第26話 水龍さんのお願い
「陛下、メイリンと言う女性の方が、面会を求められております」
「メイリン?知らないな」
「この間、1人で出かけた時に、お酒飲ん出で悪さしたの?」
「し、してないよ」
キョウゴクさん達の事で、頭が一杯だったから、遊ぶのすっかり忘れていた、失敗した。
「じゃ、話しを聞いて見ましょう。ねぇ、みんな」
「そうですね」
「ここに通して」
「はっ」
入って来たのは、ナイスなバディの美しい女性だった。
「リック、久しぶり」
(やっぱり)、と言う顔でみんなが、俺を見る。
こんな、いい女なら忘れるはず無いんだがな。
「どこでお会いしましたっけ?」
「私よ、ワタシ。イスリアガラのダンジョン」
「リック、私達の目を盗んで、ダンジョンでしたの?」
「そう言うプレイが、好きなのかな」
「違うったら」
「私よ、水龍だってば」
「えっ、水龍さん?」
「そうよ」
「何でまた、こんな所に?」
「勇者のリックに、お願いが有って来たの」
「リックが勇者?」
「そ、それは水龍さんの勘違いだよ」
「変ね、でも同じ様な者でしょ?」
「お、お願いって何です?」
「私には、神官のエルフの友達がいるのだけど、その娘が浄めの泉に入って居る時に、聖なる羽衣を盗まれたの」
「犯人を捜せと?」
「違うの、犯人は判ってるの。邪龍のドゥドッデッケンっていう奴。返して欲しくば、俺と結婚しろって言って来たの」
「何て卑劣な奴、許せ無いわね」
「女の敵ね」
「酷い話しです」
「聖なる羽衣を、取り戻して欲しい?」
「最後は、そうなるんだけど、その前に大変な事が有るの」
「どんな?」
「エルフの国には、ダンジョンが有るんだけど、とても危険なダンジョンで、聖なる羽衣の力で魔物の力や発生を抑えていたの。だけど盗まれてしまってから、抑え込む儀式が出来ずに時間がかなり経つので、暴走しそうなの」
「スタンピードですね」
「エルフの国の冒険者だけでは無理なので、他の国にも応援を頼んだけど、もともと人族とは交流が少ない上に、ダンジョンを開放して無かったので、冒険者が集まらない。だから勇者のリックに助けて欲しいの」
「リック、助けてあげよう」
「そうよ」
「リック様」
「そうだね、魔物の像のダンジョンの事、教えてもらったしな。で、どうすればいい?」
「私と一緒に、フロイネラに行って欲しい」
「分かった。キース、僕が居ない間よろしくね」
「お任せ下さい、リック様」
「エルフの国に行って来ます。アレツさんは内政、ダンテスさん、セキバ将軍、守備を宜しくお願いします」
「はっ、畏まりました」
この国を攻めるには、サキが考えた底意地の悪い、罠だらけの迷路型要塞を通るほか無く、何か有っても余裕で戻って来れる。
「直ぐに出発だ」
エルフの国はワラヴォルト王国の北に位置する。今回は4人での出発だ、水龍さんを入れてヤクトビートルで向かう。
「凄いのね、前の勇者でもこんな事は出来なかったわ。そう言えば、サキさんも勇者なのね」
「え、ええ、まぁ、そうなるかな」
「サキは勇者だったの?」
「実はそうなんだ。黙っててゴメン」
「いいわ、理由が有るんでしょ」
「うん、ありがとう」
「リック様も、話せる様になったら、お話ししてくださいね」
「うん、いい機会だ、話しておこうか」
ーー
「え~、テレストラ王国の王子様だったの」
「道理で、高貴な感じがすると思いました」
「ごめんなさい。私、余計な事を言ったのね」
「いいよ水龍さん、僕も気が楽になった」
エルフの国は森が多いので、今回は直接、王都の傍に在る森に降りる。先に水龍さんが、城に行って俺達の事を説明して戻って来た。
「皆様、ありがとう御座います」
一緒に来たこの綺麗なエルフが、水龍さんの友達の神官らしい。城に案内され、エルフの国王ヴェナールと挨拶をする。
「勇者様、お越し下さり、ありがとうございます」
「いいえ、大変な事になりました。早速、どのような状況かお聞きしたいのですが?」
勇者って事は、後で内密にしてもらわなくては駄目だな。
別の広間に入ると、300人程度の冒険者と上位の魔法師が40名いた。
「恐らく、3日の内に魔物達が、ダンジョンより出て来るでしょう」
神官のミリーフさんの説明が始まった。
「どのような魔物達で、数は?」
「200年前の暴走の時は、ゴブリンから始まりタマスまで出て来ました。数は10万と言われています」
タマス?聞いた事の無い魔物だ。この国の特有な魔物か。10万頭もいるのでは、威力の有る広域魔法で減らして行かないと大変だ。
時間はあまり無い、ダンジョンに一番近いダリブデンの街の前に、土魔法で壁を作っていく。
魔法士の中には、宮廷魔道士が居たのでどんな魔法が使えるのか聞いて見た。
「広域魔法でしたら、威力の高い物ですとダークヌークレアが使えます」
闇魔法の上位魔法の1つだ、かなり凄い。ミリカにはこの人の傍にいてもらって、この魔法を使わせてもらおう。
サキとセフィーヌには、ジャバネ達と広域魔法から逃れた魔物の殲滅を担当してもらう。
足止め役に、防波堤としてヤクトビートル、雷虫のメイドウジュと毒虫のザージム、遊撃隊で火虫ボルケノンで良いだろう。
3日目の朝、各500頭の虫達をそれぞれの位置に着かせると、エルフの冒険者達から驚きと感嘆の声が上がった。
俺は、ミリカと宮廷魔道士のペレスさんをヤクトビートルに乗せ空中で待機し、ダンジョンの方を見つめる。
暫くすると、草原の遠くの方に砂煙が上がった。どうやら、やって来た様だ。
サッサっとやっつけたいが、上手く行くか?長い1日に成らなければいい。
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