第44話 新たな世代
バンタムさんが難しい顔をして部屋に入って来た。
「どうしました?」
「今度造る装置は試作品と違いかなり大きい」
「そうですね。30m四方の予定ですから」
「私の魔力が心配です」
「あ〜、その心配が有りましたか……魔力回復用の薬か魔道具か……」
「リック、各国からの問い合わせでテレブスが鳴きっぱなしよ」
「あっ、いけね。1か月延びたのを連絡してなかった。バンタムさん、その件は考えます」
「お願いします」
各国の国王に延期になった事を告げ、最悪の事態になった時の為に形は整えてもらう。
クリスティン女王は、「他の方法を考えてみます」と言ってくれた。そう、俺一人で考えたって限界がある。皆がいるのだ……魔道具といえばエルフだよねやっぱり。フロイライン王国に行ってみよう。
ーーーー
「リック殿、よくぞ参られた。しかし大変な事になりましたな」
「はい、そのことで知恵をお借りしたくて、実は……」
「魔力ぎれを補う方法ですか……」
「陛下、宝物庫に魔力を一時的に貯めておける魔道具が有ったかと思います。それを改造されてはいかがでしょう?」
「おう、それならば短時間で出来るかもしれんな。ミリーフ、早速手配せよ」
「はい」
なんか相談に来て良かった。
「ありがとう御座います」
「なんのこれしき、リック殿」
「そうで御座います。リック様には多大な御恩が有ります。まして今回はこの世界の為に動いて下さっているのですから」
「あっ、もう1つ別の魔道具を造って欲しいのですが」
ーーーー
「どうだったリック?」
「ミリーフさん達が魔道具を考えてくれている」
「良かった。何とかなるわよね?」
「もちろんさ」
「後は魔力量の多い人を集めるとか、かしら?」
「そうだね。でも大人数にしない方が良いだろう。勘づかれる可能性もあるし、考えたくはないが失敗した時の事も考えてないと」
「力の有る人が残って居てくれないと困るのですね」
「そういう事」
「だったらリックが参加したらダメじゃない」
「そうもいかない。僕も魔道具を動かすのにひと役買っているからね。本当は皆には残って欲しいぐらいだ」
「私だって関わっています」
「そうよリック皆一緒よ」
「いずれにしても今後の事はキョウゴクさん達とも話し合わないとね」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
やれる事は全てやった。準備は整ったと言える。ピラミッドに行くのは俺達4人、バンタムさん、邪竜のフリーズ、各国代表の魔力量の多い魔法師20名だ。
水龍のメイリンさんも来たがったが、ダンジョンの事があるのでキョウゴクさんと共に残ってもらう事になった。
「いよいよね」
「ああ、上手くいくといいな」
「必ず成功します」
「そうよ、決まってるわ」
「でもリック、さっきから何してるの?」
「上手くいくようにおまじないさ」
「リック様、ピラミッドが見えて来ました」
「よし!行こう」
ーー
ピラミッドの前に立つ。いつもより重苦しい。中に入る前に声が響きわたる。
『待っておったぞ』
「約束の物を持って参りました」
『うむ、早く出すのだ』
俺のアイテムBOXから30m四方の巨大な魔道具を出す。
『おお!この前の物とは比べものにならない程の波動を感じる。さあ始めよ』
「畏まりました」
俺は皆の顔を見て頷く。皆も頷く。魔導師の人達は待機。俺達が魔道具に触れ作動させる。勝負だ!
