第43話 計画

 久々に戻って来たな。


「やぁ」


「馴れ馴れしい奴、何者だ?……こ、これはリック様、失礼致しました」


「急に来て申し訳ないが国王に会いたい」

「はっ!」



ーーーー


「まぁ、リック、顔をみせに来てくれたの?…………そうではなさそうですね」


「はい、お姉様。国王に相談が有ってまいりました」


「そう……直ぐにいらっしゃいます」


「リック様が来てるそうだな」

「師匠」


「サキか。……リック様、リック国王よく来て下さいました」


「ここでは堅苦しいのは無しにしましょう、バンタムさん。時間が惜しいので本題に入ります」


「リック様、そんな難しい顔をなされて、いかがしました?」


「確かバンタムさんはアメリカに留学してましたよね?」


「……どうしてそれを?」

「2人だけで話がしたいのですが」


ーー


「なっ、転生者……リック様が……そう言われれば納得が行く。子供の頃から只ならぬ雰囲気が有りましたから、リック様には。正直、本気になれば私でも敵わないであろうと感じていました。……確かに私はMIT大学の工学部に留学していました。それが何の関係があるのでしょう?」


「例のピラミッドの事です。実は……」



ピラミッドの主との会話の後、俺はエネルギーを喰う怪物を思い浮かべた。そして当時大人気だった子供の頃にテレビで見た空想科学ドラマの話を思い出した。


それはエネルギーを喰う怪物が地球上のエネルギーを喰い尽くす話だ。このまま行けば地球上のエネルギーが無くなり人類が滅亡すると思われた時、怪物は宇宙ヘ向かって行った。


ドラマに出て来る博士は言った。あいつはもっと良いエネルギーを見つけたのだと、それは太陽だった。怪物は太陽を喰いに行ったのだ。太陽が勝つか怪物が勝つか、最後にナレーターが言った言葉が印象的で本気で太陽が無くなるのでは、と思ったぐらいだ。



「バンタムさんに核融合をする魔道具を考えて欲しいのです」


「核融合……また無茶な」


「磁場を造れるバンタムさんなら出来るでしょう?」


「ハハ……全てお見通しですか?リック様。…………しかしそれをしないと……」


「この世界に未来は無いですね」


いつまでも差し出す数が2000人とは限らないのだから。



ーーーー


「師匠と何を話したの?」


「核融合の魔道具を造る方法を考えて欲しいとお願いしたのさ」


「核融合?それって放射能とか危険じゃない」


「サキが思っているのは恐らく原子力発電の事だろう?核融合とは違うんだ、そんなに危険じゃない」


「ふ〜ん、そうなんだ」


「もう、2人で難しい話をしてズルいわよ」


「ごめん、ごめん、元の世界の話なのよ」

「仕方ないわね」


「リック様、これからどうします?」


「うん。サミットを開く余裕は無いから各国に寄って行こうと思う」



各国の国王達は俺の話を聞いて愕然としていた。無理もない。毎月2000人の生贄を捧げよと言われているのだから。考えたくは無いが、どうやって選ぶのか?それだけでも頭が痛いはずだ。


バンタムさんにはピラミッドの主に興味を持ってもらい、説得しやすくする為に先ずは小さな核融合炉を造ってもらうようお願いした。その後に巨大な核融合炉を造ってピラミッドの主と喰いあいの勝負をしてもらうのだ。


勿論できるまでの間に他の方法も考えるが。



ーーーー


「うううっ……」

頭が痛いのだ。


「リック様、重水素などの理屈が解って作れないと核融合の炉は出来ません」


「解ってます。解ってますが……」



ここ数日でバンタムさんに聞いて核融合に必要な物を考え用意してみた。


水の電気分解に必要な電気は虫のメイドウジュ。

高熱の元は魔法とセフィーヌのスキル、ステータスチェンジ。

磁場はバンタムさんのスキル。

器はアダマンタイト。


錬金術担当は俺になった。そこでイメージが必要なのでバンタムさんに化学一般、分子構造や核融合の仕組みなどを教えてもらっているのだが……俺は苦手なのだ。


「言い出したのはリックでしょ」

「そうは言うけどな僕は文系だ」


などと言ってはいられない。時間は限られているので、何とか物にしなくては。




ーーーーーー


「リック様、大丈夫ですか?」

「痩せたわよね」

「大丈夫、特製の栄養ドリンクを飲んだからね」


「獣王国に伝わる私が作った精力剤よ」


精力剤だったのか?どうりでギンギンに……話はそれたが今日は試作品が出来たので、バンタムさんを含め皆でピラミッドの主の所に行く所なのだ。



「リック様、確かに異常な感じを受けますな」

「そうでしょ」


皆でピラミッドの中に入って行く。



『どうした?まだひと月は経ってないと思うが?』


「その前に人のエネルギーより美味と思われる物が有りましたので、お試しになられては如何かと思いまして」


『なに?あれより美味い物だと』

「こちらで御座います」


1m四方のアダマンタイトの箱だ。


「主様でしたら身体の一部をこの中に入れる事など造作もない事でしょう」


『勿論』

「今からこの中に造りますので試食をして下さい」


『良いだろう』


俺達はスキルを使って魔道具を作動させる。


『おお!ビンビンと美味そうな感じが伝わって来るぞ』


「どうぞ」


『こ、これは……美味い、とろける』


「もうひと月いただければ30m四方の物が完成致します。そうすれば思う存分に堪能出来ます」


『それは良い。だが、もうひと月は少し長いな、腹が空いて来た』


「我慢する時間が長ければ長いほど、食した時の甘美さが増すのでは?」


『お前は口が上手いのう。よかろう乗ってやる』

「ありがとう御座います」




ーーーー



「リック、上手く行ったわね」


「奴の食い意地が張っていて良かったよ。バンタムさん、僕の作戦以外に倒す方法があるでしょうか?」


「正直、思いつかない」

「……そうですよね」

「リック様の考えに賭けるしか無さそうです」



勝負は1か月後だ。

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