第19話 【漫画世界】復讐とたま子レッド
19 冬の公園。
○漫画エリア、フェイドアウト、下手エリア、フェイドイン。
荘子「こんなときに申し訳ありませんが、銀座のお店はどうしますか?」
如月「……」
荘子「固定客もついて、如月さんのファンも多くいますし、毎月の利益も右肩上がりです。あんな男のことは忘れて、このまま店を続けませんか?」
如月「ごめんなさい。今はそんなこと考えられません」
荘子「そうですよね」
たま子、登場。
たま「きさちゃん」
如月「……たまちゃん?」
たま「復讐しよう」
如月「え……」
たま「復讐、それしかない」
荘子「ちょ、いきなり何ですか?」
たま「このまま、あいつらにやられたままになんてしちゃいけないわ」
荘子「あなた一体、誰なんです? 急に現れて、物騒なこと言い出して」
たま「私は如月ちゃんの高校時代からの親友でたま子です。話はこっそり聞かせてもらいました。荘子さん、あなた、あの二人のこと、もっと掴んでいるんじゃないの?」
荘子「もういいじゃないですか。これ以上、あいつらと関わる必要なんてありません。忘れて、次の一歩を踏み出しましょう」
たま「そういうわけにはいかない。やられたらやり返す。次の一歩を踏み出すのはそれからよ」
荘子「やられたらやり返すって、ちんぴらじゃないんですよ」
たま「あなたは知らないのよ。きさちゃんがどれだけ苦しんできたのか。さきちゃんは、ただの女子大生だった。それが、彼の借金を返済するために銀座のクラブで働かなくてはいけなくなった。成績優秀だったのに、いつの間にか単位もろくに取れずに 留年、そして退学」
荘子「それは……」
たま「それもこれも、瞬先輩のことが大好きだったからなの。だから、全てを捧げたの。その気持ちをこんな形で裏切られて、それでもあなたは忘れろと言うの?」
荘子「しかし……」
たま「あの人たちが騙していたのはきさちゃんだけじゃない。違う?」
荘子「……」
如月「そうなの?」
荘子「……」
たま「答えて」
如月「私も知りたいです。教えてください。お願いします」
荘子「……そうです、他に被害者は三名見つかりました。詐欺の種類はそれぞれ違いますが、かなりの金額を取られています」
たま「やっぱり。では、あなたは、その被害者を連れてきて。あと、やつらのことを出来る限り調べて」
荘子「どうしようっていうんですか? 集団訴訟でも起こす気ですか?」
たま「集団訴訟? そんな甘いもんじゃないわ」
如月「たまちゃん」
たま「今は何も聞かないで、私に任せて。悪いようにはしないから」
如月「……うん、わかった」
荘子「本当にいいんですか? 知らなくてもいいことがもっと出てくるかもしれませんよ」
如月「覚悟は決めました」
荘子「……わかりました。そこまで言うなら、私も徹底的にやります」
荘子、退場。
たま「きさちゃんのことは私が絶対に守る。だから信じてほしい。ここから話することは、二人だけの秘密の話よ。いい?」
如月「秘密の話?」
たま「そう、この話を聞いたら後戻りできない。それでもいい?」
如月「いいわ。私にはもう戻る場所なんてないから」
たま「きさちゃんの覚悟は受け取ったわ」
如月「それで、秘密の話というのは何?」
たま「驚かないで聞いてね。実は私は……レッドなの」
如月「レッド?」
●ヒーロー戦隊ものっぽい音、カットイン。後ろで流れる。
たま「そう、テレビで戦隊モノって呼ばれているのあるでしょ。五人揃って戦うやつ。簡単に言うと、あれの現実版レッド」
如月「たまちゃん、私のことからかってるならやめて。今はそんな気になれない」
たま「そう、確かに馬鹿げた話に聞こえるかもしれない。それに、最愛の人に裏切られたばかりで、すぐに信じられないのはわかる。でも、信じて。これは紛れもない本当の話なの」
如月「……ともかく話は最後まで聞く」
たま「ありがとう。……そうね、どこから説明したらいいのかな。えっと、まず私はレッド。というより、この前の戦いで前任のレッド、ブルー、イエロー、グリーンが全員やられてしまって、唯一残ったのが当時ピンクだった私だけだったからなんだ。 仕方がないからレッドに昇進することになったの。女性初のレッドなんて周りはち やほやするけど、そんな単純な話じゃないの。別に私、レッドの座を狙ってたわけ じゃないしさ。まぁ確かに給料はぐんと……」
如月「ごめんなさい。始まりから、話がぐちゃぐちゃし過ぎて理解できない」
たま「そうよね。内輪の話は後でゆっくりすればいいよね。えっと、要は、今残っているヒーローは私だけということ。たま子ピンク改め、たま子レッド!」
如月「……たま子レッド……」
●ヒーロー戦隊ものっぽい音、もう一度、大きくなって、フェイドアウト。
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