[ウイィィーーン]……動き出した。
「さあ、どうぞ中へ」
『待ちかねたぞ』
エネルギーを喰らう化物は喜々として中に入った。
「皆、いいね」
「「「はい!」」」 「おう!」
『素晴らしい。美味だ!もっと、もっとだ』
貪欲な奴だ。お望み通り喰わせてやるよ。
「バンタムさん、大丈夫ですか?」
「ああ、まだまだいける」
「リック、そろそろ30分経つわよ」
「まだ奴は喰い続けている。中は1億度にすら達していない」
バンタムさんが苦しそうな顔をしている。
「リック様、そろそろ限界です」
「解りました。魔導師の方々、お願いします」
「はい。皆、やるぞ」
エルフの国で造って貰った魔道具の魔力が枯渇したようだ。新たに魔力を補充してもらう。
また30分経過、炉の温度は2億度だ……まだダメか……。
「リック、バンタムさん限界よ」
確かに。魔力きれもそうだが、スキルの連続使用による負担が大きい。
「くそっ、あと少し何だが……何かないか」
魔導師の人達も魔力を使い果した様だ。心配したミリカが補充用の魔道具に魔力を入れようと手を当てている。
ミリカ1人ではどうにもならないだろうしバンタムさんの負担軽減にならない……まてよ……ミリカか……ミリカは炉の起動に魔力やスキルを使っていない。もしもの時の為にキョウゴクさん達と共に残れと言ったのに、嫌だゴネて言うことを聞かないで来たのだ。
「ミリカ!バンタムさんのスキル占有して使えないか?」
スキルの占有はやった事は無いけど試す価値は有る。
「えっ、……あっ、やってみる」
ミリカがバンタムさんの肩に触れ魔力を解放する。
「……信じられん。この世界は広いな、スキルをコピーするなんて」
バンタムさんが唖然としている。恐らく上手く行ったのだろう。とすればこれから30分が勝負だ。
バンタムさんに魔力きれの相談を受けた時、俺は最悪の事態を考えた。ピラミッドの主が炉の熱を喰い尽くしたら……。
前回小さい炉の時判った事が有る。奴が対象のエネルギーを喰らい
奴が勝ったとしてもまだチャンスがある。
「リック様、そろそろ30分経ちます」
「炉の温度は3億度になる。奴はまだエクスタシーに達しないか?」
「リック、もうダメ」
くっ、ミリカだけでなく、ここに居る全員の魔力は底を尽く。
「ミリカ!」
『あっあ〜いいぃ〜』
来た!俺は魔力をふり絞って、もう一つの魔道具を作動させる。
『な、なんだこれは……グワァーーーッ』
[バリバリバリバリ]
轟音と共に30m四方の魔道具の端に俺が付けたもう1つ魔道具から、ピラミッドに来る途中に俺が森に落として行った無数の電気を受ける避雷針の役目をする魔道具に向かって電気の束が雷の如く落ちて行く。
魔道具に落ちた電気エネルギーは莫大な物だったのだろう。散々熱を喰らった神に等しい奴のエネルギーなのだから当然だ。
魔道具は電気を吸収しきれず破壊され森の木々は一瞬で全て炭になった。魔物も生きてはいないだろう。
俺達はどうなったかって?もちろん絶縁能力の有る魔道具の上に乗っていたさ。
皆はヘタレこんで呆然としている。
「リック様、これはどういう事です?」
流石、バンタムさんいち早く正気に戻って俺に訊いて来る。
「奴が熱と同化した時、炉の中の熱を電気エネルギーに変えたんですよ。ミリーフさんに造って貰ったあの魔道具で」
俺は30m四方の魔道具の出っ張っている部分を指した。
「な、なるほど」
この説明だけでバンタムさんは全てを察してくれた様だ。
☆☆☆☆☆
あれからピラミッドは全て壊し除去したが、あれだけのエネルギーを受けてもダンジョンだけは健在だった。合体魔物の調査は、まだまだ続く。
広大な土地は近隣の三国であるペントレス王国、ワラボルト王国、ラダステリィ王国で管轄する事になった。取り合えず魔法大国ジェルロームの消滅事件は片付いた。
「ねぇリック、話しがあるの」
3人揃って何だいったい?
「なんだい?あらたまって」
「えへへ」
「早く言いなさいよ」
「だって……」
「実はリック様、赤ちゃんが出来たのです」
「はっ?マジ、サキに?」
「いいえ。皆に」
「へっ?」
「だから3人によ」
「3人に……」
「そう3人に。嬉しいでしょ?」
「も、もちろん」
「さあ、今夜はお祝いよ」
「アレツに言って盛大にやりましょ」
「そうね、準備準備と」
「お父様にも報告して来なくちゃ」
「はは、俺の子供って、しかも3人全員とは……」
その夜、俺はリリアナ様にまた会った。
『リック、この度も貴方に助けられましたね』
「何とか、ぎりぎりでしたけど」
『他の神々もたいそう喜んでいます。何か望みはありますか?』
「いいえ望みなんて……あっ、それでしたら苦労しない様に生まれて来る子供に良いスキルを下さいませんか」
『解りました。他の神々にも頼んでおきましょう。そうそう、サキは双子です。セフィーヌは三つ子。ミリカは五つ子ですよ』
「はぃ~……ま、まさか全員女の子なんて事は?」
『安心して男の子も1人ずついます』
「良かった」
俺もとうとうこの世界で親になるのか……なんか感慨深いな。この世界に来て良かった。転生バンザイだ。かわいい女の子3人に愛されてるしな。
ん〜、子供が産まれたら隠居して遊んで暮らすかな、うん、そうしよう。
『あっ、言い忘れていましたが、5年後に歴代最強の魔王が復活しますので宜しくね』
はっ?……やっぱり転生なんてろくなもんじゃない。あのままイケメンに取り憑けば良かったがもう遅い。……俺の次の世代に任せるよ。頑張れ俺の子供達。
ー終幕ー
魂だけ勇者召喚された俺に女神が慌てて謝りに来たのでスキル付け放題~転生する筈が女神の加護まで貰ったので、成り上がりたくはないのだが女にモテてしまい調子に乗ったら辺境国の国王された 主水 @321155ma
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます