File No.26:大逆転! 新ヒーロー登場!!

 想像力をネガティブに変換される『イマジネーション封殺カプセル』に閉じ込められ、エネルギーを使いきって倒れてしまったあたし。


「やった……やったぞ!! とうとうトクサツ戦士の最期だ!!! 長かったぁ……」


 ベクター大佐が大粒の涙を流しながら感極まって想いに浸ってやんの! 大のおっさんが二十歳の美少女倒すのに泣くことないじゃないの!!

 ……でも今の状況じゃ言い返せないんだよなぁ。だってあたしマジで気絶して、真っ暗な世界にポツンとヒロミちゃんなんだもん!!


 でもこんな所で終わるわけにはいかない。戦闘員をバッタバタと倒していったタケルとフィーリアがベクター大佐達に宣言した。


「……オイ聞けジャックス!! 幾らお前らがヒロミを倒せても、この神殿に眠っている英雄を呼び覚ましたら結局やられるのはお前達なんだぞ!!」


「はっ! 何を強がりおって!!」

 ベクター大佐はそれでも強情を張る。


「嘘だと思うんなら確かめてみなさいよ! 私達の他に、誰か一人足りないんじゃない!?」


「何……?」

 そう言われるとベクター大佐もプロフェッサー・ファントムも、周囲を見渡すなりあたし達正義側のチームの人数を確認する。


「……ありゃ? あの清楚でしゃぶりたくなるようなおっぱいボインボインのお姉ちゃんが居ないぞ?」

 オイその言い方止めろ変態ファントムジジイ。ルリナちゃんだよッ!!!


「な!? 本当だ、貴様らルリナは何処に居るのだ!?」とベクター大佐。


「もう既に神殿の中に入っちまったよ!」

「その前に……はぃぃやああああああ!!!!!」


 ――――バコォォォォォン!!


 タケルの啖呵とフィーリアの鋼鉄チョップであたしを閉じ込めたカプセルが粉々に砕かれた!! てか最初からやりなさいよ!!!

 しかしまだぐてーっと倒れたままのあたし。そこへフィーリアが駆けつけて膝枕であたしに訴えかける。


「ねぇヒロミ! しっかり、しっかりしなさいよ!!」


 フィーリアは普段うるさいけど、何やかんや言ってもあたしを心配してくれるのね……グスッ。でもまだあたしは悪夢にうなされているように起きる気配が無い。


「―――じゃ、そういうことで!!」


 タケルはそう言うとそのまま神殿の奥へ猛ダッシュで逃げ、フィーリアはあたしを抱き抱えてタケルの後を追った。フィーリアのお姫様抱っこ……あ、やべ惚れちゃいそ♡︎


「なっ、アイツら出すぎた真似を! 追うぞ!!」

「ボインも良いけどキラキラの姉ちゃんもえぇのう!」

「だあっとれジジイ!!!」


 ホントにエロジジイのボケは……そんなこんなでジャックスとタケル達の追いかけっこが神聖な神殿で繰り広げていたその頃!


 ★☆★☆★☆


 ――神殿・最深部。


「……あ! ひょっとしてこれかしら!?」


 薄暗い間に、ルリナちゃんが懐中電灯を付けながら調べていくとクリスタル状の棺のようなものを見つけた。

 そしてこの棺にも、何かの文字のようなものが刻まれていて、ルリナちゃんがそれを確認する。


「≪親子の力を宿りし英雄ここに眠る≫……やった! これだわ!!」


 嬉々としたルリナちゃんは重い棺の蓋を降ろすと……


「…………え? ――??」


 大きい棺とは対称的に、中に入っていたのはボール状の小さなカプセル。とてもじゃないけど空きスペースが有りすぎるわね。


 ルリナちゃんはそのカプセルを手に取ってみる。その実態はガチャガチャで見かける赤と半透明の其処らにあるようなカプセルだった。その中身は――?


「え!? ヒロミさん……!!?」


 なんと2頭身にデフォルメされたトクサツ戦士のあたしだった!! どういうことなの?


