第41話 お宝の呪い

 牢の有る場所に行くと、人だったらしい2頭の魔物は既にミリカによって真っ二つになり、倒されていた。残りの魔物を直ぐに動けなくする。


動くなバインド


「リック様」


「殺ったけど、まずかった?」

「仕方ないさ」


「でも急にどうしたのでしょう?」

「わからないな」


「リ、リック、見て」


ミリカに倒された魔物の姿が変わって行く。真っ二つにされた身体の下半身がボコボコと音を立てて蠢いている。そして人のそれに戻った。


「どう言う事?」

「下半身だけって何よ」


う~ん、何が違う、…………。

固まって動かない魔物と、死んで魔物のまま戻らない上半身に人の下半身を注意深く観察する。



「共通点を見つけたぞ」

「?」「??」「???」


「多分だけどね」


一番左で固まっている魔物の右手の人差し指を切り落とす。ポトリと床に指が落ちて血が吹き出した。


「セフィーヌ、血を止めて上げて」

「はい」


「リック、何してるのよ?」

「ちょっと様子を観ててよ」


5分ほど経った所で指を切られた魔物は人の姿に戻った。


「どうなっているの?リック」


「やっぱり問題はその指さ」

「指?」


「後で説明するよ。さて、お前は僕の言う事が理解できるな?」


「き、聞こえてるよ。それよりどうなっている?身体が動かないし、隣にいる魔物は何だ?」


「その魔物はお前の子分だよ」

「な、何っ!」


「お前達が、あのピラミッドから持ち出した宝のせいでそうなったんだ」


「はぁ?」


「よく観てみろ。そこで死んでいる上半身だけの魔物の手を」


「……特に変わってねぇ、分け前にやったお宝の指輪をしているだけだ」


「お前もさっきまで魔物だった。お前も指輪してただろ?」


「へっ、俺は人のままだぜ。何言っていやがる……えっ?指、指が無い、俺の人差し指が……」


「切ってあげたよ、僕って親切だろ?」

「そ、そんな……」


「自業自得だ。傷を治して貰っただけ有り難く思え。売った所を思い出すまで、お前達は鉱山で働いてもらう」



「そうか、やっと解った。その指輪のせいなのね」


「うん。指輪に限らず、お宝を持っていると危ないな。発動条件は判らないが、呪いの類いだろうね」


「各国に報せないといけませんね」

「その通りだ」


「この国では大丈夫だけど、他の国は大問題だわね」


「厄介ね」



ーーーー



「報せはしたけど、事件が有ったとの連絡は無いわね」


「うん、タイミングが判らないな。身に付ける事が最低の条件だとは思うが」




何の出来事も無く時が経ち、隣国のプロスベラス王国領の山中に新たなダンジョンが発見された事もあって、この国にも冒険者ギルドを造らせてくれとギルド協会から打診が有った。


「リック様、如何いたしましょう?」


「そうだね、別に鎖国する気も無いし良いのじゃないか」


「畏まりました。連絡しておきます」




ーーーー


「リック様、先日お話し致しました冒険者ギルド設置の件で、打ち合わせをしたいと担当の者が来ております」


「そう、会おう」

「では準備致します」




「やあ、待たせたね。あれ?パンチさんじゃない」


「覚えていて下さいましたか、リック国王」


「もちろんですよ。それから、そんなに畏まらないで下さい」


ラダステリィ王国からダドウサ王国に行く時、馬車の護衛をしてくれた冒険者の人だ。


「いえ、そうはいきません」

「仕方ないですね」


「ザラティスの村での事は大変でしたが、今となっては私にとっていい思い出です」


「そうですね」


「あっ、申し訳ご座いません。話がそれてしまいました」


「いいえ、僕も懐かしいです」


「ありがとう御座います。ではギルドの件ですが場所の提供をして頂たいのです。もちろん賃料はお支払い致します」


「解りました。候補地を考えましょう」


「それとギルド長は、この国の方に就いて頂たいのです」


「そうですか、……解りました。ではこれからギルドの建設場所を見に行きましょう」


「感謝致します」



ーー


「ふ~ん、それでギルド長は誰にするの?」


「ワラヴォルトの店も順調で、オーナーが僕だっていうのも判ってしまったし、手を出すような奴などは、最早そういないだろう。警護は他に任せてサラにやってもらおうと思う」


「エルフのサラさんか。腕は立つし奴隷になったのだって不運としか言えないもんね。賛成」


「サキの賛同も得られたし、直ぐにここに来てもらうか」




ーーーー



ギルドのオープンの日がやって来た。職員はこの国でも育てなくてはいけないので、見習いアシスタントとして数名募集をかけた。冒険者相手の宿や商店も造ったし上手く行くだろう。


「リック様、立派なギルドが出来ましたね」

「パンチさんのお陰ですよ」


「リック様、この様な大役を仰せつかり感激で御座います」


「頼むね、サラ」

「はっ!」


パンチさんと一緒にやって来た職員の人達が掲示板に依頼を貼って行く。


オープンしたてで依頼は多くない筈だが……。


「これ全部が行方不明の人探しですか?」

「はい。ここ何日かで一気に増えまして」


「しかも、ほとんどが貴族や大商人などのお金持ちですね」


「はい、そうなのです。しかも世界中で起こっている感じです」


「う~ん……」


「リック様、何かお考えがお有りになりますか?」


「例の件に関係している気がしてならない」

「例の件?」


「ピラミッドのお宝さ」


「ピラミッドのお宝……まさか、あれですか?」

「そう、あれ」


「だとすると大事ですね」

「ああ、何が起こるか判らない」



「リック様。今、城から連絡があって指を入れてある箱から音がしてるらしいです」


「はあ?解った直ぐ戻ると伝えてくれ」

「はい」


「リック様、私も行ってもよろしいでしょうか?」


「もちろん」


切った指に付いている指輪が何かをしだしたに違いないが、何をする気だ?

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