第12話 【現実世界】やよい先生の旦那

12


   ○下手エリア、フェイドアウト、漫画家エリア、フェイドイン。


矢田「……え、ギャグ漫画にするんですか?」

やよ「違うわよぉ。純愛ラブストーリーって言ってるじゃない」

矢田「でも、瞬のキャラクター、完全に変わっちゃってますよ?」

やよ「ワイルドになり過ぎたかな」

矢田「ワイルドっていうか、どんどん最低男になってきてますよ」

やよ「ちょっとやりすぎちゃったかな」

楓 「でも、私、こういう男の人、嫌いじゃないなぁ」

矢田「真面目に言ってます?」

やよ「二人で借金返さないと仕方ないもんね」

矢田「それに、アイドルになるなんて、絶対に騙されてますよ」

やよ「それはどうかな」

矢田「なんだ、やっぱり瞬のモデル、先生の旦那さんじゃないですか? ご主人、元アイドルですもんね?」

やよ「違うって言ってるでしょ!? たまたま話の流れとして、アイドルになっただけよ!」

楓 「それ、無理ありません? つまり、如月は先生ってこと?」

やよ「こらっ、人の話を……」

矢田「旦那さん、三姉妹のコイバナの連載が終わる頃に、芸能界引退して今はどこか海外で暮らしてるんでしたよね。ボランティア活動しながら、のんびり暮らしてるとか。悠々自適。うらやましいな」

楓 「それで、海外で優雅に二人旅だもんなぁ。で、別れ際に「この時計俺だと思って、身に付けておいてくれ」だもんなぁ。あぁ、恥ずかしい」

矢田「僕、旦那さんが海外に行く少し前に担当になったんですが、一度もお会いしたことないんですよね。……ということは、八年か……別居、ずいぶん長いなぁ。先生、寂しくないんですか?」

やよ「寂しく……って、こらっ、作品に集中。見なさい! もう三時半よ!」

楓 「夫婦旅行行った経験が作品に影響している気がしたので」

やよ「楓ちゃん、しつこい」

矢田「はいはい、それじゃ、漫画の話に戻しますね。率直な感想を言いますよ。このままだと読者は如月でも瞬でもなくて、たまちゃんに共感すると思います」

楓 「そうかな、私は……」

矢田「黙ってください。あなたは参考になりません」

楓 「ひどーい」

矢田「ひどくありません。あなたはおかしい人です。ちなみにその服も変です」

楓 「はぁ? そんなことありません」

やよ「喧嘩しないの。わかった、ちょっと路線戻せるようにやってみる」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る