第24話 昔の勇者に会いに行こう

 俺達は、諜報虫のテレブスの映像により、お馬鹿なトロイデン王国の将軍より先に、ヤクトビートルで森の上空にいる。


「来たわよ、リック」

「その様だね。まずは挨拶代わりに例のヤツ」


この世界のトイレは、まだ水洗式では無い。いずれこの国は、そうするつもりだけどね。


したがって、くみ取り式なのでオークの膀胱に糞尿を入れた、風船をたくさん用意した。


誰が作ったかって。申し訳ないが、くみ取り屋さんとゴーレムにやってもらった。


雷虫のメイドウジュに、糞尿爆弾を持たせて奴らをしびれさせた後に、落としてもらう。


バリバリと言う音の後に、兵士達の悲鳴が上がる。


「うぎゃ~、し、将軍、身体が」

「な、何だこれは。うぷっ、く、臭い。たまらん」


「ウジではないか。うわ、口の中に、おぇ」


「馬鹿者、隊列を崩すな」

「ぢかし、これでば、どうぢようもありまでん」


「くぅ、仕方ない。一旦、引くぞ」



兵士達が退いた途端、地面が陥没し始め、ほとんどの者は2mほど下に落ちてしまった。


バーバリアン蟻によって、地中が掘られ陥没したのだ。まるで地獄の蓋が開いて、亡者達が落ちたみたいにもがいている。


「いい座まね」

「ホントです」


「リック。ここで全部、殺った方がいいんじゃないの?」


「いいんだよ。トロイデンの戦力が減って、仲の悪いマッサ王国に侵略されて、マッサ王国に大きくなられても困るんだ。生かさず殺さずが、良いのさ」


「でも、奴らバカだから、リックの気遣いが解らずに今度は、大軍で攻めて来るかもよ」


「その時は仕方ないさ」


「それなら、こっちから攻めて、トロイデンを征服しちゃえば」


「征服した後、誰が統治するのさ。サキが女王様に成るかい?」


「それは……」


「あ、でも良い機会だ。みんなに帝王学を、勉強してもらおう」


「ええ~、勘弁して」

「サキったら、墓穴を掘ったわね」


「うう、御免、みんな」


話している間に、糞尿まみれになった将軍と兵士達は、陥没した穴からやっとの思いで這い上がり、ヨロヨロと引き上げて行った。



「これで、暫くは来ないわね」


「悪いけど、サキとキースの土魔法で穴を埋めてくれないか」


「お安い御用よ」

「はい、リック様」


しかし、サキの言う事にも一理ある。こっちから攻める必要が有る時だって、出て来るだろう。ジョウモ王国は、人材が不足している。


何か良い方法はないか?帰ってからゆっくり考えて見るか。




「聞きましたぞ、婿殿。トロイデンの兵士達を、森にすら入れなかったそうですな」


「たまたまです。義父おとう様」


「陛下、ご謙遜を。私どもは感動しております」


ダンテス騎士団長とセキバ将軍は、感動して目を潤ませている。大袈裟なんだから。


「いつもこうとは、限りません。2人とも、宜しくお願いしますね」


「「はっ!」」



ーー


今日はミリカを例の如く、45才のテクニックとリリアナ様の加護の力でダウンさせた後、考える。


どうやって人材を集める。う~ん、……。


そう言えば。よし、これで行こう。そうと決まれば、ミリカをもう一度、後ろから攻略だ、そりゃ。


「ふにゃ~ん」




「みんな聞いてくれ。あれから考えたんだが、サキの言う事も一理あるので、人を捜しに行ってくる」


「誰なの?」


「昔の知り合い。今回は、僕1人で行ってくるからね。キースは虫を頼む。ゴーレムは、簡単な命令を出せる、魔道具を作ったからみんなで使って」


「いいけど、私達がいないからって、悪さしたら駄目よ」


「判ってるさ」


「じゃ、行ってらっしゃい」

「リック様、お気をつけて」





久しぶりの1人旅。悪さはしないと言ったが、少しは遊びたいな。まあ、それは目的を果たした後だね。


