第39話 探索

 大森林を調べに行くと言ったら、キョウゴクさんも行くと言うので、マホロバ王国経由で大森林に向かう。


「どんな魔物がいるのかしらね?」

「わくわくするわね」


「リック様、考えこんでどうしました?」


「ジェルロームが砂漠になった時には気がつかなかったけど、前からダンジョン在ったんだよね?」


「はい。確かジェルロームには2つ在りました」


「そのダンジョンはどうなったのか?と思ってさ」


「そう言われると、そうね」


「どの辺に在ったの?」

「王都から南と西で、どちらも山の近くですね」


「そうか、その辺りは注意しておくか」



上空から見ると、大森林に隣接している3国は防壁を建設している。出来上がるには、まだしばらくかかりそうだ。まるで万里の長城の様だな面白い、元の世界に戻った気分だ。


「リック?」

「おっと、そろそろ着くな」


接触面が一番多いワラヴォルト王国側の所に降りる。キョウゴクさん達が降りたのを確認して、ヤクトビートルをしまう。


出来上がっている防壁の内側には、冒険者相手の宿や店がもう出来ていた。


「皆、商魂たくましいですね」

「全くだ」


「臨時のギルドもあっちに有りますね」

「お~、ホントだ」


奥には警備兵の宿舎もあった。


「リック、これからどうする?」


「調査開始の解禁日は明後日ですから、宿を決めて打ち合わせをしませんか」


「それが良いな」


ーー


宿の食堂で、明日の打ち合わせをキョウゴクさんとする事にした。


「冒険者も結構いますね」

「お宝が有るかもしれんからな」


「どうですかね」

「心配か?」


「キョウゴクさんも、あれがピラミッドに見えませんか?」


「確かにな」


キョウゴクさんにも、俺が転生している事は話してあるので気楽に会話ができる。


「サキ達にも話しましたが、前に在ったダンジョンがどうなったのかが気になりますね」


「うむ、興味深いな。慎重に行こう」



ーーーー



いよいよ調査開始の解禁日が来た。出来上がっている所の防壁には門があり、冒険者達が前に集まっていた。


「Bクラス以上の人達ですから、皆強そうです」


「ホントね」


「今日は初日で様子見と言う事で、一緒に行動で良いな」


「ええ、その方が良いでしょう」


キョウゴクさん達のパーティーは側近のパルゴさんと騎士2人、俺達と合わせて8人のパーティーになる。



門が開き、思い思いの方向に冒険者達が進んで行く。


「取り合えず、南のダンジョンが在った場所を目指します」


「了解だ」


門を出て左に進み山を目指す。


「今のところ怪しい気配は無いな」

「そうですね」


「木々は何の変哲もない、何処にでも有る普通の種類ですね」


「うん、この世界の物が一瞬で育ち拡がったのだろうね」


「キョウゴク様、何か来ます」

「さて、鬼が出るか蛇が出るか」


「いた、あれだ」


「うっ」


「何だあれは?」


結構な大きさの四つ足の生き物が、4頭こちらの様子を伺っている。


「映画に出てくるクリーチャーかって所だな」


俺の言った事に頷いているのは、キョウゴクさんとサキだ。


「リック様の言っている事は解りませんが、気持ち悪いです」


「でもよく見ると、頭はグレートウルフで背中の手はゴブリンの様な感じがします」


「脚はオークっぽい」


「キマイラみたいな物ですかね?」

「多分」

「取り合えず捕まえてみるか」

「そうですね」


危険を察知したのか、謎の魔物はウインドカッターを撃って来た。


「ドレインシールド!」


「散開して奴らの後ろに回り込め」

「はっ!」


「リック、捕まえるのは1頭で良いな?」

「そうですね」


キョウゴクさんの指示でパルゴさん達が行動を開始した。


「ここはキョウゴクさんに任せよう」

「そうね」

「はい」


謎の魔物の動きは素早かった。能力はグレートウルフの物ではない、かなり向上している。攻撃してくるゴブリンの手は力強く、振り回された手に当たって大木はメキメキと折れる。それでもキョウゴクさん達の敵ではない。


2頭が騎士の人達によって切り捨てられた。


パルゴさんがアイテムBOXからミスリルのチェーンを出した。魔力が練り込んであるのだろう、それは意思を持った生き物の様に動き出す。


あっという間に1頭に絡みつき自由を奪う。それを見ていた残りの1頭がキョウゴクさんに飛びかかった。


「はぁっ!」


キョウゴクさんは腕を魔物に向け、手にを開く。空間が微かに歪んだように見えた。


何も手のひらからは出てはいないが、謎の魔物はグレートウルフの様な頭を撃ち抜かれ地面に落ちた。


キョウゴクさんのスキルの1つだな。氣砲とでも言えば良いのかな?



ミリカとサキが謎の魔物を解体し始める。


「うわぁ、でかい」

「グレートウルフの3倍はあるな、この魔石」


「リック、どう思う?」


「異世界からピラミッドが来た時に、この地域の魔物が何らかの理由で混ざってしまったのかな」


「むむぅ、まさにキマイラではないか。この先、もっと強い魔物同士が合体などしていたら、他の冒険者では歯がたたんのではないのか?」


「あり得ますね」



キョウゴクさんと相談した結果、他の冒険者達の話しも聴こうと言う事になった。


防壁に戻りギルドに直行する。中にいる冒険者達は大森林での事を興奮しながら話しあっていた。見た所、大森林に入った者は皆無事に戻って来たようだ。


臨時ギルドの長になったペインツさんが、皆を黙らせ内容をまとめている。


ペインツさんは俺の事を知っているらしく、内容が内容だけに困った顔をして聞いてきた。


「リック様、どうしたら良いでしょう?」


そう言われてもね。……第三回異世界サミットをするしかないかな。

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