第27話 魔物の暴走

 まずは、見えて来たゴブリンの大群に宮廷魔道士が、ダークヌークレアを撃つ。


数は5000程度だろう、雑魚であるゴブリンは、この一撃で吹っ飛んだ。


後ろを走っていたオークの集団は、ゴブリンが吹っ飛んだ後に出来た大穴に落ちて行く。今度はミリカが"ダークヌークレア"を放つ。


この一撃で、オークの大部分が消えた。生き残った連中はサキ、セフィーヌと冒険者達が葬って行く。


魔物のレベルも徐々に上り、出て来る間隔も短くなってきた。そろそろ虫達の出番だ。オーガ、ハイオーク、クレイジーブルの大群が一度にやって来た。


このまま進んで来られる訳にはいかない。ヤクトビートル達を突っ込ませる。硬い甲冑を着た様な大きな塊に当たられた魔物の達は、バラけて行く。


更に、メイドウジュとザージムによって間引きされる。残った魔物は例の如く、サキ達冒険者とジャバネの餌食だ。


上位の魔物であるオークキング、マンティコア、キマイラ、など続くが、暫くはこのパターンでこなし、順調だった。


しかし、左側から崩れて来た。理由はクレイジーブルを二回り大きくした魔物のせいだ。


「あれは?」

「あれは、タマスです」


タマス、あれがタマスか。見た目はカバだ。個人的な意見で申し訳ないが、1対1として最強の動物と言えば、ライオン、トラ、ゾウ、ゴリラ、クマが上がって来ると思うが、俺が思うのはカバだ。


噛む力はワニには劣るが強く、足も早いし機敏だ。動画ではライオンを追いかけて、フライングボディアタックを決め押し潰していた。突進する姿にサイも逃げ出す。しかも皮は厚く、爪も牙も利かない、気も荒く雑食で何でも喰う。


カバに似たタマスは、体も大きくやはり機敏だった。分厚い皮のせいで、雷も毒もたいして効いていない。タマスの大群は500頭のヤクトビートルの突進も弾き跳ばしていた。


威力のある魔法で倒せるが、数が多くラチがあかない、不味いな、どうやって倒す?虫達をもっと大きくするか?イヤ、それは最後にしよう。他に方法はないか?…………。




「ペレスさん、宜しいですか?」

「何でしょう?」


「ダークヌークレアは魔物に直接当てるのでは無く、一旦、空中に留め置きする事が出来ますか?」


「短時間、2、3分程度なら」

「それで十分です。ミリカも頼む」


「分かりました」「OKよ」


2人が頭上に"ダークヌークレア"の魔法を展開して行くと、黒紫の球体が2つ出来上がった。


俺は球体を4倍の大きさにすると、複製で64個まで増やし、虫達に退避命令を出す。


「リック様、こ、これは」


「お願いします」

「「はい」」



64個の巨大な球体は、タマスの大群へ唸りを上げて向かって行き、大爆発した。スーパーノヴァの様な色と形が出来上がる。


大爆音が聞こえた後、地響きと空気による振動と強風に襲われた。それが修まった時、大地は大隕石が落ちた後の様な大穴が空いていた。


大爆発を見ていた冒険者達は、唖然として動かない為、前方にいた、わずかな生き残りの魔物達はジャバネ達が捕食して行った。



そして10分後、草原に静けさが戻った。



冒険者の1人が、ボソッと言った。

「終わったのか?」




「さあ、戻ろうか。サキ、セフィーヌお疲れ」

(お疲れ様です)


俺達が、土魔法で造った防壁に着いた時、ようやく冒険者達が現状が把握出来た様だ。



「すいません。あの穴は皆さんで、埋めて頂けますか?」


「ええ、勿論、私どもでやります。ありがとう御座いました」


責任者であるエルフの冒険者が、気持ち良く答えてくれた。


「リック」「リック様」

「後は、聖なる羽衣を取り戻せば終わりだね」


「水龍さんに話しを聞きに行きましょう」




城に戻ると、伝令によりスタンピードが終息した事を聞いた、ヴェナール国王と水龍さんが出迎えてくれた。


「リック様、真にありがとう御座います。この国は貴方のお陰で救くわれました」


「とんでもない、邪龍を倒さなくては」


「それが、邪龍ドゥドッデッケンの所へ行くには、満月の夜じゃ無いと行けないの。4日後になるわ、それまでゆっくりお休み下さい、勇者様」


「そうなんですね、判りました」



用意して貰った豪華な部屋で、みんなでくつろぐ。


「あ~、さっぱりした。広くて素敵なお風呂ね」

「ホント、素敵でした」


「そんなに良かったなら、帰ったら真似して造るか」


「リックも入ってくると良いわよ」

「楽しみだな」



なるほど、広くて良いね。元の世界でよく有る、ホテルの大浴場って感じだ。


造るなら、ジャングル風呂にするか。しかし、魔法自体を大きくして、複製する事を思い付けて良かったな。


これなら、俺も魔法攻撃が出来そうだ。国の防衛も楽になるしね。


風呂から上がって、部屋に戻ると大きなベッドに3人が横になっていた。ミリカとセフィーヌの間が1人分空いている。


"ここに寝ろ"と言う事らしい。まさか、みんなでって事は無いよね。グフフ。




翌日、窓の外の太陽は黄色く見える。遅めの朝食を摂った後、水龍さんとお話しをした。


「邪龍の所へは、どうやって行くのです?」


「満月の夜に、ドゥドッデッケンの持っている月の欠片によって出来た、月と大地のはざまの入口が、デロスト山の頂上で開くのです」


「月と大地の、はざまの入口ですか」


「そうです。ドゥドッデッケンは、そこに僕であるリザードマンを住まわせて、王を気どっているのです」


「その山は何処に?」


「ここから東に行った所に在る、山脈の中で一番高い山がそうです」


「解りました。明日、出発して現地で待つ事にします」


「お願いします。私も行きたいのですが、邪龍とは相性が悪くて、ドゥドッデッケンは毒や麻痺、氷の魔法が得意です」


「大丈夫です、任せて下さい」



さっさと終わらせて、自分の国に帰ってお風呂を造ろう。


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