第23話 とうとうバレた

 最初は、小さな魔法学校を造る事にした。教師はプリメイラ1人なので、生徒を多くする事は出来ないからだ。


教師を増やして、徐々に大きくしていけば良い。俺の出た大学の校舎を真似てみたが、なかなかの出来だ。


騎士と兵士の中から、面白そうなスキルを持っている者を選んで、生徒22人でスタートする。



有事の時の脱出経路は、ゴーレムの頑張りで完成した。


これで、大きな心配事は、食糧になる。俺が目を付けたのは山側の荒れ地だ。


ゴーレムに整地させ、栄養のあるフンを出す種類のミミズを、増殖して放つ。これで時が経てば、ふかふかの土壌になるだろう。



取り合えず、国として必要な準備は整ったので、久しぶりにダンジョンに行く事にした。





         ☆☆☆☆☆




「ダレイラ将軍、奴らと一気に決着をつけたいが、良い方法は無いか?」


「マッサ王国と比べますと、魔法部隊は我が国が上回っているのですが、兵士の数がやや少なく、いつも押し戻されしまうのです」


「では、武器を強化しては?」


「ロッジ公爵、材料をどうするのだ。今、そんな余裕は無いぞ」


「さすれば、南西に有る岩山を今一度、調べて見ては如何でしょう?」


「何、あそこは、プロスベラス王国の領地ではないのか?」


「昔、あの辺りの岩山に隣接する我が国とプロスベラス王国は、開発を試みたそうですが、硬い岩山に阻まれ断念したそうで御座います」


「それは知らなかった。駄目もとでやって見るか」


「その時は、狩猟民族など、多数の民族が居たそうで御座います」


「フン、そんな奴らなど、我らが行って脅せば、直ぐにひれ伏すだろう。逆らえば奴隷にして、こき使えばいい」


「よし、直ぐに手配せよ」


「「ははっ!」」




ーーーーーーーーーーーー      



ダンジョンの攻略はセフィーヌとミリカのユニークスキルの練習を兼ねて進めて行く。


セフィーヌは、魔物の血に含まれる水分を、凍らせたり沸騰させたりして、倒している。


ミリカの方は、相手のスキルを使えなくする事と、一時的に同じスキルが使える物だ。


俺の側にいれば、同じスキルが使えるのは凄い、と思ったが、インセクト以外は、俺のスキルが判らないので無理だった。まあ、虫が使えれば十分だが。


しかし、セフィーヌとサキのは使えるので、やはり凄いのだ。



ダンジョン攻略を始めて3日目の朝に、国中に配置して置いた、諜報虫のテレブスから映像が送られて来た。


俺の作った魔道具で、映像はみんなが見る事が出来る。


「この紋章は、トロイデン王国の物です」

「何しに来たのかしら?」


「嫌な感じだわね」



ーー


「だいぶ整備されてる感じがしますね」


「うむ、確かに。ヨウロウ公爵の話は、だいぶ昔の話しだからな」


「防壁の様な物が見えて来ました」


「石か、かなり強固な物だな。これに沿って進めば入口が有るだろう」




「あそこに何か有りそうです」


「やっとか、どんな山猿が住んで居るのか、見物だ」


「何者だ!」


「我々は、トロイデン王国の者だ。お前達の長に会わせよ」


「何だと!」

「エラン!……しっ!」


「へ、陛……」



「私がご案内致します。どうぞこちらへ」

「うむ、よかろう」




「なんと、まるで国の様ではないか」

「バカを申せ、我が国の街にも劣るわ」


ーー


サキ、ミリカ、セフィーヌに同席してもらう。


「私が、ここの代表になります」

「なんだ、ここの民族は、子供と娘しか居らんのか」


「どの様なお話しでしょうか?」


「トロイデン王国で、この地を調査する事になった。お前達は、我が国に隷属し調査に協力せよ。逆らえば、攻め滅ぼし奴隷としてくれよう」


サキの眉毛がピクピクしてる。これは、相当怒っているな。


「そうですか。相談を致しますので少しの間、お待ち下さい」


「好きにするがいい」


ーー


「あの横柄な態度、許せん。リック、ここで殺ちゃおう」


「サキに賛成ね」


「ええ、あの人を見下した無礼な物言いは、許せませんね」


「僕としては、向こうが手を出したので、"仕方なく対応した"っていう形にしたいんだ」


「何でよ?」


「これから先を考えると、余計な敵を作りたくないから」


「むぅ、それは言えるか」


「ここは、丁重にお断りする、と言う事でいいかい?」


「「「解りました」」」


ーー


「お待たせ致しました」

「いい返事を聞かせてくれ」


「貴方の様な者が居る国の下に、つく気は有りません。お引き取り下さい」


「ぷっ、リック。どこが丁重に、なのよ」


「何だと!小僧」

「おっと、動くなバインド


「くぅ、なっ……」

「し、将軍……」


「死にたく無ければ、黙って帰って頂こう」


「こ、小僧、後悔するぞ」


「ダンテス、お二方は緊張で動けないそうだ。別室に居る、この人達の兵士達に運んでもらいなさい」


「はっ、畏まりました」



ーー


「あ~、スッキリしたわね」

「さすがリックね」

「リック様、素敵です」


「これで、奴らが攻めて来るのは確実になった」

「そうね、顔真っ赤にしてたものね」



さあ、どう出て来るか?


ーー



(陛下、1万の兵士がいれば、生意気な山猿どもの国など直ぐに落として見せます)


(うむ、物資も奴隷も手に入ると言う訳だな。ダレイラ将軍、期待しておるぞ)


(もう準備は出来ていますので、明日にでも出発致します)


ーー


「ホント、失礼な奴らね」

「どうするのリック?」


「森に入る前の草原で、終わらせるよ」

「陛下、我々はどうすればよいのです?」


「念の為に、当日は森の中で待機していて」

「畏まりました」



この世界に通信機器は無い、情報屋の様に特殊なスキルが有れば別だが。


よく言われる事だが、戦争で重要なのは情報だ。相手に作戦が筒抜けになっている場合程、間抜けな物はない。


そう言う意味で俺は恵まれている。衛星を、持っているのも同然なのだから。


「草原に来るのは、3日後くらいかしら?」

「そうですね、きっと」


「この国が始まって最初の戦いだ、油断はしない様に」


「「「了解」」」


ただ勝てば、いいわけではない。その先が問題だ。どうするか、悩ましい。


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