 ルリナちゃんが更に疑問が深まるなかで、外からギャーギャー聞こえてきたかと思えば、その音がどんどん大きくなる。


「待てー! 貴様らーー!!」

「キラキラ姉ちゃ~んメアド教えて~~☆」

「だから黙れってクソジジイ!!!!」


 ジャックスが追いかけ、タケル達が必死で逃げるなかでルリナちゃんの元に辿り着いた。


「あっタケルさん、フィーリアさん!! 英雄見つけました!!!」

 ルリナちゃんがカプセルを手に報告をする。当然タケル達は英雄の姿に唖然としながらも納得はしなかった。当たり前だろうけど。


「そんな事よりヒロミが……」


 フィーリアが抱き抱えたあたしをルリナちゃんに見せた。まだあたしは気絶しながらうなされている。

 するとあたしが何故か自然と涙がこぼれ落ちながら、寝言のようなものを呟いた。


「……な、何で、女の子がヒーロー好きで何がいけないのよ……!!」

「……ヒロミ、さん……?」

 この寝言に涙を流すあたしにルリナちゃんは意味深なものを感じた。


「えぇいこうなりゃままよ、全員纏めて倒してくれるわ!!!」


 ベクター大佐の号令と戦闘員達の掛け声が神殿に木霊する。でもあたしは一向に起きる気配が無し。絶体絶命ってやつね。


「オイ、ヒロミ! 何時まで寝てるんだ早く起きろ!!」

 ダメ、タケルの怒号でも起きる気配無し。


「起きなさいって言ってるでしょ!?」

 今度はフィーリアが往復ビンタであたしを叩き起こす。乱暴なやり方で絶対起きるもんか。


「だったら私に任せて下さい!!」


 終いにはルリナちゃんがジャックスやタケル達に背を向けて、あたしを膝枕にするや否や、胸元の服のボタンを外して、何かプリんっと弾け出るものを…………ふぁッッ!!?


「ルリナの秘技・至福のサンドイッチ!!」


 あっ……何かプリンのようなたわわに実った柔らかい物があたしの顔に挟まって、はぁぁぁぁぁぁぁぁん♡︎♡︎♡︎



 ※この展開は読者の皆様の御想像にお任せします。



 ジャックスもタケル達もこの光景に硬直している。……ってか誰だ写メ撮ってる奴は、訴えるぞ!!?


「ん……ぷふわぁッッ!!!? ――ってあれ、ルリナちゃんどしたの?」

「やっと起きた!!」


 至福のサンドイッチに挟まれ、若干窒息しそうなあたしがようやく目を覚ました。


「……ヒロミさん、物凄くうなされてましたよ。大丈夫ですか?」

「ん……あまり覚えてないけど、ルリナちゃんと結婚する夢見てたのは覚えてる」


 後者は明らかに至福のサンドイッチ効果である。


 しかし寝ぼけている暇などない。ジャックスが今か今かと襲いかかってくる!!


「懲りないわねアイツらも! もう一度変身よ!! クルックル~♪(以下略)」


 …………しかし以下略してトクサツ変身しても、肝心のトクサツールベルトが作動しない。


「無駄じゃ! イマジネーション封殺カプセルで閉じ込めたお前さんは当分は変身は出来まい!! 可哀想じゃが、ボインとキラキラの姉ちゃんを残して死んでもらおう!!」


 貴様ぁWヒロインをメインディッシュにして何をする気だジジイ! ちくしょう~こんな時に……!!


「ヒロミさん! この神殿で手に入れたカプセル使って見てください。新しい英雄です!!」

 寝起きのあたしにいきなりこれを渡されても……どうやって使うのよ!?


「あれ、このカプセル……」


 あたしはカプセルの中に入っているミニサイズのあたしに気付き、その時カプセルからテレパシーのようなもので訴えているのを感じた。


 ――『かぷせるをなげて!』って……!!


「……よーしお願い、あたしに力を貸して! えーーいッッ!!」


 あたしは力一杯カプセルを投げて床に落ちた瞬間、カプセルから渦巻き状の光線が弾け出たと同時に中から英雄が颯爽と飛び出してきた!!


 ピンクのヘルメットとサイバースーツを着けたあたしそっくりのトクサツ戦士な女の子!!

 その大きさ、ざっと105センチ…………って、ちっちゃ!!!


「……嘘~ん」

「ヒロミよりもちんちくりんなの出てきちゃったわね」


 ちんちくりん言うなフィーリア。しかしあたしが2頭身デフォルメされたようなもんだし、言われても仕方ないか。するとちっちゃいあたしが何か喋ってきた。



「わがはいはひーろーである。なまえはまだない。どこでうまれたかとんとけんとうがつかぬ!」


 ――くるるんっ♡︎(バイザー越しのウィンク時に出る効果音ミニバージョン)


 ……どっかで聞いたことがある台詞だ。しかし幼稚園児みたいなロリ声でよくこんな長台詞を言えたもんだ。

 色々つっこみたい所はあるが、思い切ってベクター大佐がちっちゃいあたしに優しく質問した。


「えっと……お嬢ちゃんはいくつなのかな?」

「はたち」


 嘘つけッッ!!! どうみても5歳児だろその感じは。


「へぇ~~☆ これが新しい英雄だと言うのか!? 笑わせるなチビッ子めが!!」


 ベクター大佐はちっちゃいあたしを子供扱いしてだっこさせる。ちょっと止めなさいよ! そのご機嫌斜めな顔して怖がってるわよデカイおっさん!!


「こんなガキ一人で我々ジャックスに敵うと思ってるのかバカめが、ワハハハハハハ!!!!」

 明らかにバカにした態度で大笑いするベクター大佐、すると……!?


 ――――ゴスッッッッ!!!!!


 鋼鉄のように鈍い音を立ててちっちゃいあたしの鉄拳がベクター大佐の片腕に強打した。


「痛゛ああああああ!! 骨折れたぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」

「うりゃーー!!」


 なんとちっちゃいあたしがたった一人でベクター大佐をボコボコにしている! あんな小さい子がこんなに強いなんて!!


