第18話 奴隷市場

 ヤクトビートルに乗ってザッハトスカ王国に向かう。奴隷市場が有るのはヴァナ帝国の近くの街オラドリーだ。


かなり歩く事になるが、手前の森で降りて何とか夕方に街に着いた。


「市場に行くのは明日だね」

「その方がいいでしょう」


次の日、身なりを整え市場に向かう。大通りでは露店の様に奴隷を並べ商いしている奴隷商人も多い。


帝国から捕虜になった兵士が、奴隷として売られている見たいだ。


俺達が行くのは由緒正しき歴史を持つ、パラント奴隷商館だ。


「いらっしゃいませ、お客様。本日はどの様な奴隷をお捜しで御座いますか?」


出て来た男はかなり人物だ、品が有る。それに鑑定など、それなりのスキルを持っている。


「商いに向いている者を5名、腕の立つ者を5名、欲しい」


「承知致しました。こちらのお部屋でお待ち下さい」


大きな広い部屋で待っていると、先程の男が奴隷を連れてやって来た。


「お待たせ致しました。先ずは、商い向けの奴隷からご説明致します」


この部屋にいる奴隷は全員が女だ、これもリリアナ様の加護のせい?


「この姉妹は商人の娘達で知識が有ります、他の3人は元貴族の娘で商人相手の仕事をしておりました」


化粧品の商売なのだから女性の方が良いか、商才のスキルもあるし、商いの神の加護を持っている者もいる。


奴隷商は知らないと思うが、面白いユニークスキルを持っている娘もいる。


「全員でいくら?」

「そうですね、金貨850枚でいかがでしょう」


「分かった、もらうよ」

「ありがとう御座います。次は腕の立つ者です」


ハーフエルフ、エルフ、虎族、人族、それと顎にエラ見たいのが付いている、初めて見るな。


「あのエラの付いているのは何族?」

「人と人魚の間に生まれた者と思われます」


そう言うハーフもいるのか。まあ、能力が高ければ何の問題も無い。見た目は貧弱な者もいるが、なかなかの強者揃いだ。


奴隷商の説明が終わり、値段を聞く。


「こちらは金貨1100枚になります」


「分かった、全員もらうよ。それと、みんなキレイにしていい服を着せてやってくれ」


俺はテーブルの上に、20枚の白金貨を置いた。


「かしこまりました。お客様は変わっておられますな、高いとは思いませんでしたか?」


「それだけの価値は有る、と思ったんだけど」


「ふふ、左様で御座いますか。では服はサービスさせて頂きます。暫くお待ち下さい」


テーブルに1枚の白金貨を置いて奴隷商はみんなを連れて出ていった。


戻って来た奴隷の女達は、綺麗な女性になっていた。


奴隷紋を入れてもらって終了だ。


「またのお越しをお待ちしております」

「ありがとう」


奴隷商館を出て、何気なく大通りの奴隷を見ていると、1人の奴隷のユニークスキルに気が付いた、まだ小学生にもなっていないような男の子だ。


今日はだいぶお金を使ったが、直ぐに取り戻せる。1人増えても問題無い。


「その子はいくらだ?」

「はい、金貨2枚で結構です」


何と安い事か。人が1人り20万だ、転生者の俺には奴隷制度はやはり、少し心に引っ掛かる。


それから冒険者ギルドと商業ギルドに行って、全員の登録を済ます。


「君達には毎月に決まった手当てを出す。そして今日の各自の売買額に当て、返済してもらう。全て返し終わった時、奴隷契約を解除する」


「本当ですか?」


「ああ、本当だ。正し、僕の国の民に成る事が条件だ。どう?」


「はい、喜んで」「私も」「私もだ」「私達も」

「夢のようです」


「よし、国に帰ろう」


ヤクトビートルの大きさを、いつもの倍にする。


「おお~っ!」


腕の立つ者組は驚かず感嘆の声をあげる、さすが頼もしい。


男の子は、目をキラキラさせる。ん、結構。


「ひぇ~、ご主人様」


商い組は、思った通りのリアクション。


有無を言わせず全員乗せ国に戻った。





「リック、セフィーヌお帰り」

「早かったな」


「「ただいま」」


「あ、やっぱり、全員女だ」

「予想した通りだわね」


「まさか、全員に手を出すつもり?」

「君達は僕を何だと思っているんだ」


「「歩く生殖器!」」


なんと酷い言われ様だ。


「サキ、ミリカ、例え本当の事でも言い過ぎです」


「「「うふふ」」」


3人が仲が良いのは俺も嬉しい。俺に対する愛情も感じるしな。


「失礼な、男も居るぞ」

「えっ、その子は?」


「リック、面白そうな子ね」


「ミリカは判るんだね、僕の弟子になる子だ。セフィーヌ、この子の里親を捜してくれないか?」


「分かりました」



残った奴隷の女性達には、やる事を説明して商い組と腕の立つ組で1人ずつペアになってもらった。


「私はこの子の護衛をすればいいのね?」


「そう、女性1人りでは物騒だからね。状況に応じて、冒険者を雇ってもいいよ。商いの人は手伝いを雇ってもいい」


「場所はどこでしょうか?」


「最初は全員で同じ所で、軌道に乗ったら各自で店をやってもらいます。場所はワラヴォルト王国にします」


「なるほど、観光客にも売って、拡散させようと」


「まあ、そんな所です。皆さんに商品を渡しますので、実際に使ってみて下さい。それと、この国の事は人には話さない様に」


「分かりました、ご主人様」



ーー


化粧品は、山の中の俺だけが知っている秘密工場で、ゴーレムに作らせている。順調に出来ているので、数が増えたら複製すればいい。



店舗を出すワラヴォルト王国に出発前、脱出道のチェックの際に、嬉しい事が有った。ゴーレムが掘ったトンネルが、ミスリルの鉱脈にぶち当たったのだ。これを精製して売れば資金繰りが楽になる。


今回、ワラヴォルト王国に行くのは俺とミリカ、それと商いの神の加護を持っているジョディとハーフエルフのパティだ。


イスリアガラの滝が有る街はコントラインと言ってかなり大きい街だ。


先ずは商業ギルドに行って、候補地のリストをもらった。


「どう?ジョディ、どこが良さそうかな」


「そうですね、ご主人様は1店舗と言いましたが、2店舗に出来ませんか?」


「と言うと?」

「客層で分けてみては、と思うのです」


「なるほど、続けて」


「大通りの東側は貴族が住み、宿も大きく泊まる客層も裕福な人達です。ですので、商品は高級感を出し美容効果も高いとします」


「言いたい事が解ったよ。もう1つの店はお手頃価格にして、手の届きそうな高級品も少し置く様な感じかな」


「おっしゃる通りです。大通りのここに高級店、西のここに一般店でどうでしょう」


製品の格差は、ネバネバの分量で決められるので、この考えで行けそうだ。


「判った、ジョディの言う通りにしよう」

「ありがとう御座います」


店舗2ヵ所と近くにみんなが住む家を買い、商業ギルドに紹介してもらった職人に内装を依頼し、計画は順調に進んで行く。



元の世界では働かず、競馬も楽しかったが、商売をする、こう言うのも悪くない。


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