8月

8/1~8/10

1日


楽しい時間はあっという間だった。毎日外を走り回って、肌は真っ黒。絵日記に書ききれないくらい、僕は夏を満喫した。でももうそんな日々も終わり。だから最終日に僕は、神社に行った。手を合わせて、「この夏がずっと続きますように」。


気づいたら寝ていたらしい。カレンダーを見る。夏休み初日だ。


「夏は始まったばかり」




2日


君は自分を大事にする事が苦手だ。無理をして、よく体調を崩す。しばらく一緒にいて、その限界が僕にはわかるようになった。そろそろ限界だなと判断すると、僕は無理矢理君に休憩させる。

「貴方こそ私にかまってばかりで、自分を大事にしてない」

「君のことを、自分の事のように大事にしたいだけだ」


「自分事」




3日


空の白むまさにその瞬間を、私はぼうっと眺めていた。

夜通し作業をしていたら、いつの間にか太陽が姿を現す時間になってしまったらしい。そう気がつくと、頭が重かった。視界もぼやけるし、眠い。小さく呻いて、私はベッドに向かった。アラームに起こされるまでは、少しだけ寝よう。


「夜ふかし」




4日


ありがとう。と呟く。隣の貴方が首を傾げて。当たり前だ。脈略が無さすぎる。

私は笑って。たまにふと、感謝したくなるんだ。こうして生きていること。素敵な本が読めること。空が綺麗なこと。隣に貴方がいること。

誰に対してかのお礼なんて、わからないけど、今言うよ。心を込めて。

ありがとう。


「感謝」




5日


することもないので、SNSを眺めていた。ふとTLに流れてくる写真。それを見て閃く。次はこんな作品を書こう。主人公はこうで、こんな風にストーリーが進んでいく。これは名作だ……!

その間一秒。執筆に取り掛かろうとバックキーをタップし……。

わからなくなる。今、どんな話を考えていたんだっけ?


「消えた閃き」




6日


世界に君だけがいてくれれば良かった。それだけで、私の世界はとても綺麗に、色鮮やかに、輝くから。

幸せでいよう。例えどんな試練が待ち受けているとしても。お互いの存在を確かめるよう、手を繋いで。顔を突き合わせて、笑い合って。

今日、この日に、私と君がいるって、お互いで証明し合おうよ。


「君と、存在証明」




7日


美しいものを見るのが好きだ。だからよく図書館に行く。まずその図書館は美しい。所狭しと並ぶ本、私を見下す本棚。その配置は芸術的で、思わずいつも入り口で立ち止まっては惚れ惚れしてしまう。こうしてはおれない、と途中で正気に戻って中に入り。

「やあ、美しい司書さん」

「お帰りください」


「美しいもの」




8日


人間って何だろう。と君が言う。それは今アイスを食べながらしなければいけない話なのだろうか。と僕は聞き返した。すると君は、だってほら、とスマホを突きつけてくる。そこにはAIが描いたという絵画が。人間って必要なの?と君が続ける。君が言うか、と僕は呆れて返した。家族ロボットである、君が。


「必要性」




9日


愛している、を伝えたい。

だから僕は貴方に身を寄せる。これは信頼の証だ。腕も絡ませ、そうしてジッと貴方を見つめる。それで貴方も、少し赤くなった頬で、熱を持った瞳で見つめ返してくれれば、きっと僕の愛は伝わったと言えるのだろう。

それでも駄目だ。貴方からの直接の愛してる、には敵わない。


「愛の言葉」




10日


ぷちっ、ぶちっ。

そんな音を、笑顔で聞く。私は花を折って、抜いて、綺麗に纏めていく。

ここをこうしたら、ほら、綺麗な花の冠になるの。私の大好きなあの子は喜んでくれるかな?あの子は綺麗なものが好きだから、きっと喜んでくれるよね!

大好きなあの子のために犠牲になれるなんて、花も幸せね!


「花の冠」

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