第33話 いざ、勝負!

 デンタクルの奴は、いつもの装備だ。殲滅の剣"ドゴスソード"とミューズの盾、良い装備だ。


「ファイアボール!」


デンタクルは小手調べのつもりか、ファイアボールを撃って来た。あの時の物だ、威力はバカに出来ない。


「魔法結界、ドレインシールド!」


ファイアボールは霧となって消える。


「その魔法はあの時の。……お前だったのか、許さん」


「あはは、判っちゃいます」


デンタクルの闘志が燃え上がった。鬱陶しいな、もう。


デンタクルは、俺の行動を制御し誘い込む様に細かい魔法を放ち、間合い詰めて来る、そしてドゴスソードが俺の目の前に、全ての補助魔法がかかっている俺は、苦もなく奴の剣をすり上げその力を利用して、デンタクルの肩ヘ斬り込むが、ミューズの盾に阻まれた。


う~ん、俺の剣も、この間ダンジョンで手に入れた剣で、そこいらの盾は真っ二つなのだがな。もっと良い剣にしないとダメかな。


余計な事を考えていると、奴の剣が首に来たのでバックステップでかわす。しかし、魔法で床は破壊され荒れていたので、つまずいてしまった。


デンタクルの剣が、俺の頭に一直線に振り下ろされた。


「リック!」


大丈夫だよ、サキ。

『物理結界、フィジカルシールド!』


[キン!]


「なにっ!」


デンタクルの剣は空中で止まる。


「くぬぅ、お前にそんなスキルが有ると思えんが」


「悪いね。ズルの塊なんだ、僕」


さて、どうするか?ここはバンタムさんの必殺技をパクって作った技を使うか。威力は本家に劣るが決まるだろう。


体勢を立て直して構える。


『陰陽の剣、一の太刀』 俺は剣先を地に付け、したから振り上げる。デンタクルは剣を受けるが、俺の剣は奴の剣はをすり抜け右腕を切り落とした。



「うぅ……」


気力を振り絞って、見に来ていた騎士や兵士達から、呻き声が漏れる。


「これまでか」


皇帝も覚悟を決めた様だ。


「リック、お見事ね。信じていたわ」

「さっき、心配で泣きそうな顔をしてたくせに」


「ミリカったら、何よ」


「うふふ、良かったです」



帝国の騎士や兵士達は、大国の武人として矜持が有るのか、俺達のする事に文句は言わなかった。


ダンジョンの入口は、舞踏会の為の大広間の下に有った。ここに入るのは、ドワーフの国でボルテックスキューブが出来てからになる。



「リック、帝国の騎士団長が、話が有るそうよ」

「そう、通して」



「リック殿、我々はどうすれば良いのです?リック殿にお使いすれば良いのでしょうか」



あ~、それね。


「王族でなく、一番偉くて人望のある人いないかな?」


「それならば、北の地を護るロンデ辺境伯がいます」


辺境伯か、良いね。


「では、ロンデ辺境伯をここに呼んで下さい」

「畏まりました」



ーー


ドワーフの国から、ボルッテックスキューブが届いたのと同時に、ロンデ辺境伯が到着した。



「リック皇帝陛下、御命令により急ぎ参上致しました」


「あ~、それ、ちょっと違うからね。丁度いいや、帝都に残っている貴族と各部門の責任者を、全員呼んで来て」


「はい、承知致しました」



ーーーー



「みんな集まったね。ダンジョンでの用が済んだら、僕達は自分の国に帰るから、後はロンデ辺境伯を皇帝に任命するから頼むよ」


「ヘっ?」

「だから、この国は君に委すよ」


「な、何を仰っているのですか?えっ」


「では、この決定に異議・意見の有る者は、僕の所へ話しに来るように。良い考え・意見で有ればとりあげるからね。もし、話しに来ないで反乱や謀叛を起こした者は、こいつを使って粛清するから気を付けてね」



巨大化したジャバネを広場に出す。


[ギギ、ギギィ]


経験を積んでレベルの上がったジャバネは、強者のオーラを放っている。大勢の前に出て、ジャバネは機嫌が良さそうだ。


「ひぃ」 「うう」


「解ったの?」

「お、仰せのままに」



OK、これで滅多な事は安易にしないだろう。しかし、ダンジョンの入口はキョウゴクさんの部下の人達に見てもらう事にした。





「このダンジョン地下何階まで有るのかしら?」


「この世界で最も深いと言われてますから、100階以上でしょう」


「チャチャっと終わらせるわよ」



冥王ハデスのダンジョンと言われるだけあって、出てくる魔物はアンデッドばかりだ。



「もうスケルトン連中は飽きたわね」

「でも楽で良いわね」


「骨だけだと私のスキルが使えないので、やりにくいです」


「その内、グールとか出てくるわよ」

「気持ち悪いのも嫌ね」


「フラグを立てたみたいだぞ」

「うぇ、グールの集団だ」


「仕方ないですね」



グールの集団を倒し地下へ降りること141階、二週間かかった。


「そろそろって気がするわね」


確かに、ネクロマンサー・ワイト・デュラハン・リッチと来れば、そんな感じだ。



地下142階でボス部屋を見つけた。今までボス部屋は無かったので間違いない。


「何が出て来るのでしょうか?」

「冥王ハデスだったりして」


「サキ、それは言っちゃいけ無いやつよ」

「あっ、そうか。だけど、神は出て来ないでしょ」


そう、フラグを立てると言うやつだ。嫌な予感がする。



「開けますよ」

「「OK」」



部屋の中には、杖を持って座っている人物がいた。座っている椅子は王座の如く立派な物だ。



「……ハデス様」

「まさか……」

「えっ、そうなの?嘘よね」


あいた、やっちまった。



「ほほう、ここに人の子が来るのは1000年ぶりだな。どれ、相手をしてやるぞ」


「冥王ハデス様、畏れながら申し上げます。我々は、このダンジョンの主がハデス様とは知らずに、この世界の大地が沈むのを止める為に来ました。人ごときの我々が神に敵う訳が有りません、戦わない方法は無いのでしょうか?」


「しかしな、これは創造神ゼノイオンが決めた、ダンジョンの約束事だからな。ん、待てよ。1000年前の勇者も同じ事を言っていたな。そうそう、それで戦いの方法は人の子に委せたのだ」


「それで勇者はどうしたのですか?」


「将棋とやらで勝負をしたな。お前も決めて良いぞ」


「将棋ですか」


俺は将棋は弱い、どうする。



「では、じゃんけんで」

「じゃんけんとな?」


「ちょっと、リック大丈夫なの?」

「悪い。みんな、負けたら許してくれ」


「仕方ない。戦っても神には勝てないものね」


"じゃんけん"にも確率が有り、相手は初めてだ。そこに賭けるしか無い。これで最期なら俺らしくギャンブルだ。



ルールをハデスに説明する。俺が出すのは、パーだ。


「「最初はグー、じゃんけんポン」」




        ☆☆☆☆☆



『冥王ハデス、ありがとう』


『リリアナか?ふっ、私は別に何もしていないぞ』


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