3月

3/1~3/10

1日


後悔したってもう遅い。何故なら扉は、開かれてしまった。

白い煙が立ち込め、芳醇な香りに目眩がする。ここが正念場だ、気を引き締めろ。改めて武器を握りなおす。手汗が滲み、ごくりと唾を飲む。

……覚悟は決まった。いざ!


ズルルル、と、麺をすする。

いやぁ、やっぱ深夜のカップ麺は最高だ〜。


「後悔後先に立たず」





2日


遥か彼方の未来から、遥か彼方の過去の君たちへ、愛を込めて。

私はこの命を全うしそうになっている。遂に終わりが来るのだ。正直言うと、かなり怖い。先に行ってしまった君たちに問うよ、怖くはないかい?最期の一瞬、何を考えていた?

目一杯幸せだと、言えただろうか。

ならいいんだ。さようなら。


「過去に問う」





3日


君以外の人間全員が、不幸になればいい。

悪口を言われてしまえばいいんだ。背中を押されて階段から落ちて、足の骨を折ってしまえばいいんだ。文句を言おうとしたら、口を塞がれてしまえばいいんだ。

お前らが君にしたこと、全部、跳ね返ってしまえばいいんだ。

君は不幸じゃない。お前らが悪いんだ。


「ハンムラビ方式」





4日


きっと君はシトラス。だってこんなに芳醇な香りがするんだもの。舐めたらきっと酸っぱくて、でも甘いんだろう。

きっと君はシトラス。だってこんなに私のことを誘惑して、目を離させてくれないんだもの。君を貪ってしまいたい。

だけど君はズルいから、それを許してくれないんだ。そんなところも……。


「君はシトラス」





5日


約束、覚えてる?私は一時だって忘れたことはないよ。

いつだって考えるのは君のことだけ。他のことは二の次。だって君は私の世界の中心だもん。


だからね、大丈夫。記憶がなくても、不安になることはないよ!私がいるから、大丈夫!どんな君だって大好き。約束通り、君のことを絶対幸せにするから!


「幸福の約束」





6日


とある有名なアイドルが芸能界を引退するらしい。事務所内のトラブルとか、メンバー間の不仲とか、様々な噂が飛び交った。

「あのアイドル、私の弟の友達の友達の従兄弟らしいんだよね」

「いや、遠いな」

友達とそんなことを話して笑う。言ったことは、事実。でも遠い世界の人だ。私は何も知らない。


「他人」





7日


貴方の暖かな手を握って。それだけで自分でも信じられないほどの、深く熱いエネルギーが、体の奥底から溢れ出すんだ。火傷しそうなくらい。でも前へ進むには足りないくらいなんだ。

だからもっと手を握って。強く強く。

……私の手を握ることで、貴方も同じ事を思ってくれたらいいな。

さあ、行こう。


「エネルギー源」





8日


今日も集まったね!それじゃあ、作戦会議をしようか。

食料担当、進捗はどう?……ちゃんと出来上がって冷蔵庫に保存済み?流石、仕事が速いね!

作戦決行は明日。いい?皆、寝坊なんて絶対に許さないんだから。

あの子が出てきたらクラッカーを鳴らして、あのセリフを叫ぶの!確認の必要はないよね?


「作戦会議」





9日


『君に会えない時間は、まるで千年の冬のように感じられるよ。君と逢瀬を交わす時間は、瞬きのように去っていくというのに』

『ええ、私もです。その千年の冬を共に越せたなら、この木枯らしのような寂しさを抱えずに済んだでしょうに』


「あんたらって、和歌の現代語訳みたいなメール送りあうよね」


「和歌ップル」





10日


「世界を変えるため、立ち上がろう!」

突然僕のもとに現れた君はそう言った。何かの布教かと思ったが、君の瞳はいたく真剣だった。

どうやって変えるの?と聞くと、君はスマホを取り出し。

「展開を変えろって言う」

そこには最近書籍化されたネット作家のSNS。世界って本の中の世界かよ。降ります。


「都合のいい世界にしたい」

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