「あのヒロミのミニサイズ中々強いじゃない気に入ったわ!!」

 ありゃりゃ、強いもの同士でフィーリアが興味持っちゃったよ!

 すると怖さの限界を越えたのかちっちゃいあたしは急に泣きじゃくってあたしの胸元に飛び込んできた。


「ぐすっ、ままーーーー!!!」

 ママ!!? あたしが!? ルリナちゃんとレ◯プレイしてたら出来ちゃったてか? んな訳あるか!!


 顔ぐしょぐしょになるまで大泣きしたこの子も、あたしの為に一人で頑張ってくれたんだもの。親(仮)のあたしは優しくなでなですると、直ぐに涙は引っ込んで笑顔になった。可愛いなぁ……♡︎



「……そーいや貴方名前が無いんだっけ。――――そうだ、『ヒロミニ』! 貴方の名前はヒロミニちゃん!! ヒロミのミニサイズだからヒロミニでどう?」


「……ヒロミニ、しゅきー!!☆」


 気に入ってくれたみたい! このままあたしとルリナちゃんの子に……いやいや何でもない!!


「……まま、ままもへんしんしよ?」

「えっ? でも今は……」

「えねるぎーあげるっ!」


 するとヒロミニちゃんの掌から暖かいエネルギーの塊が、あたしのトクサツールベルトに送られた。……おぉっ! 力が戻ってきた!!


「よーし!! 今度こそ変身だーー!!!」

 さぁ、読者の皆様ももう一度どうぞ!!


「クルックル~♪ シャキーン!!

 ――巻~き毛クルクル!

 ――わ~たあめクルクル~♪

 ――クルリと回って……


 ――――トクサツ変身へ~んしんッッ!!」


 ヒロミニちゃんも一緒にポーズ取ってくれてありがとうね!


 ――ギュビビビビビビィィィィィン!!!!!


「満を持して大復活だトクサツ戦士HIROMI、と!!」

「とくさつせんしヒロミニさんじょー☆」


 ――クルン♡︎&くるるん♡︎



「バ、バカな!? ワシのイマジネーション封殺カプセルでエネルギーを奪ったはずなのに!!」


 どうだ! ファントムじいちゃんも悔しがってる!! ヒロミニちゃんがイマジネーションパワーを分けてくれたお陰でまた変身出来たのよ!!


「やられたらやり返す、倍返しだ! 行くよーヒロミニちゃん!!」

「おーー!!」


「クルクル~~!!」

「くるくる~~!!」


(ナレさん)トクサツ戦士HIROMIとヒロミニが力を合わせる時、必殺技の威力も数十倍にパワーアップするのだ!!


「愛情全開二倍増し!! ダブル・ヒロミちゃんキッス!!!」


 ――ちゅぱっ♡︎♡︎


「「「ニィィィィィィイイイイイイ!!!!」」」


 数十名の戦闘員やベクター大佐、ファントムじいちゃんを巻き込んでのWハートビーム炸裂!!


 特にベクター大佐は腕折られて、更に吐き気を催しての踏んだり蹴ったり。ファントムじいちゃんは一瞬三途の川が見えたとか。


「あたし達の勝ちーー!!!」

「かちーー☆」

 あたしとヒロミニちゃんの勝利のガッツポーズ!!



「くっそ~……覚えてろトクサツ戦士め!! この仇はきっと討つからな!!!」

「お前みたいなちんちくりんなんかメアド交換しないよーーだ!!」


「いらねーよ」


 おっさんとジジイの負け惜しみな捨て台詞を吐いて、ジャックスの潜水艦は一目散に逃げていった。


 ★☆★☆★☆


 ――――その後。


「キャー♡︎ ヒロミニちゃん笑うと可愛い~!!」

「フィーリアさんあたしにも抱っこさせて下さい!!」


 まるでお盆休みに親戚の娘が遊びにきた感じでフィーリアとルリナちゃんがヒロミニちゃんと和気あいあいに遊んでいた。潜水艦の中で。


「ったく、あんなガキ英雄の為に俺達は苦労したのかよ……」

「アンタもそのうち子供出来るんだから、フィーリアには良い予行になるでしょ?」

「なっ!? お前なぁ!!!」


 タケルとあたしはカヤの外。彼女達が飽きかけたらあたしもヒロミニちゃんを抱っこしたい所だけど……ちょっと今回の件で疲れちゃった。それにしても……



(あの時の黒いカプセルで聞いた暴言、絶対何処かで聞いたはず。多分あたしがこの世界に転生する前の、として……)



(ナレさん)こうして、海底神殿にて新たな英雄ヒロミニちゃんが仲間に加わったヒロミは『今度はヒロミニちゃんに人気取られちゃうのかなー? でも可愛いから許す☆』と思いながら、新たな脅威にも敢然と立ち向かい戦うのだった!!


 行け、トクサツ戦士!戦え、トクサツ転生少女ヒロミ!!

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トクサツ転生少女ヒロミ!~特撮チートツールを持った女子は一応異世界を救うけど、本心は女の子を助けたい~ @kazukid

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