2/21~2/28

21日


達筆な字で書かれた手紙をもらった。私には汚いようにしか見えないけど……きっとこれは達筆なのだろう。うん。

なんて書いてあるんだろう、これ。そこで私は、その字を研究することにした。私は馬鹿だから、一文字に一ヶ月かけて。

それがラブレターだと分かったときには、君は転校してしまっていた。


「達筆な手紙」





22日


俺はお前と違って何もない。ただ馬鹿みたいに真面目なだけで、これといった特技も何もなくて。いつも人のことを助けて、感謝されるお前のほうが、仏頂面の俺とは違って、いつも笑顔なお前のほうが、ずっと俺より素晴らしい人間だ。


違うよ。私はいつも貴方が傍にいてくれるから、私らしくいられるの。


「支え合い」





23日


猫には9つの魂があると言われているらしい。

私も猫だったらいいな。これが9つの内の、何個目かの生がいいな。

そうして生まれ変わるの。次も貴方の傍で、優しい歌を歌うわ。

……でも、もし貴方が私より先に死んでしまったら、私は残りの生を持て余してしまう。

やはり猫になんてなるべきじゃないね。


「一度きりの今世を」





24日


雪のように踊る。可憐に、綺麗だと思わせる。でも、掴みさせやしない。掴めたと思っても、私はもうそこにはいない。

貴方に何度でも私に惚れてほしいから。

貴方に私を見てほしいから。

私はここで、美しく踊り続けるから。

そこで見ていてね、貴方だけに伝える、貴方だけが掴める、そんな私の存在を。


「たった一人、貴方だけに捧げる」





25日


涙を零してしまった君の瞼に、僕はそっとキスをした。君の涙は綺麗だね。指先で掬って、僕のものにしてしまう。

君はかなしいと言うけれど、僕は君のかなしみに触れられることが、とてもうれしいんだ。

この世界に、君と僕のふたりきりみたいで。この感情が僕たちの間にある間、僕はとても幸福なんだ。


「幸福論」





26日


貴方はいつも冷たい。私が抱きついても特に反応してくれないし、私の愛の言葉にも、短く返事をするだけ。同じ言葉は返してくれない。そんなところも素敵だけどね?

でも、貴方のことが好きすぎて火照ったこの体。貴方の低体温に触れると、とても気持ちいいの。

冷たいのも、少しくらいは許してあげる。


「冷たい貴方と火照った私」




27日


君が悩むときの仕草が大好きなんだ。シャーペンのノックするところを唇に当てて、眉を八の字にして、いかにも「困っています」みたいな顔をするから。

私は思わず「どうしたの?」なんて聞いて。君は瞳を輝かせるんだ。ちょっと邪な気持ちを抱える私のことなんて、知らないまま。

ああ、困っちゃうな。


「隣席の人の悩み」






28日


誰かのために、ということが美化して語られがちだけど。

結局この世の中で評価されるのは、技術があるものだし、余計な感情を入れると、それはマイナスとしてカウントされる。この意味が分かる?分からないとは絶対に言わせない。

全部お前のせいだ。私にこんな、余計な感情を抱かせた、お前のせいだ。


「お前のために」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る