報告(浩美視点)



_____ここからは、浩美ひろみの視点からの回想になります。



◇◇◇




好きなことを勉強して、好きな仕事に就いた…はずだった。

こんな筈じゃなかった…。


毎日毎日、デザインとは関係ない営業とコピーとりの雑用に追われて、あっというまに時間が過ぎる。

週末には接待という名の、セクハラいっぱいのお酒の席に呼び出される。

タバコの匂いとお酒と、どうでもいい会話。


上司からは、もっと愛想良く取引先と会話しろと言われるけれど、何も楽しくないし話したいこともない。

そんな毎日が続いて、だんだんと笑いたくても笑えなくなっていた。



今日が何日かもわからない、ご飯の味もわからない、寝てるつもりでも朝になるまでずっと時計の音を聞いていた。



『大丈夫?無理してるんじゃない?』


お母さんからの電話に、我慢していた感情が溢れ出た。

言葉が出なくて、ひたすらに泣いた。


『……帰ってきなさい。待ってるからね』


誰の声も聞こえなくなっていた私の耳に、お母さんの声が染み込んだ。


_____私、泣きたかったんだ…


次の日には、退職を申し出た。

雑用ばかりだったけど、私なりには頑張っていたし引き留められるだろう、面倒くさいなと思っていた。


なのに。


「わかった。人事部に話しておく。手続きはそこで聞いて」


そんなものだった。


好きなデザインができると思って入社したのに、ほとんどデザインもせず退社することになった。


_____何やってたのかな?私


引っ越しには、お母さんが手伝いに来てくれた。


_____ごめんね、お母さん。念願の会社と一人暮らしを許してくれたのにごめんね…











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