第38話 幕開け

       ☆☆☆☆☆



「へへ、こう言う所には凄いお宝が有るって相場が決まってるんだ。国同士の協定なんざ糞喰らえだ。野郎ども、絶対に入口を探しだせ!」


「「「おお~」」」



「あ、兄貴、有りましたぜ」


「ログ、相変わらず鼻が利くな、よくやった。なるほど、こう言う仕掛けか」



「お宝の匂いがプンプンするぜ。だが何が出てくるか判らねぇ、慎重に行くぞ」


「へい」


「地下5階か、何処まで有るんだ?」

「兄貴、向こうに扉がありますぜ」


「ホントだ。……待て、何かいるぞ」

「魔物ですかね?」


「うっ、何だ気持ち悪いぜ」


盗賊が見た物は大きな球体の肉の塊だった。その球体には幾つもの顔が付いていた。


「苦しい……」「お父……様」

「た……すけ…て」


「しゃ、喋ってる。あ、兄貴、引き上げた方がいい」


「バカ言え、ここまで来て……何だこんな物、喰らえ!」


「ぐぎゃ~」「ひぃ~」

「呪……ってやる……ぐふっ」



「し、死んだ?」


「こんなの燃やしちまえ、お前ら火をつけろ」

「へ、へい」


「弱っちい、大したこと無かったぜ。さぁ、お宝を拝もうぜ」




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「よぉ、ゴメス、羽振りがいいじゃねぇか?」

「ちょっとな、上手いこといってよ」


「か~、羨ましいぜ。またな」

「おう、今度、ご馳走するぜ」


はっ、もうお前らと会うことはねぇけどな。盗賊は引退だ。お宝を使って、一旗揚げるぜ。




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『リック様、結界の魔道具が完成致しました』


「ありがとう御座います。直ぐ取りに行きます」


「ミリーフさん、何ですって?」


「例のピラミッド用の結界魔道具が出来たって、あんなに大きいと僕でも造るのは難しいからね。エルフの技術に任せた方が良い」


「今から行くのね」

「そのつもりだよ」


「じゃ、皆を呼んでくる」



ーー



「何も全員でこなくたって」

「良いじゃない。久しぶりの遠出なんだから」

「そうよ、そうよ」


「皆、帝王学だの何だのと勉強で大変だったのですから、サービスして下さい、リック様」


「分かった、分かった」


「直ぐにピラミッドに設置するんでしょ」

「ああ、早い方が良い」



「見えて来ましたね」

「よし、降りるか」


ヤクトビートルを左端のオベリスクの所に横付けする。


「相変わらず壮観な眺めね」

「確かに」


「ちょっとリック、入口が有るわよ」

「何だって!」


「誰か入ったのでしょうか?」

「やってくれたな。取り合えず中を調べよう」




「リック、扉が有るわよ」

「中には何も無いね」


「これがどっかの世界のピラミッドなら、墓荒らしにあったってことね」


「そう……うっ、これは?」


「リックも感じたの?」


「ああ、禍々しい嫌な感じだ。早く出よう、そして封印をした方が良い」


「「「はい」」」



ーーーー


「帰ったら各国に報せておいた方がいいね。なんか嫌な予感がする」


「墓荒らしの奴ら大丈夫かしら?」

「あの中には何があったのでしょう?」


「普通に考えればお宝だわね」

「だと良いけどな」




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「あれから半年経つけど特に変わった事は無いわね」


「封印が上手くいったんじゃないの?」

「かもしれません」



「リック様。商人が来ておりまして、世にも珍しい物が手に入ったので、是非観て貰いたいと申しております」


「世にも珍しい物ね……良いだろう、通して」

「畏まりました」


ーー


「世にも珍しい物って?」

「こちらで御座います」


指輪、腕輪、首飾り、確かに見たことの無い形の物だな。


「……サキ、こいつら全員捕らえろ」

「は、はい」


「何をしやがる!」

「おっ、バケの皮が剥がれたな」


「お、俺達が何をしたって言うんです?」


「ここに有るものがさ、僕に鑑定出来ないんだ」

「えっ、リック様に鑑定出来ない?」


「それは陛下のレベルが低いからで御座いましょう」


「バカなの貴方達、この世界でリックに鑑定出来ないものは無いのよ」


「へっ?」


「そう言うこと。お前らだな、ピラミッドに入って荒らしたのは?」


「そんな……何で?」


「さあ、お前ら!とっとと歩け」

「糞っ!」


「あいつらどうするの?」

「何処に売ったか吐かせるさ」



取り合えず犯人が判って良かった。が、翌朝とんでもない報せが来た。


「リック様、大変で御座います」

「アレツ、今度な何だ?」


「あのジェルロームの砂漠が大森林になったそうです」


「はあ?」



直ぐにヤクトビートルで見に行った。


「信じられないわ」


「国全てが砂漠になったんだ。こう言う事も有るのだろう」


「これってお宝を盗んだせいよね?」

「多分」


「これは話し合いが必要だな。またワラボルトに集まるようだ」



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クリスティンの呼びかけでワラボルトの大聖堂に於いて第二回異世界サミットが行われる事になった。



クリスティンがホスト役を務めるのが恒例となったようだ。


「出現した大森林をどのようにするかですが、お考えの有る方はいらっしゃいますか?ワラボルト王国、ペントレス王国はラダステリィと同様に大森林に接しているので、特に何か有ればと思いますが?」


「冒険者ギルドに調査依頼をするのが妥当だと思うが。勿論、何が起こるか判らない故それなりの実力者と言う事になるが」


「うむ、それが良いかもしれんな。兵士、騎士は際の警備に備えたい」


「私もそう思う」

「そうですね。私もそれで良いと思います」


「1つの国がそっくりそのまま森になったのだ、難儀だのう」


「全くだ」


「リック様は何か御座いますでしょうか?」


「先日あそこの建物から宝物を盗み出した連中を捕まえたのだが」


「なんと不届きな」


「結界を張る前に入ったようです。各国で宝物を売り捌いていたらしいので、回収したいと思います。協力して欲しいのですが?」


「誰に売ったか判っているのですか?」


「それが『覚えているわけないだろう』とほざいていてね」


「う~む、難しいのう」


「つまりリック殿は戻した方が良いと?」

「僕にはあれがお墓に見えてならないのです」


「お墓ですか……」

「解りました。出来るだけ協力致しましょう」


「我らも協力致します」

「感謝致します」



ーーーー


「僕達も1度あの大森林の中に入って見るべきだろうね」


「それが良いと思います」


さてさて、何が出ることやら。

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