第40話 第三回異世界サミット

 ワラヴォルトの国王にお願いして、各国に詳細を伝えて貰う。


 開催日は2週間後に予定した。開催日に間に合わない遠方の国々は予め判っているので、キースに言ってヤクトビートルで迎えに行って貰う事にした。


開催日までの間、余裕のある俺達はダンジョンの在った場所を調査する事にした。


「ここまでは大した事はないな」


「そうですね、普通に街道や森を通る時に出会う魔物の合体番ですね」


「そろそろダンジョンの在った辺りに着きます」

「どうなってるかな?」


「あっ、あの穴は何でしょう?」


「山壁にポッカリ空いた穴か、それっぽいな」


「入ってみますかね」

「調査が目的だ仕方あるまい」


「中は明るいですね」

「この程度なら灯りの魔法はいらないな」


「前はどうだったのかな?」

「灯りの魔法は必要だっだ筈です」


「膨大な魔力を感じる。その辺が影響しているのだろう」


「ダンジョンが勝手に明るくしてくれているんですかね」


「そんなところだ」


「もう結構歩いて来たと思うんですけど、階段らしき物は無いし、どこまで続くのかしら?」



「キョウゴク様、何か居ますね」

「なんか嫌だな」

「確かに」


嫌な予感は当たるものだ。出来たのは魔物のではない人だった。但し、頭が無い。


「趣味が悪い」

「ホラーだな」


頭無しの集団は、こん棒持って襲って来た。


「私がやります。ウインドカッター!」


サキが放ったウインドカッターであっさりと殺られた頭無し達は、魔石やダガーなどのアイテムをドロップして消えた。


「この辺の仕組みはダンジョンと変わらないですね。今のはゴブリンと同じ程度のレベルと言う感じでしょうか?」


「うむ、出てくる魔物の種類が異常だがな」


「奥に階段が有りますね」


下に降りるにしたがって魔物のレベルも上がってきた。今まで出てきた魔物は3種類に分けられた。


人型で変異してるもの、人と魔物が合体してるもの、魔物が合体してるものだ。


「取り合えず10階まで進んだが、ここまでにしておこう。サミットに間に合わなくなる」


「そうですね」


「入口に造っておいた魔法陣が使えるか試してみましょう」



パルゴさんが転移の巻物を使った。地面に魔法陣が現れて、皆が中に入ると作動しダンジョンの入口に戻った。


「使えそうだな」

「良かった。攻略が楽になる」




ーーーー


俺達が大聖堂に戻ると各国の代表は既に揃っていた。司教が出迎えてくれる。


「お待ちしておりました」

「お世話になります」


「会議は午後からで宜しいでしょうか?」

「それで頼みます」



皆で大浴場で一息入れ会議に臨む。いつものようにクリスティンの司会で始まった。


「最初に現時点での大森林の調査結果を報告致します。お手元の資料をご覧下さい」



「これは真か?」「うむむ」「信じられん」


クリスティンが俺を見るので、解ったとうなずく。


円卓のど真ん中に捕縛したグレートウルフの頭などが合体した魔物、頭無し、オークの胸に人の顔がある魔物をアイテムBOXから出した。



「なっ?」「酷い」「醜悪な……」


「見ての通りです」


「ジェルロームに在ったダンジョンはそのまま残っていたのですね?」


「ええ、2つの内の1つしか入っていませんが、ダンジョンの機能はそのままです。但し、出てくる魔物はそのような物ばかりですが」


「魔物のレベルは如何です?」


採取した魔石も出す。


「どうやら、合体した分だけ強くなると考えた方が良いでしょう。これはグレートウルフの頭の奴の魔石です」


「な、なるほど3倍はあるな」


「スタンピードの心配もしなくてはなりません」

「そうじゃな」


「ダンジョンに入るのはAクラス以上が良いでしょう」


「むう、それは仕方ない事かもしれん。何が起こるのか判らんのだからな」


「全くだ」


「共通の認識が必要な事は以上ですが、前回お話しをした盗賊が売り捌いたお宝について判りましたか?」


「リック様、それがさっぱり出て来ないのです」

「我が国もだ」「こちらもです」


「……そうですか」

「やはり気になるのですね?」


「ええ、そうですね。お手数ですが引き続きお願いします」


「解りました」


それからスタンピード対策など細々した事を取り決めてサミットは終わった。



俺の兄様やバンタムさんも、キースがヤクトビートルで送って行くので、出発前に会う機会を持った。


「リック様、お元気そうで」

「ドロン兄様、呼び捨てで良いですよ」


「そうは行きません」


「そうです、リック様は一国の王で今や世界の中心の王と言っても過言ではないのですから」


「バンタムさんまで、止めて下さい」


「たまには顔をお見せに来て下さい。エミューズも会いたいと言ってます」


「解りました。そうそう、会ったことはあるかもしれませんが、紹介した事が無かったと思います。こちらが同盟国マホロバ王国の国王、キョウゴク様です」


「キョウゴクで御座います」

「これはご丁寧に。バンタムと申します」



ーー




「なるほど、怖い男だったな」

「でしょ」



クリスティンとこれからの事を少し話した後、俺達も国に一旦戻ることにした。



なんか疲れた。今日は1日じゅう、ボーっとしてよう。


「リック、大変だ!あの盗賊野郎どもが魔物に変身して牢を破り暴れ回っている」


「はぁ?」  どうやらゆっくりボーっとしてる暇は無いようだ。

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