第19話 ならず者の街、バンディットクロス
店が出来るまで場所を借りて、宣伝を兼ねて実演販売の形で売る事にした。
元の世界でテレビでやっているのを、そのままパクってやるだけだ。特にクリームは即効性が有るので、つけてもらった娘さんやおばさま達はびっくりする。
合わせて、石鹸、シャンプー、クリームをセットにして試供品として無料で配る。この世界では、こう言う売り方は無いらしく評判が良い。
3週間が過ぎ、店舗が完成した。高級店は元貴族の娘達、ジョディ、オリビア、ミネリに、一般店は商人の姉妹、ナンシーとカリーナに任せる事にした。
オープンして、初日から売れ行きは絶好調だ。事前の宣伝が利いている。
一般店は、客を捌ききれないので、直ぐに手伝いを雇ったほどだ。
石鹸は銅貨50枚、シャンプーは銀貨1枚、クリームは銀貨2枚にしてある。大体、1ヶ月は持つので良心的な値段だと思う。
因みに銅貨1枚は10円 銀貨1枚は1000円
貴族相手の高級店は40倍にしてある。容器は相談に応じ別途で料金をいただく。
コストは虫魔物のグリンクスの餌代と食虫植物のジュラインの油を使うので、こいつの栽培費用ぐらいか、そもそも森の中で、この2頭が闘っていた所に出くわし、偶然に混ざり有った物を見たのが始まりだ。
作成人件費はゴーレムがほとんどなので、そんなにかからない。製品が出来れば複製も出来るので、利益はかなり出るはずだ。
販売開始から2ヶ月が経った頃、朝起きて直ぐナンシーの所に連絡用に置いた、俺以外でも聞き取れる事が出来る魔道具を付けた、虫のテレブスから連絡が有った。
俺がいるジョウモ王国からワラヴォルト王国までは、さすがに虫の思念は届かないので、所々の森や街にテレブスを配置して有る。要は、スマホの中継局見たいな物だ。
(ご主人様、気になる事が有ります)
「どうしたの?」
(誰かが商品を買い占めて、裏で法外な値段で捌いている様です。そのせいで一般の人達の手に渡ら無い状況です)
「分かった、直ぐに行く」
(お待ちしています)
買い占め?大勢で一般の客のふりして、買っているのか?
「ねえ、コントラインの店で問題が有ったらしい。行くけど、誰が行く?」
「は~い、私の番」
「直ぐに出発するよ」
朝食と昼はヤクトビートルの上で食べ、その日の夜に着く。
「ご主人様、サキ様、来て頂きありがとう御座います」
「いいんだ、よく連絡をくれたね」
「あまり見ない顔の人達が、結構な量の商品を頻繁に買いに来て、常連の方々に売れない事が多くなったんです」
「なるほど」
「それに、こう言うやり方をする奴に心当たりが有ります」
「カリーナ、まだ決まった訳では無いでしょう」
「いいえ、姉さん。絶対にあいつよ」
「どう言う事?ちゃんと話しなさい」
「はい、サキ様。ゴーンツと言う悪徳商人がいるのです。汚いやり方で、のし上がって来た奴で、何人もの善良な商人がこいつのせいでダメになって来ました」
「この件もそいつだと言うのだね」
「はい。今回のやり方は、奴の数ある手口の中の1つです」
「私達の両親は、昔から仲の良い友人の商人からの話で、言われた商品を集め出荷しました。でも代金を手にする事が出来なかった。裏で糸を引いていたのがゴーンツだったんです」
「それで家族全員、奴隷になった?」
「はい」
「あなた達の両親は?」
「移動の途中で死にました」
「う~、許せん。リック!」
サキの姐御魂に火が着いてしまった。
しかし、確証も無いのに動くのはどうもな。ゴーンツの資産情報とか詳しく知りたいし、どうするか?
