第21話 酔いどれの魔女

 化粧品店の方は落ち着いたので、彼女達に全て任せた。


次に考える事は、俺が居なくても国が護れる様にする事だ。


要は何か有った時、安心して俺が国外に行ける様にしたいからで、決して自分が遊び回りたいからではない。


兵士は直ぐに増やせないので、国の回りにバーバリアン蟻に巣を作ってもらう事にした。


後は、俺の代わりに指示できる者が居ればいい。



「セフィーヌ、キースを連れて来てくれないか」


「はい、分かりました。直ぐに」


「あの男の子ね、どうするの?」


「セフィーヌとキースに魔法力の底上げと、ユニークスキルの使い方を覚えてもらおうと思ってね」


「私も人のスキルが判るんだけど、リックはスキルの使い方も判るのね?」


「全部ではない、でもある程度は予想がつくかな。だから色いろ試さないとね」


「セフィーヌのも?」

「うん、解るな」


「リックがおしえるの?」


「ユニークスキルは僕がやるけど、魔法は家庭教師を付けようと思うが、この国には呼べないから魔法大国ジェルロームに行こう思う」


「「え~、いいな」」


「そう言うなよ。サキとミリカは2人の警護役で行けばいいよ。そして、セフィーヌに剣術を教えて欲しい」


「OK、任せて」


「私は判らないから教えて。セフィーヌとキースはどんなユニークスキル?」


「セフィーヌは水のステータスチェンジ、キースは虫使い」


「キースはリックと同じなんだ」

「だからなのね」


「そうなんだ」


「リック、ユニークスキルの使い方を、私にも教えて欲しいわ」


「何だミリカ、知ってたんじゃないのか?」


「それが解らないのよ。両親も聞いたこと無いって言うし、人にはあまり言えないし」


「セフィーヌは、知らないかもって思ってたけどミリカもか」


「今まで、魔法とスキルだけで何とかなったもの」


「分かった。いい機会だね、やろう」

「やっと使えるのわね」


「絶対とは言えないぞ。考えてやって見ないと」

「解ってるって」



「お待たせしました」

「来たわね」


「陛下、お呼びでしょうか?」


「うん、先ず、陛下は止めようね。リックでいいよ」


「はい、リック様」


「これからセフィーヌと一緒に魔法の勉強をするからね」


「えっ、私もですか?」


「そう。それとユニークスキルの使い方の勉強もする。セフィーヌは教わった事が無いでしょ」


「はい、そうなんです。分かりました、キース頑張りましょう」


「はい」


「魔法は、魔法大国ジェルロームに行って勉強するよ。セフィーヌは光属性でキースは土属性だよ」


「ジェルロームに行くんですか?」

「そう、どうせなら良い先生に教わろう」


「いつ行くの?」


「キースが、虫の使い方を上手に出来る様になったらだね。それまで2人はこの魔法書を、読んでおく事」


「はい、分かりました」


「昔を思い出すわね」

「サキは今回は余裕ね」

「昔、苦労したもの」


「そうなのね」

「魔法を覚える時なんかさ……」



ふふ、みんな、楽しそうだ。


さて、ユニークスキルの方だが、キースは読んで字のごとしで簡単だが、セフィーヌは、水のステータスチェンジ。つまり固体・液体・気体に変えるって事だろうな。


その為の、圧力、冷却、加熱をする事も出来るかもな。


ミリカは、"スキル占"だったな。


"占いなんて、全然出来なかった"って言ってたから、占の考え方を変えるか。


連想ゲームでやって見るか。占、……占有、占拠、占領って感じだな。


スキルの占有か?相手のスキルを占有、占拠するんだから、相手のスキルを使えなくするか、使えるのか?これはやって見ないと判らんな。


しかし、こう言うスキルは誰が考えるんだ。元の世界の物理・化学・国語などの知識を持っている奴が考えているとしか思えん。


う~ん、考えるだけ無駄か。


「セフィーヌ、ミリカ。ユニークスキルの考え方を言うから、色いろ試して見よう」


「Ok」


ーー





「もう大丈夫だね」

「はい、リック様のお陰です」


あれから2週間が経った。キースもすっかり虫達と交流が出来る様になった。セフィーヌとミリカのスキルは、概ね俺の考えた通りで、2人とも基本的な事は出来る。


後は考えを広げて、どう使うかだ。


「そろそろジェルロームに行こうと思うんだ」

「ジェルロームは私も初めてです」


「最初は僕とセフィーヌ、キースで行く。住む所と先生を決めておくよ。次はセフィーヌ、サキ、ミリカ、キースで行っておいで」


「やっとね。楽しみ」


「キースはおじさんとおばさんに、話しておかないと」


「後、隣のマロンちゃんにもね」

「マロンちゃん?」


「キースの彼女よ」


6才なのに、もう彼女がいるのか。凄いね。


「ち、違いますよ」

「顔が赤くなってる」


「ミリカ、その辺で勘弁してあげなさい」


「は~い」


「出発は明日ね」

「了解」




魔法大国ジェルロームは、鉄の女王クリスティンの治めるラダステリィ王国の南西に在って、虫で普通に飛んで3日くらいの所だ。今回は王都のマゼイランに行く事にする。




いつもの様に虫から降りて歩いたので、着いたのは3日後の昼だった。


昼食を食べる店を探しながら街を見学する。やはり、魔法書・魔道具の店が多い。家庭教師とかは、商業ギルドかな?食事したら行って見るか。



「う~ん、難しいですな。高名な先生方は皆さん魔法協会に入っていますので、この国以外の者に教える事は出来ないのです。魔法学校に入れば別ですが」


「魔法協会に入っていない人は居ないのですね?」


「会員になる事は、名誉ですから皆さん入ります。あ、だいぶ前に追放された者もいましたな。これは論外でしょう、冒険者ギルドに行って魔法講習を受けた方が良いでしょうな」




「リック様、どうします?」

「追放された人が気になる。理由が知りたい」


「何か引っ掛かるのですね」


「こう言う時は、極端なんだ。ダメな奴か天才肌か」


魔法書屋で、そいつの居る場所を聞く事にした。


「すいません。魔法協会を追放された人って、どこにいるか知っていますか?」


「ああ、酔いどれ魔女様の事か。"静かな森"の中に在る家に住んでいるよ」


「何で追放されたのですか?」


「何でも、勇者召喚の魔法をする、しないで揉めた見たいだな」


「そうですか、ありがとう御座います」



「行くんですね?」

「うん、話をしてみたい」



酔いどれの魔女か、どんな女かな。面白そうだ。

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