第31話 サキ VS キング

 ダンジョンに入って6日目になる。ジョウモ王国が気になるが、キースには何か有ったらマホロバ王国のキョウゴクさんに、連絡する様に言って有るので心配ないだろう。


今日でダンジョンの地下70階まで来た。


俺のアイテムBOXの中で、戦利品の確認をしているミリカはご満悦だ。


「ふふふ、冒険者だったら、これだけのお宝があれば御大尽様で暮らせるわね」


「封印されていたので、珍しいお宝が出ますね」


剣、盾、宝石と国宝級がゴロゴロ出てくる。付与されている魔法効果も上位魔法が多い。


地下55階を過ぎてからボス部屋が有るので、1日に進むのは、10階としている。今日のノルマは、後5階になる。






「最下階は何階かな?」


レッドドラゴンとのボス戦を終えたサキが宝箱を開けながら聞いてきた。


「そろそろだと思うがな」

「そうよね。あっ、剣だ」


真っ黒い鞘に入った剣が出てきた。サキが鞘から剣を抜いた。


「「「うわっ」」」


「綺麗だな」


その剣は細身で玉虫の羽の如く、光と見る角度によってキラキラと色が変化した。



金、紫、緑、本当に美しい。どれ鑑定して見るか。[鑑定!]


相殺の剣"オベリスクソード"持っているだけでヒーリング効果がある。状態異常の全てを回復。緋色がねとミスリルの合金で出来ているらしい。凄いね。


「これ、私が持ってて良い?」

「「OK」」



話がまとまった所で次の階ヘ進む。プラチナドラゴンやアースドラゴンがウヨウヨしていた。


素材が欲しいので、セフィーヌにスキルを使ってもらい血を沸騰させ、傷つけずに倒していく。


倒し過ぎてもういいよと思った頃、ミリカがボス部屋を見つけた。


「地下71階ね」

「では、開けます」



中は広く明るい、豪華で謁見の間の様だった。


中央には、大地に刺し立てた剣に両手を置いて、悠然と立っているこの部屋の主がいた。


ブレイドアンドソードキングこの部屋のボス。1000年前に勇者に倒され、ここのコアが再生してからずっと、次の挑戦者を待っていたのだろう。


こいつは強い。今までは、順番に3人に任せていたが俺が出た方が良さそうだ。


「ミリカ、僕と交代しよう」

「待ってリック、私にやらせて」


サキも奴が強い事は感じているはず、それでも言って来るのだから考えが有るのだろう。


「分かった、注意してね」

「うん、ありがとう」



サキとブレイドアンドソードキングの戦いが始まった。先手はサキだ、さっき手に入れたオベリスクソードが唸ってキングの首ヘ、地に刺さった剣を手首を返して円を描き軽々と受けたキングは、そのまま剣を地に這わせサキの両足を狙って来た。


サキはジャンプして避けるが、これは悪手だ。空中にいる時の防御は難しい。案の定、キングは突きを出してたたみ掛けて来る。



剣で突きを受け、反動を利用して空中で一回転し、着地した。上手く凌いだが、今度は、着地した所を狙われた。


「押されて来たにゃ」

「大丈夫でしょうか?」


「う~ん、何か考えが有ると思うが」


サキは大きく後ろに下がり間合いを取った。剣を逆手に持ち、低く構える。サキの決め技"ストラングル"を出す気だ。


そんな簡単に決まるかな?キングも気配を察知して身構える。このまま撃っても避けられそうだが。



キングが身構えたのを見て、剣の握りを戻し胴を斬るように剣を振り始めた。おい、そこで振っても届かないで空を斬るだけだぞ。振り切ったら隙が出来て不味いだろうに。


サキが剣を振りきる寸前、攻撃が飛んでこない事を読みきったキングは止めを刺すべく動き出した。


「不味い!」


俺が奴の動きを止め様とした時、ブレイドアンドソードキングの首が大地に転がった。



ん、何でだ?


「へへ、1度やって見たかったんだ。これを使う程、強い相手がいなくってさ」


「凄いわ」

「やりましたね、サキ」


「リックの言った通り、このユニークスキルが有れば喧嘩は負けないわね」


あ、忘れてた。対象物転移か。振り切る前に、剣の軌道上に相手を転移させて首に合わせたんだ。


「なっ、言った通りだろ」



後ろの扉が開き、宝の山が顔を出す。それをかき分け奥へ行くと、ダンジョンコアが壁にハマっていた。


「これねダンジョンコアって」


「そうだね、お宝もアイテムBOXに全部入れたし、コアも入れて早く帰ろう」


「そうするわ」


コアをアイテムBOXに入れた途端、魔物の気配が消え真っ暗になった。


「な、何だ」

「怖いです」


「あ~、コアを取ったからダンジョン機能が停止したんだ」


「ライト!」


「では、攻略後の、入口に戻る魔方陣も使え無いのですね」


「そう。だから魔道書で入口に魔方陣を作ったでしょ」


「あっ、そうか」

「じゃ、帰ろう」


コアの有った場所にブレイドアンドソードキングの魔石をはめて置く。こうすれば、いつの日かダンジョンも再生するだろう。


転移の巻物を使った。



「やっぱり、外の空気は美味いな」


「リ、リック様、もう出て来られたのですか?」

「ああ、終わったよ」


「大変だ」


走って行っちゃたよ。





「一週間で、ダンジョン攻略ですか?地下71階も有るのに」


「いやはや、何とも」

「リック殿、前日の無礼は御許し下され」


「気にしてませんよ」

「かたじけない」



「それで、これからどうするのです?」


「コアをドワーフの国ヘ持っていって、次は帝国です」


「帝国ですか」


「私も信じられ無かったのですが、帝国はもっと信じ無いでしょうな」


「私も協力致します。何か有ったらお話下さい」


「ありがとう御座います、クリスティン様。そうだ、迷惑をかけたお詫びにこれを」


ダンジョンのお宝、淑女のティアラを渡した。


「まあ!素敵なティアラですね。よいのですか?」


「ここのダンジョンで出た物ですから。あっ、でも、お宝目当てで入らない方がいいですよ」


「そんな事は致しません。このダンジョンは守って参ります」




次は帝国だ。関わりたくは無いが仕方ない。俺の顔が知られている訳では無いので、気楽に行くとしよう。


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