第30話 クエストは順調にこなし中

 オレンジ色の門が出来て、見張りのリザードマンが出て来た。


「やあ!」

「こ、これはリック様」


「フリーズは居るかい?」

「はっ、どうぞこちらに」



「リック様、良く来て下さいました。何か有りましたか?」


「うん、ちょっと問題がね」


ーー


「なるほど。厄介ですな」

「ホントにね。それで、神龍の居場所がわかる?」


「神龍様は、ここから遥か南の島におります」

「ありがとう、居場所が判って良かった」


「リック様、神龍様は、大の酒好きです。お酒を持って行かれると良いでしょう」


「分かった、そうするよ」

「今宵は、ゆっくりして行って下さい」



今回は俺1人で行動しているが、遊ぶ所が無いので残念だ。神龍が居る南の島は、かなり遠いので途中の街で羽を伸ばそう。



3つの街に寄って、程よく悪さをして4日目の昼に島の付近に着いた。


フリーズの話しだと、この辺だが。あれか?結界が張ってある。



島に降りて、結界に触れる。フリーズに教わった通り、その状態で話しかけると結界が、俺の大きさだけ空いた。中に入ると尋常ではないプレッシャーが俺にかかる。


『人の子が何の用だ。入り方を誰に教わった?』



「はい。フリーズ……いえ、邪龍に教わりました」


『邪龍にか。あやつは元気にしておるか?アホな奴だが気のいい奴だ、友なら宜しく頼むぞ』


「はい」


邪龍を殺さなくて良かった。そうしていたら、どうなっていたか判らない。


「実は、お願いが有って参りました」

『願いだと、ではこちらに来るが良い』


光の道が出来たので、それに従い進んで行く。暫くすると立派な宮殿が見えてきた。


入口には綺麗な女性が立っている。


「どうぞこちらへ」


大きな広間ヘ案内された。謁見の間らしい。立派な椅子に、凛々しい若者が座っている。


「ほう、人の子で、加護を授かっているのか。願いとは何だ?」


「先ずは、これをお納め下さい」


オーガ殺しを蒸留して更に度数を上げ、オルクと言う香木で樽を作り、今まで寝かせた酒だ。


「酒ではないか、気が利くな。どれ」


酒好きな俺の、渾身の作だ。いかが?


「ぷふぅ、美味いな。何とも言えんコクだ、気に入った。何なりと申して見よ」


「はい、ありがとう御座います」


俺は、事情を話した。


「そうか、また起こったか。良かろう、明日の朝迄に用意しておく。今宵はゆっくり休んで行くがよい」



案内された部屋でくつろいでいると、ノックの音がする。


「どうぞ」

「失礼致します」


美女が2人も入って来た。


「何か有りましたか?」

「今宵の夜伽に参りました」


ヘっ?何だって……夜伽とは、もしかして。


「神龍様はご存じですよね?」

「もちろんで御座います」


据え膳食わぬは男の恥、厄介なクエストのボーナスだ。それに、神龍様に逆らってはいけない。




今日は特に太陽が黄色く見える。


「お主は元気だな。流石は、リリアナの加護を持っているだけの事はある。2人は腰が抜けて起きて来れんぞ、羨ましい」


「神龍様、ご勘弁を」


「ふふ、例の物を」

「はい、ここに」


「持って行くがよい」


ミスリルの器には、金色に輝くウロコが3枚入っていた。


「有りがたく、頂戴致します」



クエストは、早く終わらせてゆっくりしたい。直ぐにドワーフの国ヘ飛ぶ。


ドワーフ国の王都を楽しむ事無く、恐縮する国王からダンジョンの封印・解除の魔道具をもらい、ジョウモ王国に戻る。


クリスティンの所では、ダンジョンに入るのでみんなも連れて行く。


「ねぇ、神龍ってどんなだった?」

「神とつくだけあって、半端なかったよ」


「リックでも敵わないのかしら?」


「う~ん、僕のスキルは無効になる可能性が高いな」


「あら、リック様、首に虫に刺された痕が」

「リックが虫に刺される何て変ね?」


「この痕はどこかで見たことが?娼館から出て来る男がよくつけてるやつだわ。確か、キスマークとか言うやつよ」


「キスマーク?」

「リック様」


「ち、違う。神龍様の好意を無には出来なかったんだ」


「……そうですね、夜伽に来た女性に、恥をかかす訳にもいきませんね」


「むう、セフィーヌがそう言うなら仕方ない」


ふぅ~、セフィーヌのお陰で助かった。


それからは、他で遊んだ事はバレること無く、ラダステリィ王国に着いた。



どこかのテレビドラマの印籠を出す様に、王家の紋章が入った短刀をかざす。


「クリスティン様にお会いしたい」

「ここは子供の……しばしお待ち下さい」



大きな会議室に通され待っていると、10名の騎士、4名の貴族が入って来た。その後、直ぐに女王クリスティンのお出ましだ。



「久しぶりですねリック」


「はい、お言葉に甘えて、お願い事が有り参りました」


「話して見なさい」





「ふん、その様な話し信じられませんな。一部とは言え、この城を壊すなどと。だいたいエルフとドワーフの常識を疑いますな、こんなどこの馬の骨かも判らぬ者をよこすなど」


居るんだよ、こう言う権威主義の爺さん。


「私が断ったら、どうするつもりです?」

「力ずくって事になりますね」


「何だと!貴様、無礼であろう。皆の者、摘まみ出せ」


「はっ!」


やれやれ。


「みんな動くなバインド!」


「くっ」 「なにっ」

「あまり、リックを見くびらない方が良いわよ」


「そうよ。こんな城、一瞬で無くなると思いなさい」


「ぐぬう」


「どうやらこの前は、アメ玉を貰った様ですね。解りました、協力致しましょう」


「しかし女王様」

「お前に、この状況を打破出来るのですか?」


「それは……」


「リック、全てお任せ致します」


賢明な判断だ、クリスティン。



俺達は裏庭に来ている。ダンジョンの入口はかろうじて城の外だった様だ。


バーバリアン蟻に掘ってもらう。5m程で、封印されたダンジョンが出て来た。


「信じられん」

「こんな所にダンジョンなんて」


ドワーフから貰った魔道具で、封印を解いて中に入る。


「僕達が中に入ったら封印しますので、魔物の心配は有りません」


「わ、解りました」



「じゃ、みんな行くぞ」

「「「OK!」」」


さて、何日でダンジョンコアの有る最下層に行ける事か。


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