壊、二次災害による火災が広がっていた。
「母ちゃん!」
隼人は、宿に戻った葉子を見つけに駆け出した。
玄関から入ると、施設内は炎と瓦礫の世界になっていた。
...確かトイレに行くって言ってたよな...
隼人は、女性トイレの場所を徹底的に探した。瓦礫をかき分けて火を避けながら、叫び続けた。
「母ちゃん!どこだよ!」
葉子を捜索していると不意にトンっと何かが足に触れた。
視線を移すと、そこには手があった。瓦礫の下から。
「うわ!」
隼人は思わず叫び声が出た。瓦礫の下からは鮮血が滲み出ていた。震える足を動かしながら後ずさる。
付近を見ると、そこら中に鮮血が壁や床を染めていた。遠目に、人の原型を留めていないものも見えた。目の前の光景に隼人は、喉からの強烈な嘔吐間に手を口で抑えて堪える。
...クソ!...
隼人は、胸が張り裂ける思いを堪えながら駆けた。
隼人は、3階のエントランスにたどり着くとそこには白い壁が施設にめり込んでいた。至るとこに小さなクレーターが出来ていた。外装が抉れて配線がむき出しになりスパークを発している。
...なんだこれ...
近くで見ると、旅客機よりも上回る大きさだ。
ガラガラ
右側音何かが崩れる音が聞こえた隼人は恐る恐るそちらに視線を移動する。
そこには柱や壁の残骸でできた山があった。だが、隼人はそこに見たものが信じられなかった。
「母ちゃん!」
葉子ががれきの下敷きになっていたのだ。かろうじて息はしているが喘鳴だ。目がゆっくり開くと隼人に移った。
「隼人」
「母ちゃん、大丈夫!」
「う、うん」
「今、助けるから」
隼人は葉子を引き釣り出そうと両手を引っ張った。
「ぐぎぎ!」
しかし、一向に動く気配がなかった。
「そうだ、消防に連絡を!」
忘れてたといわんばかりにスマホを取り出すと、直ぐに119番にかけた。
ピッ
「もしもし、消防ですか、もしもっ―――――――――」
『お掛けになった電話番号は電波の届かないところにあるか、電源が―――』
「なんでだよ!ここ圏内だぞ!」
だが、スマホの表示には圏外と表記されていた。
...なんで?さっき確認した時は圏内だったのに...
隼人は、スマホをにしまうと再度撤去を始めた。
どかしてもどかしても上から残骸が崩れ落ちてくる。気づけば、手はもうボロボロだった。
「隼人、もういいよ」
「え?何言ってんの」
隼人は、葉子の言葉に耳を貸さずに必死に腕を動かす。
「もう大丈夫...だか..ら。あん.....ただけでも....非難しなさい」
はち切れそうな思いは、葉子にも十二分に伝わっていた。
「どこが大丈夫なんだよ!!」
今にも消えてしまいそうな声に隼人の顔は、涙と鼻水でグシャグシャンになっていた。
葉子の手がそっと彼の腕を掴む。いつもよりも力がなく弱々しい感触だった。
「私はもう...いいの。体の半分はもうぺしゃんこだから。ね?」
隼人自身、それには察しがついていた。葉子の下に広がる血がそれを物語っていた。それを認めたくなかった。
「だげど!」
「つべこべ.....言わない....の。私は助からないから。あんた....だけも逃げなさい」
力が抜けて枯れきっている声で、葉子は隼人を突っぱねた。火の手広まりつつあり、早く非難しなければ彼も巻き添えになってしまう。
「母ちゃん!俺!」
「早......く...逃げ...なさい!」
葉子は、残り少ない力を振り絞って声を荒げた。葉子の顔からは、涙があふれ出ていた。
「!?」
火の手は徐々に葉子を取り囲んで行く。もうたどり着くことはできないだろう。
「母ちゃん!」
葉子は、隼人を見つめると優しく微笑んだ。
パァン!!!
直後、葉子の頭部が破裂した。
「..........................................へ?」
隼人は今何が起こったかわからなかった。体は動くことを忘れポツンと情報処理が追い付かずに思考が停止してしまったのだ。
首を失った葉子だった上半身は、力なくぐったりと床に倒れた。
カラン コロン
残骸のから何かが崩れる音がした。
隼人は、ボーっとしたまま上の方に視線を向けと、そこには人影があった。
最初は真っ黒くて人なのかわからなかったが炎の明かりで徐々に見えてきた。顔の中央部に赤い光があり、腕は片方は欠損し、もう片方には何か長いものが握られていた。
ドカン!!
奴の後ろで何かが爆発した。多分ガスか何かだろう。爆発の光で容姿の詳細もすぐに分かった。
その手に握られていたのは、見たことない形の銃だった。容姿も型は人だが、どう見ても角ばった印象だ。いたるところがボロボロで、一部骨組みが見えてしまっている。まるで、SF映画に出てくような全身装甲に身を包んだロボットみいだ。隼人は直感ですぐに分かった。
...こいつ、人じゃねえ!...
そしてロボットは、モノアイがこちらに向くと銃を隼人に向けたのだ。
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