第7話…現在⑤…榊原

ぴこん🎶


『子どもの頃、そのテレビ番組が大好きで、ずっと見てたんですよ』



打ち合わせの帰り道。

美樹さんと子どもの頃の話をLINEしていた。


「それ、多分、出てましたよ、ぼく」




美樹さんがよく見ていたというテレビ番組にはおぼえがある。



ぴこん🎶


『えっ!ホントに?私ずっと憧れてて見てたんですよ。出演してる同じ年くらいの子どもたちが、みんな天才と呼ばれていて。いいなぁ、あんな風にピアノが弾けたらいいなあ。作曲もしてるなんてすごいなぁって。熊本のど田舎で、見てました』



「何年か出てましたから、いましたね、きっと、美樹さんが見ていたときに」



ぴこん🎶


『すごいすごい!40年以上前に、テレビ越しに会ってたんですね!そして、今になってその頃憧れてた人に出会えたなんて!奇跡だっ』




少し前から聞きたかったことを聞いてみる。


「美樹さん、旧姓はなんていうんですか?」


ぴこん🎶


『旧姓ですか?佐々木ですよ』


やっぱり!

もう一度確認する



「佐々木美樹さん?」



ぴこん🎶


『そうです。え?どうしてですか?』




もう一つ、聞いてみる。


「そのテレビ番組で、他に記憶してることはありますか?」



ぴこん🎶


『んー、外国とかにも行っててすごいなって思ったくらいかな?』



「あ、たしかに、行きましたね。よくおぼえてますね」


ぴこん🎶


『だから、大好きだったんですよ、その番組が』




番組だけですか?と聞こうかと思って、やめておいた。


手帳に挟んであった小さな手紙を出す。

それは小さく折りたたまれて、あの貯金箱に入れてあったもの。

あの頃、思うようにピアノができなくて悩んでいた時、それは届いた。


会ったこともない、どこの誰かもわからない女の子からの手紙。

それからぼくを励まし続けてくれた、小さな手紙。

星のキャラクターのイラスト付きのその手紙。


【さかきばらまさとくんへ。

 ぴあのがとてもじょうずですね。

 いつかほんもののぴあのをききたいです。

 だいすき。

           ささきみきより】





初めて会った時、とても強く惹かれるものがあった。

その理由が今、わかった。



やっと、会えましたね、美樹さん。





ーーーおしまいーーー





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ねぇ、おぼえてる? 福子 @kagume

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