第21話 【漫画世界】ヒーロー集結

21 冬の公園


   荘子、如月、宇田、たま子、優、やよい。


荘子「……お連れしました。如月さんと同じく騙された三人の被害者の方々です」

宇田「宇田と言います」

たま「あなたはどんな詐欺にあったの?」

宇田「僕、声優になりたくて、声優の専門学校に通ってたんです。ある日、学校を出たところで瞬さんに声かけられて。『君は才能がある。うちの事務所に来てくれ』って言われて……」

たま「お前、何歳だ?」

宇田「え、三十八です」

たま「三十八で……」

宇田「な、なんですか?」

たま「まぁ、いい。続けろ」

宇田「事務所に入るには支度金が百万円必要だって言われて……」

たま「で?」

宇田「払いました。でも、仕事もどんどん入るって言われてたのに、何にも連絡ないから、どうなっているかって問い合わせたら、クビだって言われて……」

荘子「理由は何て言われたんですか?」

宇田「……顔が大きすぎるって」

優 「ぷっ」

荘子「顔? 大きすぎる?」

宇田「声優だから、声だから、顔の大きさなんて関係ないですよね!? なのに、なのに……」


   たま子にビンタされる宇田。


宇田「痛っ!」

たま「声優、なめんなよ! 今時の声優はな、ライブやったり、テレビ出たり、顔が出るんだよ! 2.5次元舞台とかも出なきゃいけないんだよ! お前の顔のサイズじひっかかって、三次元から出られないだろ!」

宇田「ひどい!」

たま「そもそも東京でそんな舞台観るなら地元で演劇を観ればいいんだよ!」


   さらにグーで殴りかかろうとするたま子。


荘子「お、落ち着いてください! グーは、グーは止めてください!」

たま「……ごめんなさい。取り乱してしまったわ。まぁ、下がってよし。今度、あなたは?」

優 「……えっと僕は山神優と言います。お洒落なカフェを紹介するユーチューバーなんですが、人気が無くて困ってたんです。するとある日、瞬さんからメールがあったんです」

たま「その前に、お前は何歳だ?」

優 「……え……四十二ですけど、それが」

たま「四十二で……」

優 「な、なんですか?」

たま「いや、いい。で、どんなメールだ?」

優 「視聴者を買わないかって。1人1円で、100万人分買いました。借金して」

宇田「ぷっ」

たま「百万円? お前は、馬鹿なのか?」

優 「そのときは真剣だったんです。でも、お金払ったのに全然増えなかったんです。だから、怒って連絡したら、お前の動画つまらなさすぎてお腹痛くなったから逆に損害賠償だって言われて。僕の動画、すっげぇ面白いのに! 僕の紹介するカフェ、超イケてるのに!」


    優にビンタするたま子。


優 「痛っ! 親父にも……」


    さらにビンタするたま子。


優 「痛っ!」

荘子「だから、落ち着いてください! 二回はまずいです!」

たま「……すまない。あまりの自分勝手さを許せなかったんだ。もういい、下がってよし。……で、あなたは?」

やよ「やよい、と申します。私は如月さんと同じで瞬さんに父親の借金があるって言われて」

たま「なるほどね。多種多様、相手によって手を変え品を変えで詐欺を働いてるみたいね」

宇田「ちゃんと説明してくださいよ。僕ら、何で集められたんですか?」

やよ「私、急ぎの仕事あるんで、時間ないんです。締め切りに追われていて」

優 「あんなことすぐにでも忘れたいのに」

たま「本当にいいの? 忘れてしまっても」

宇田「どうしようもないですよ。僕、騙されたってわかった後に訴えようとしたんです。でも、ダメでした」

如月「なぜですか?」

宇田「あの二人、実家や親族にいやがらせのようなことをするようになってしまったんです。あることないことを近所に触れ回って、散々な目にあいました」

やよ「ひどい」

如月「ひどい」

たま「そう、奴らを裁くのは法の力は頼れない。だから、自分たちでやるしかない」

優 「自分たちって言っても無理ですよ」

たま「無理なんてことはないわ。私を合わせてちょうどここに五人が集まってる。ちょうどぴったりの人数がね」

宇田「ぴったりの人数って、どういうことですか?」

たま「決まってるでしょ。ヒーローにぴったりの数ってことよ。ふふふ……ははは……」


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