第11話 【漫画世界】瞬の暴走

11 初夏の喫茶店


   如月、たま子。

   ○漫画家エリア、フェイドアウト、下手エリア、フェイドイン。


たま「わかった、そこまで言うなら、私、応援する。銀座一のホステスになってね」

如月「うん、ありがとう、たまちゃん」

たま「でも、自分一人で何でも抱えこんじゃダメだよ。私がいつでも相談に乗るからね」

如月「わかってる」


   瞬、登場。

   きらきらした洋服を着ている。


如月「瞬さん、どうしたの、その格好」

瞬 「俺さ、決めたよ」

如月「何を?」

瞬 「アイドルになる」

如月「えーっ!」

瞬 「さっき、原宿でスカウトされてさ、話だけでも聞いてくれって熱心に言うから付いていったんだ。そうしたら、すっごい良い人でさ。借金の話したら、アイドルになれば、一億円なんてすぐ返せるってさ。その位の才能、俺にはあるんだって」

如月「でも、今の仕事はどうするんですか?」

瞬 「もう辞めてきた。やるからには真剣にやらないとな。これからはアイドル一本。俺が目指す先は武道館さ」

たま「ちょっと待ってください。その話、怪し過ぎますよ。万一人気アイドルになれたとしても一億円ですよ? 簡単に返せませんよ」

瞬 「だって、そう言ったんだもん!」

たま「そんなキレられても」

如月「私、信じる」

たま「嘘でしょ! なんでそうなるのよ? 怪しいってば。会ったばかりの人間に一億円稼げるなんて言う人、絶対信じちゃダメ」

如月「瞬さんが輝いていることは私にもわかる。だから、スカウトの人も惹きつけられたんだと思う」

瞬 「如月ならわかってくれると思った」

たま「怖い怖い怖い」

如月「瞬さんはアイドル界でトップに立つのよね?」

瞬 「もちろんだ。借金のことは、お前に任せて、のんびりしようなんて考えていた俺はもういない」

たま「え、そんなこと考えていたんですか? 元々、自分のお父さんの借金なのに。っていうか、お父さんは何してるんですか?」

瞬 「俺も頑張るから、如月も銀座でトップになってくれ」

如月「うん」

たま「瞬さんは、きさちゃんが銀座でホステスになって働くことは許せるんですか?」

瞬 「だって、しょうがないじゃん! 借金があるんだもん!」

たま「またキレた」

如月「たまちゃん、私は大丈夫。二人で、一億円の借金なんてすぐに返してみせる」

たま「本当に本当にいいの? 別にきさちゃんと瞬先輩は結婚してるわけじゃないんだよ。こんなことまでしてあげる必要はないんだよ」

瞬 「貴様は、口を出すなっ!」

たま「きゃっ」


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