第15話 やっぱり、こうなったか

 ねちっこそうな将軍のいるヴァナ帝国から遠くに離れる為に、西のセフィーヌの国へ急ぐ。


マーカス王国を出て西にはガドウン王国とプロスベラス王国が在るだけだ。


「セフィーヌ、やっぱり地図にはジョウモ王国は載って無いわよ」


「小さい国なので、隣の国の特産品の売買をしている村の人達しか知らないかもしれません」


「どんだけ小さいのよ」

「行って見るしかないな」


馬車でプロスベラス王国を目指す、今回は何の邪魔も入らず順調に進む。


ガドウン王国を抜けプロスベラス王国の王都バナンに着いたのは20日後の昼だった。



「もう一息で着くわね」

「この辺の状況はどうなの?」


「プロスベラス王国の北にある大きな湾を挟んでドロイデン王国とマッサ王国が仲が悪いです。度々戦争をしています」


「セフィーヌの国は大丈夫なの?」


「私の国は建国して300年ですが1度も戦争の被害はありません」


「そうなのね。次はどの馬車に乗ればいいの?」

「ライクンの村へ行く馬車ですね」


馬車が進むにつれて、景色はほのぼのして行く。


うん、田舎だ、俺のお袋の田舎にそっくりだ。


「お客さん、着きましたよライクン村です」


「やっと着きました。ここから歩きます」

「歩くの?」


「ええ、1時間くらいで着きます」


「地図では、この先は森と山が有ってその先は海です」


「その山に、ダンジョンが有るかも知れないな」

「え、そうなの?国は?」


「う~ん、微妙だな」



「おや、セフィーヌ様、お戻りに?」

「あ、おばあちゃん。はい、さっき」


「お婿様は見つかりましたかな?」

「はい、とても素敵な方です」


「知り合い?」

「はい、この村の村長の奥様です」


「また、カレンの実をお願いしますね」

「はい、アレツに言っておきます」


ーー


セフィーヌに促されて、森の中の緩やかな坂を歩くこと1時間、石の壁が見えて来た。


「あそこです」

「やっと着いたか」


門に衛兵が立っている。


「何者だ」

「エラン、私です」


「王女様!お帰りになったのですね」

「ええ、ただいま。こちらはお客様です」


「し、失礼致しました」


「セフィーヌって王女様なの?」

「はい、そうです」


えっ、マジ。それってヤバくない。


「「リック!」」


サキとミリカがジト目で俺を見て来る。


「さあ、みんな行きましょう」

「リック、行くわよ。覚悟を決めなさい」


「はい」 うう、困ったのだ。



「お父様」

「セフィーヌ、戻ったか」


「ゼノウスとバリトアはどうした?」

「盗賊に殺されてしまいました」


「何と!大変だったな」

「この方達に、危ない所を助けて頂いたのです」


「そうでしたか、感謝致します。私は国王のタリウスと申します」


「私はリックと申します。こちらはサキとミリカで御座います」


「旅の疲れも御座いましょう。部屋を用意させますのでお休み下さい」


「ありがとう御座います」


俺達は部屋に案内され、晩餐まで休む事にした。


「リック、自分が置かれている状況が解るわね」


ああ、解っているさ。えらい事になった。


「ダンジョン探しの方はどうするの?」

「リックの話だと、この先の山に有るそうなのよ」


「さっきも言ってたけど、何で判るの?」

「滝のダンジョンの水龍から聞いたのよ」


「水龍?」


「あのクリスタルの2つの赤色は、水龍の目だったの」


「えっ、何よそれ」


ーー


「ふ~ん、そうだったのにゃ。じゃあ、ダンジョン探しは何とかなりそうね」


「ダンジョンはね」

「……」


「何とかなるわよ、リック」


だと良いが。


晩餐会が始まった。この国の偉い人達が集まっている様だ。


「今日は皆に話しがある。セフィーヌが婿殿を連れて戻って来た。この国の慣習により一週間後の婚姻の儀の後、私は退位し婿殿を次期国王とする」


「「「おおー!」」」


あ~、やっぱり、こうなったか。


ーー


俺は1人、部屋で自問自答していた。


俺はセフィーヌが嫌いか?

いや、大好きだ。


セフィーヌを置いて逃げ出す気か?

いや、セフィーヌを悲しませたくは無い。


セフィーヌもサキもミリカも、思いやりが有って、みんな良い娘だ。


元の世界でも、この娘達の様に気持ちの良い娘は俺の周りに居なかった。


それが今は、3人も居る。それに3人とも俺より年上で姉さん女房だ、まあ、俺の中身は45才だが。


自由気ままな暮らしをしたかったが、少しは頑張ってみるか。


ーー


「サキとミリカにお願いが有ります」

「なに、改まって」


「サキとミリカが、リック様とずっと前に結ばれているのは解っていますが、お父様と民達の前では形だけで良いので、私を第一夫人とさせて下さい。お願いします」



「良いわよ。誰が第一夫人でも、リックを好きなのはこの3人は一緒でしょ」


「その通りね。呼び名だけで変わったりしないわ」


「ありがとう。サキ、ミリカ」

「私達の結束は堅いのよ。それ」


「「「お~!」」」


ーー


聞けば、国と言ってもこの国の人口は、10万人に満たないそうだ。兵士も騎士と合わせて6千程度らしい。



ゲームが趣味の俺はもちろん、シュミレーションゲームもやる。もちろん下手の横好きなのだが。


三國志も信長も大好きでよくやった。辺境の国をよく選らんだ。じっくり力を付けてから攻めるのが好きなのだ、敵に攻め込まれるのは遅いが内政に時間がかかり、上手くやらねば、攻められた時に即、終了になる、苦労が水の泡になる事はよく有った物だ。


そう言う意味でこの国は、俺に向いているかもしれない。でも今回は失敗は出来ない、責任重大だ。



翌日、この国の内政大臣アレツを紹介された。


「リック様、正式に国王に成られるのは一週間後ですが、至急考えて頂きたい事が有ります」


「何でしょう?」


「実は、リック様方が来られる少し前から原因不明の病気が広がっていまして、直ぐに対応せねば大変な事に成るかと」


何と、来てそうそう、災いイベントの疫病発生か?


前途多難、頭が痛い。


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