ジョブが決まりました。

 キャラメシ・キャラ弁作成に関するスキルが欲しい、との私の言葉にアリッサ様は大きく目を見開きました。


「キャラメシ・キャラ弁作成……。珍しいスキルですね」

「持っている人が少ないスキルなんでしょうか」

「初めて見ました」


 アリッサ様が初めて見たスキルということは、これはかなりのレアスキルということなのでしょうか。いえ、そもそもこの世界における女神様がアリッサ様の他にもいて、何人かの女神様がそれぞれ分担してこの、ゲームのチュートリアル的な部分を受け持っているのでしたら少し話は変わってきますが。だってそれでしたら、アリッサ様のところに来たプレイヤーがたまたま、そういったスキルを持っていた人が少ないだけで、別の女神さまの方にはたくさん来ているという可能性もありますから。


「そもそも、キャラメシ・キャラ弁というものが何なのか、分かりません」


 アリッサ様が首をかしげる。確かに、そういった言葉が生まれたのはごく最近の話。そもそも現実世界とこのゲーム世界が異なる世界観なんだとすれば、そういった言葉がないことも十分あり得る。


 私はアリッサ様に簡単にキャラメシ・キャラ弁について説明する。すると、アリッサ様は目を輝かせた。


「それはとても面白そうですね」

「はい。現実世界では私、料理の腕が皆無なのでできませんでしたが、今回のこのスキルを使えば、心に描いたキャラメシ・キャラ弁を作ることができるのではないかと思いまして」

「このスキルは、あなたが思い描いたキャラメシ・キャラ弁を作成するにあたり、どういった材料が必要になるのか、それをレシピとして作成できるスキルですね。ですから、そのレシピを完璧に再現できる料理人が必要となります」


 アリッサ様の言葉を聞いて、私はがっくりと肩を落とす。なんと。結局のところ、自分自身で料理は作り出せないのですね。誰かの力を借りて、形にするしかないと。


「で、でもまぁ! 少なくとも料理人さんさえ見つけられれば、新しい道は開けるかもしれませんし!」


 それでしたら、当面の間、このゲームでの目標は『私の思い描くレシピを再現してくれる料理人探し』ということになりますね。


女神様が嬉しそうに頷いた。


「どうやら、貴女の心は決まったようですね」


 するとステータスボタンの下に、小さなステータス画面が出て来た。


『アイリーン(Lv.1) キャラメシ・キャラ弁レシピ作成師』


 レシピ限定というところが悲しいところですが! 無事にジョブが決定されたようです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る