目的地は、テレストラ王国のとある領地だ。まだ、そこに居ると良いが。


確か、この辺りのはず。有った、建物は発見、後は居るかどうか。近くの森で降りて、歩く。



「貴様、何者だ!」


「僕はリックと言います。キョウゴクさんにお会いしたい」


「む、キョウゴク様の知り合いか、しばし待たれよ。おい!」


「はっ」


1人が屋敷の中に入って行った。


「お会いになるそうです。こちらへどうぞ」


ーー



「お連れしました」

「入れ」


「ほう、やはり、あの時の坊主か。ダンジョンで死んだと聞いたが、まぁ、色いろ事情が有るのだろうな、ふむ、少しは大人に成った様だ」


「あの時は帰して頂き、ありがとう御座います」


「ふん、よく言う。冷静に考えれば、ゾッとするわ」


「まだ、恨みを晴らすつもりですか?」


「当たり前だ。同士も1000人と増えた、後は厄介な親衛隊長だけだ」


「どうです、テレストラ王国にこだわらず、一国一城の主になって見ませんか?」


「何だと!どう言う事だ」


「僕は今、ある国の国王をやっています。近い将来、隣国と戦争するかもしれません」


「はぁ、ダンジョンで死んだ奴が、どうやったら国王に成るのだ?」


「話せば長くなるので、そこは省きます。隣国を倒す事になったら、キョウゴクさんに、国王をやって欲しいのです」


「うむむ。また、厄介な話しを持って来たな。坊主が嘘を言っているとは、思えんしな」


「その国を足掛かりにして、テレストラ王国を滅ぼしても良いのでは?難しいとは思いますが」


「くぬぅ。して、どこの国だ戦争の相手は?」

「トロイデン王国」


「なんと、西の端ではないか」


「そうです。途中に帝国も在りますし、楽な位置ではありません。いかがです」


「皆と相談する、時間をもらおう」

「分かりました、いつご返事を?」


「2日は欲しいな」

「では、明後日の今頃に、また来ます」



ーー


「来たか、坊主」

「どうします?」


「坊主。いや、お主の話しに乗る事にする」

「そうですか。良かった」


「しかしな、我らは千人以上居る。移動すれば目立つが、どうする?」


「それは、大丈夫です。出発はいつ出来ます?」

「1日あればいい」


「では準備して下さい。明日、迎えに来ます」

「分かった」


ーー


「迎えに来ましたよ。皆さん、外へ出て下さい」


「どうするつもりだ?うっ、……まさか、これに乗るのか?」


「そうですよ。1頭につき、50~60は乗れますから、順番に乗って行って下さい」


「キ、キョウゴク様」

「臆するな、言われた通りに乗らんか」


「は、はい」



20頭のヤクトビートルで出発する。渡り鳥の様に、V字隊列を組んで飛んで行く。


途中、ワイバーンに遭遇したが、恐れをなして逃げて行った。



「お主には、参ったな。インセクトとは、こう言う事か」


「キョウゴクさんも、スキル鑑定が出来るのでしたね」


「まあな。しかし、それ以外は見えん。秘密が有りそうだな」


「ええ、でなければ、ダンジョンで死んでます」

「違いない」


マーカス王国の上空に入った時、サキから連絡が入った。


(リック、聞こえる。トロイデンの奴ら、懲りずに大軍で攻めて来る気よ。3日後に草原に着く感じね)


「分かった。今、マーカス王国だから、十分に間に合うよ」


(良かった、心配しちゃった。じゃあね)



「キョウゴクさん。トロイデンが、攻めて来るそうです」


「バカな奴らだ。もう少し相手を調べれば良い物を。まぁ、俺も人の事は、あまり言えんがな」


準備は整った、これでトロイデンは潰しても良い。マッサ王国が攻めて来たら、俺が、キョウゴクさんに協力すれば良いのだ。


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