2/11~2/20

11日


私が欲しかったのは、アドバイスじゃなくて同情だった。

私が欲しかったのは、ブランド物のバッグじゃなくて、貴方が物選びにかける時間だった。

貴方はいつも肝心なところで、私の欲しいものをくれない。

でも、落ち込んだときは、黙って傍にいてくれる。それだけで、貴方の傍にずっといたくなるの。


「貴方といる理由」




12日


「あのね」

君がその言葉から話し始めるときは、決まって何か大事な話があるときだ。何だろう、と身構えつつ、何?と聞いた。

「これとこのパン、美味しそうだからどっちも食べたいんだけど、流石に太りそうで……」

なるほど、新作のパン2つのことで悩んでいたらしい。

「半分こしようか」

「うん!」


「大事な話」




13日


可愛い服を眺めるのが好き。よくいいねを押すから、それ関連の投稿も、すごい流れてくる!今のトレンドはこういう服なのか……可愛いな、似合いそう!

衝動のまま、拡散拡散!すると、貴方もその投稿にいいねを付けて。


数日後、その服を身に着けた貴方の姿が投稿された。

ああ、この瞬間が一番好き!


「貴方もきっと好き」




14日


皆、チョコレート会社の戦略に乗せられて……馬鹿馬鹿しい。そんな菓子一つ貰うことに、一体どんな価値があるっていうんだ。自分で好みのものを買った方が、よっぽど有意義だろうというのに……わかってないな……え?俺に……チョコ?本当?うわぁ、ありがとう!バレンタインデー最高〜〜〜〜!!!!


「手のひら返し」




15日


貴方のことなんて、大嫌い!

こんな私に優しくするところが嫌い!頼んでもないのに周りの悪口から庇うところが嫌い!私の好物を把握してるのも気持ち悪い!私の傍にずっといるのも鬱陶しい!私のことをずっと見てるのも気色悪い!……何笑ってんのよ、そういうところが大嫌いだって言ってんの!!!!


「大丈夫、分かってるから」




16日


私はあの作家が嫌いだ。なんかカッコつけたような言動が鼻に付くし、あんなすごい人と友達面をしてるのも気分が悪い。あの作家のことをすごい、好きだと公言してる人も、だいぶ趣味が悪いね。そんな人とは絶対に友達にはなりたくない。

だから作品も……くそ、悔しいけど、めっちゃ面白いんだよな~!


「認めたくないけど」




17日


愛というものを知っている?私が貴方に向けるものよ。それはきっと、命と同じ重さをしていると思うの。私の中から貴方への愛が失くなれば、私は21グラム軽くなる。私はそのままきっと空へ登っていけるわ。貴方への愛を失ったら、それは死んだと同じ。だから空に登るというもの、間違いではないかもね。


「21グラムの愛」




18日


まず指先が触れて、そうしたら、手のひらを沈み込ませて。ゆっくりじっくり、貴方に触れていく。貴方の喉がこくりと揺れれば、私の口の端から息が漏れ。貴方の双眼が揺れている。きっと私の双眼も、同じように。

貴方に近づき、体を沈め、触れていく。貴方の全て、何一つとして、触れ損ねたくないの。


「触れる」




19日


貴方に出会えた事、良かったなんて絶対に言ってあげない。貴方との思い出を美化なんて、絶対にしてあげない。

貴方から貰ったものは、全く綺麗なんかじゃなくて、醜くて、汚くて、洗ったって純粋なものになんてならない。

嫌なんじゃない。それがいいんだ。

だから貴方も、そのままの形で抱えていて。


「そのままの形で」




20日


風に吹かれる。シャツの端がふわりと舞い上がり、私の心も上昇気流に乗っていく。心の重力がなくなったこの世界で、私は空に浮かび上がる。まだ心を地上に置いて過ごす人達を見下して。

私は鳥よ、カゴのない鳥。どこまでも自由なこの心。

ああ、このままどこまで行ってしまおうか。どこでも行けるよ。


「カゴのない鳥」

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