あまり近づきたく無いが、仕方ない。
「セフィーヌ、聞こえる?」
(何でしょうリック様)
「ならず者の街の場所を知りたいんだ」
(ダドウサ王国の北に在るバンディットクロスと言う街がそうです。気を付けて下さいね)
「分かった、ありがとう」
「ならず者の街に行くの?」
「うん、そいつの情報が判るかも知れない。ナンシー、相手の出方を見たいので、しばらく売る個数制限をして。それと、くれぐれも勝手に動かない様にね」
「かしこまりました」
「今日はここに泊まって、明日行こう」
「うん」
翌日、朝はゆっくりしてから出発した。隣の国なので余裕だ。
「ねぇ、リックは複制のスキルが有るんだから、商いしなくたって金貨を複製すれば、お金持ちになれるじゃない」
「僕もそれは考えたけどダメなんだ。複製のスキルには制限が有って、神が関与した物には効力が無いんだ」
「お金って神が関与してるの?」
「昔、錬金術で作った偽金が蔓延してね、鑑定しても本物と出てしまう位のね。当時は今ほど、経済は発達してなかったから、金の価値が下がって混乱したんだ。それに困った各国は、神に保証してもらう事にしたのさ」
「どう言うこと?」
「先ず、白金・金・銀・銅は国の管轄にして、神殿の神官によって商いの神、イツミール様に保証してもらうんだ。ここ以外の物は鑑定したら偽物になる」
「そう言う事か」
「例外は有るけどね、ミスリル・緋色がね・宝石」
「え、何でいいの?」
「加工して造るのが大変だからさ」
「そうか造った物の方が高くなるんだ」
夢中になって話していると時間は早く過ぎる、あっと言う間に着いた気がするが昼だった。
街の中の人達は、やはり癖が強いスキルを持っている。
1番多いのは盗賊スキル。まあ、当然か。"虚構"何て言うのもある、どんなスキルだ?俺は対応出来るのかな?スキルリスト見たいのが欲しいな。
「ならず者の街って、ピッタリの名前ね」
「得体の知れないスキル持ちが、たくさん居るから気を付けてね」
「私達は良いカモに、見えるんでしょうね」
「違いない」
「これからどうするの?」
「う~ん、こう言う所の定番は酒場かな」
「あそこなんかどう?」
西部劇に出てくる様なドアの酒場だ。
「いい雰囲気だね。入って見よう」
ドアを押して入る、中の連中が一斉に俺達を見た。そうなるわな。
取り合えずマスターに話し掛けるか。
「すいません、お聞きしたい事が」
「ここはガキの来る所じゃねぇ、ミルクが飲みたいなら他所へ行きな」
これも当然だよな、仕方ない。
「
「何を、この……くっ、てめえ何をした」
「質問をするのは僕だ。情報を買いたい、どうすればいい?」
「くそ、こんなガキに」
「早くしてくれないかな。目を潰しちゃうよ」
フォークを空中に浮かせて目に当てる。
「わ、分かった、街の外れの道具屋にジャックと言う奴が居る。そいつに聞いてみろ」
「ありがとう。じゃ、この店で1番強い酒を頂戴。サキはどうする?」
「私は甘いの」
「身体が動かねぇよ!」
「もう大丈夫さ」
「おっ、ホントだ。……こっちがドワーフの酒で"オーガ殺し"で、こっちは赤ワインをハチミツ酒で割ったトロピカルビーだ」
「うん、美味い。いくら?」
「銀貨3枚だ。たくっ、飛んでもねぇガキだ」
「ごちそう様、また来るよ」
「僕達、無事に帰れると思っているのかい?」
「あ、バカ、お前達、止め……」
サキに触れた瞬間、1人は顔が血まみれに、他は頭が火事になった。
「うぎゃー」「ひぃー」「た、助けてくれ」
1人はサキが、残りは天井に張り付いていた、2cm程度の大きさになった、火虫ボルケノンにやられたのだ。
「マスター。これ、この人達の治療費です」
「ああ、毎度どうも」
「最後はテンプレだったね。道具屋に行こう」
「それより、さっきの空中に浮いたフォークは何よ?まるで、超能力じゃない」
「ああ、あれかい。魔力の消費が凄いので、あまり使え無いんだ」
カッコいいけど、効率が悪いんだよな。
「ホントにいくつズル持ってるの?」
「ん~、内緒」
駄弁っている内に道具屋に着いた。さて、どんな奴が出てくる事か。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます