航海第二十日目 能力

(平成11年9月29日〔水〕曇りのち小雨)

 私の前に突如として現れた謎の男。彼の正体は杉平だった。

(正式な名は……いや、この場では伏せておこう)


 彼が言うには私の能力は道尾と同じくらいのレベルだという。これは私も見縊みくびられたものだ。そう思ったのだが、天田や加藤のワンランク下のレベルということを指しているらしい。今度はやや過大評価に思えてきた。さらには無能とも言っている。


 そして、最後にこう言った。

「これから、天国の上位である天上界を目指せ」と。


 ついに、この時が来てしまった。なんとなくそうではないかとは思っていたが、“天上界”や“天国の上位”などというベタな単語が出現したのだ。何とも言えず情けない。

 あまりにも情けないので、残っていた核ミサイルを天井界とやらにむけて発射し、粉々にした。


 風が吹き、私の髪が棚引く。

 また、やってしまった。せっかくの新しい舞台を消してしまった。明日から、怒涛の就職活動編が始まる。


(二十一日目につづく)

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