File No.20:あたしはカンフーマスター!?
――あたし、
……どうもここ最近、悪の組織『ジャックス』の出番が無くなってきてるような気がするけど、アイツら何してるんだろう?
さてはあたしとタケルの回で存在感に疑問もって、自然消滅したんじゃないの!?
「んな訳あるか! 我々ジャックスは日曜と水曜は定休日となっているのだ、それ以外は普通に悪事を働いておる!!」
なーんだ、ベクター大佐のやる気満々な感じから見て心配して損した。……てかジャックスって定休日あったの?
「悪の組織も週2休みは必要なのだ。しかし他の支部では自らの働きによって、休みの間でも作戦を企てている者もいる。それをお前ら人間どもに教えてやろう!
――ミドルーディング地方のジャックス怪人よ!!」
ベクター大佐は巨大なモニターを作動させ、ブレイドピア都市から南南西に位置するミドルーディング地方のジャックス支部に指令を発した。
『――お呼びでしょうか? ベクター大佐』
応答した怪人は凛とした女性のような声をしていた。……女性怪人かぁ、またビークイーンみたいなエロいのじゃないでしょうね?
「あんな痴女と一緒にするんじゃない! ――それよりも例の遠隔操作型装置の実験は成功したかね?」
『ミドルーディング地方の民間人を実験した所、見事に成功しました! 出撃の準備は出来ております』
「よーし! ならば早速マウンペアの町にて作戦を実行してくれ、そしてお前の手でトクサツ戦士を倒すのだ!!」
『はっ――!!』
そしてモニターでの通信は切断された。
……ちょっとちょっと! マウンペアの町って言えば、あたしとルリナちゃんの喫茶店がある町じゃないの!!
そんな所へ出撃させて何を企んでるのよ! それと今回の怪人は誰!?
「お前なんかに教えてやんないよーだ!!」
小学低学年の子供か。
★☆★☆★☆
マウンペアの町、喫茶店『リリィ』。
ジリリリリリ!!
今日も今日とで暇な喫茶店に、1通の電話が鳴り響く。それをルリナちゃんが受話器を取って応答した。
「はい、喫茶店リリィ……あ、サブロー司令官さん?」
電話の相手はW.I.N.D本部の総司令官、サブロー・スタンバナードのおっちゃんである。
『あぁルリナ君か。今回もまた奇っ怪な事件が発生したんだ、その事でヒロミ君に電話を代わってくれんかね?』
「え、いや、その……ヒロミさんはちょっと取り込んでおりまして……私で宜しければ伝言を承りますわ」
『まぁそれでも構わんが……伝えてほしいのは、今君達の住むマウンペアの町で次々と住民同士で殴りあいの暴行事件が多発しているんだ。その件について君達二人で近隣捜査して、その報告を頼みたいという件だ』
あたし達が住む町で暴行事件――!?
これはW.I.N.Dの頼みで無くても断るわけにはいかない。
「……分かりました。それでその事件の共通している部分って何処まで分かっていますか?」
『うむ、何でも暴行を犯している人々は皆、カンフーのような奇声を上げているのが特徴だとか』
「カンフー!?」
このヒントにルリナちゃんも何かを察した様子だった。
そう言えばここ最近、寝ている間でも耳をつんざくような甲高い奇声を外で上げてるので安眠を妨げられた事が何回もあった。
最初は酔っぱらいが酔拳ぶちかましてんのかと思ったけど、どうもただ事じゃ無さそうね。
「では早速ヒロミさんに伝えておきます!」
『頼んだぞ!』
ルリナちゃんは電話を切って、2階のあたしの部屋に駆け込んで報告する。
でもルリナちゃんはしどろもどろになったり、事件の事で何か引っ掛かるような仕草をしてたのには訳があった。
「ヒロミさん! いい加減にしてください!!」
「ゥアチャアアアアアアッッ!!!!!」
元々ハスキーな声で有名なあたしは、それよりも甲高く割れるような奇声で、部屋狭しと五体フルスロットルで大暴れ!!
今のあたしはカンフートクサツ少女でぶっちぎり状態よ!!!
