第29話 厄介なクエスト
ードワーフの国、カジマハル王国ー
「どうじゃ、勇者様に代わる人物は見つかったか?」
「腕が立つ者は、そこそこいるのですが、ただ強いだけで魅力が有る者には出会えません」
「困ったのう。1000年前とは違い、今回は特に厄介な国を相手にせねばならんしな」
「陛下、宜しいですか」
「何だ、デンヒル公爵?」
「実は、気になる話が有りまして」
「話してみよ」
「城に出入りしている商人から、話しを聞いたのですが、エルフの国で起こった魔物の大暴走を防いだのが勇者様らしいと、噂が流れているそうです」
「なんじゃと!馬鹿者、そう言う話は早くせんか。それが本当なら、逃す手は無い。私が書状を書く故、一刻も早くエルフの国ヘ行き、国王に確かめるのだ」
「ははっ!」
☆☆☆☆☆
「陛下、ドワーフの国より使者が参っております」
「ドワーフの国から使者?何事だ。うむ、迎賓の間ヘお通しせよ」
「はっ」
「ん~、話しの内容は解ったが……」
勇者様に、くれぐれも内密にと言われておるからな。
「使者どの、確認したい故、一週間ほど時間が欲しい。この城に滞在し、待って貰えぬか?」
「返事が頂けるなら、幾らでも待ちます」
「そうか、頼む」
ーー
「ミリーフ、水龍と急ぎ連絡を取ってくれぬか」
「如何なされました陛下?」
「実はな……」
「解りました、今日で良かったです。もうすぐ来ると思います」
「なんと、好都合な」
ーー
「そうですか、1000年前と同じ事が……あの時も勇者様が助けてくれたのです。リック様なら、この世界の大地が全て海に沈んでしまうと聞かれたら、きっと助けてくれます」
「それでは、連絡してくれるか?」
「はい、直ぐに話して見ます」
☆☆☆☆☆
エルフの国の一件が終わってからは、穏やかな日が続く。今日はエルフの国でもらった魔道具の1つ、大地の杖を試している所だ。
「この魔道具は良いね」
「ええ、土が生き返ります」
「リック様、水龍様から通信が入っています」
「水龍さん、化粧品が切れたのかな?分かった、もしもし…………」
「水龍さん何ですって?やっぱり化粧品が切れたって」
「少し使い過ぎよ。水龍さん、何歳になるのかしら」
「それが、この世界の大地が海に全て沈むらしい」
「穏やかな話しでは有りませんね」
「どう言う事なの?」
「詳しい話は、水龍さんがドワーフを連れてここに来るって」
「ドワーフ?」
「ドワーフは昔、地下に住んでいたらしいのです。それで、大地や地質の研究が盛んで詳しいのです」
「なるほど」
ーーーー
「水龍殿、本当に、この草原の先に国が在るのですか?」
「ジョウモ王国など、聞いた事が有りません」
「そんな事を言っていると、勇者様に怒られますよ」
「「うっ」」
「ほら、城塞が見えて来ました」
「こ、これは凄い」
「メイリンと申します。リック様にお取り次ぎを」
「これは水龍様、直ちに連絡致します」
「水龍さん達が来たようだ。プリメイラ先生にも聞いて貰おう、呼んできて」
「分かりました」
ーー
「リック様、話しを聞いて下さり、ありがとう御座います」
「水龍さん、そんなに畏まらなくても」
「そうは行きません、事は重大です。こちらはドワーフの国の地質研究員で、スケサットとカクラスです」
「リックです、宜しく」
「ゆ、勇者様、よ、宜しくお願いします」
ガチガチだね、ノッポと太っちょの凸凹コンビは。
「じゃぁ、詳しい話しを聞かせて下さい」
「で、では御説明致します」
「つまり、簡単に言うと、地の底に魔素になる元が流れていて、その量が急激に増えた。放って置くと、地を割って溢れだして全ての大地がバラバラになって海に沈む。と言う事かな」
「その通りで御座います」
ふ~む、地球で言う所の、マントル対流見たいな物かな。地震で、日本が無くなる映画が有ったっけ。
「で、どうすればいいの?」
「そ、それが、1000年前と状況が大きく変わってまして、面倒な事が多いのです」
「どんな?」
「まずは、緋色がねに神龍のウロコを混ぜて作ったボルテックスキューブが必要です」
「神龍からウロコを貰って来るのね?」
「はい。次からが厄介なのです」
「どんな?」
「プローミのダンジョンから、ダンジョンコアを取って来なくてはなりませんが、今の場所が問題でして」
「何処なの?」
「ラダステリィ王国の城の下でして」
「クリスティンの所か。それで次は?」
「ボルテックスキューブにダンジョンコアを入れた物を、一番深い冥王ハデスのダンジョンの最下部に埋めて来なくてはなりませんが、これもダンジョンの場所が問題で……」
「また城の下?」
「御察しの通りで御座います」
「今度はどこ?」
「ヴァナ帝国で御座いまして」
「また、厄介な」
「はい、真にその通りで御座います」
面倒な事になった。しかし、海に沈む訳には行かないか。
「埋めたコアに、魔素の元を吸収させるしか、防ぐ手立てが有りません」
「……やるしかないんだね、解りました」
「おお、ありがとう御座います」
ドワーフの使者達は、1日ゆっくり休んで帰って行った。
「作るのはドワーフがやるとして、神龍ってどこに居るの?」
「今は何処に居るのか、私にも判らない無いのです。……邪龍なら知っているかもしれません。女性には嫌われていましたが、神龍様には可愛がって貰っていました」
「そうなんだ。まずは、そこからだね」
月と大地のはざまとは、通信は出来なかった。次の満月の夜に行くしか無い。
面倒なクエストの始まりだ。
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