「トクサツ少女!
良い子の皆には真似出来ないようなアクティブなカンフーアクションで決めポーズをするあたし。翌日の筋肉痛が気になる程の過激っぷりだ。
「トクサツール・トクサツロッド!!」
しかしこの時のあたしは顔が青ざめ、目が完全に据わりきっている状態で暴走していたのだ。事もあろうかそれをルリナちゃんに目掛けて、如意棒のようなロッドを構えようなんて! あたしのバカ!!
わーやめてーー!! その長い棒でルリナちゃんに乱暴しないであたしーーー!!!
「受けてみよ天想星奥義・赤心少林――――」
――ドスッ、カーーーン★☆
「きゃんッッ☆」
トクサツロッドの先っちょをルリナちゃんが足で抑え上げた反動で、下からあたしの
「…………あれ? あたしどうしちゃったんだろ。なんで棒なんか股がってるの?」
しかしその強烈な痛みで暴走も収まったようだ。でもトクサツロッドでルリナちゃんを襲おうとしたことは無意識であった。
「しっかりしてください! ヒロミさん発作みたいなのに駆り立てられて、私を襲おうとしたんですよ!!」
「えっ!!? 何て恐ろしいことを!! 怪我はしてないよねルリナちゃん!?」
「え、えぇ……私は平気ですけど……」
ルリナちゃんはこの時『私よりもヒロミさんの股間が恐ろしい事になって無いかしら』と思ったが、淑女らしくそっとしておく事にした。
「でもあたしが発作だなんて……ダイ◯ンジャーとかスー◯ー1みたいな格闘派の特撮観ても自我は保てるのに……」
特撮ファンのみならず、人として当たり前の話である。
「ここ最近ヒロミさんもマウンペアの人達も変ですよ。
皆まるで闘争本能を駆り立てるように、さっきみたいに暴れまわってるって報告がW.I.N.Dの方で出たんです」
「W.I.N.Dが動くって事は相当大きい事件ね……あたしが混乱してた時どんな感じだった?」
「そりゃもう、ダイ◯ンジャー以上にド派手でアクティビティなアクションしてましたよ! カンフーみたいな東洋拳法で舞踊している感じで」
東洋拳法……あたしはそれを聞いた瞬間にあることに気づいた。
「そうだ! この前この町に、ミドルーディング地方で有名な舞踊団が地方公演しているって話を聞いたことがあるわ。太極拳やカンフーとか、それこそ東洋拳法を中心とした和のプロダンサーが!!」
このブレイドピアのミドルーディング地方では、異世界では珍しく地球やその他の世界の踊りをグローバルに広めている珍しい地方である。
そして数日前に上陸した舞踊団『
「じゃもしかして、あの舞踊団が……?」
「胡散臭すぎて堪忍カンニン、カンニングモンキー天中拳よ。その公演に行って実際に確かめに行きましょう!」
「………………」
お願いルリナちゃん、小ネタに対してスルーしないで!!
★☆★☆★☆
多目的ホール『マウンペアホール』
マウンペアは2~3万人の人口で設けられている小さな町だけど、百烈拳竜の公演によって2/3程の人数がホールにごった返していた。
スピード感溢れる殺陣の数々、棒術、剣術、チャクラムや数々の拳殺法。長い国の歴史と共に戦いのDNAも蘇るような血のたぎる演出に皆拍手喝采の嵐であった。
「ねぇヒロミさん、彼処にいるチャイナドレスの人、凄く綺麗ですねー!」
「あれ、ルリナちゃんが綺麗って言うんじゃ相当御目が高いわね! あたしはもうゾッコン、食べちゃいたい♡︎」
ギュウウウウウウ!!
ゴメンゴメン冗談! あたしのBカップの乳首つねらないで、盛ってない分痛いから!!
ルリナちゃんでさえ舌を巻くような程の麗人、瑠璃色で竜の刺繍が施されたチャイナドレスに見え隠れする美脚。
そう彼女こそ、この事件のキーパーソン。
百烈拳竜の看板娘『チャン・リンシャン』である!!
……言っとくけどシャンプーじゃないよ!!
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