第14話 謎の空飛ぶ魔獣

         ☆☆☆☆☆


   ー ドワーフの国、カジマハル王国 ー


「ダンゴン様、これをご覧下さい!」


「う~む、これは非常に不味い。直ぐに国王に、ご報告せねば」


ーー


「どうしたダンゴン、何を慌てておる?」


「陛下、魔素の対流の速さと量が遂に、崩れ始めました」


「何、では1000年前と同じ状況か」


「左様で御座います。早く各国に報せ、手を打たなければ大変な事に」


「しかし、1000年前は誰も信じなかったそうだ。話の判る国王も、いざ協同で事を成そうとすれば、主導権を争い、まとまらなかったと、聞いておる」


「こんな時に勇者様が居てくれれば良いのだが。元の世界に帰ってしまわれたからな」


「そうであったな。前回は、勇者様が成し遂げてくださったのだった」


「陛下」

「何だ、デンヒル公爵?」


「では力が有り、器が大きく、人や各国をまとめる事が出来る者を密かに捜して見ては?」


「うむ、それしか有るまい。事が起こるまでどのくらいだ?」


「はい、早ければ7年以内かと」


「では先ず、勇者召喚をしている、テレストラ王国から調査せよ。急げ」


「はっ!」


          ☆☆☆☆☆


「え~と、少し方針を変えようと思う。両親が心配しているといけないので、セフィーヌの国に先に行きたいと思う」


「賛成よ」


「嬉しいです。早くリック様を、父と母に紹介したいです」


「じゃ、これからは、西に向かって行けばいいのね」


「そう、切りが良い所の街で、宿に泊まる感じだ」


「そうすると、次の街は湖の有る街、オンダリアの街ね」


「今度は湖が観れるわ」

「観光気分は変わらないわね」


「魔物の素材をギルドでお金に替えてから、馬車乗り場へ行こう」


「そうしましょう」


魔物の素材は金貨10枚になった。1日の稼ぎとしては悪くない、日本円で100万になる。


湖の観光を終え、名物の川魚である7色サーモンのフライ、塩焼きを堪能して、次の国に行く馬車を予約しに行く。


「お客様、申し訳ございません。バンテン王国への馬車は運休中です」


またか、今度は何だ。


「どうしました?」


「実はヴァナ帝国とバンテン王国、ペントレス王国の連合軍とで戦争が始まります」


「戦争ですか?」


「ええ、ですから、その先に行くには北か南に大きく迂回しないと行けません」


「解かりました、検討します」


「ヴァナ帝国は一番野心の大きい国です」


「どうする、リック?」

「こうなったら奥の手、空だ」


「良いわね、久しぶりだわね」

「明日、あの森から出発しよう」


ーー


座席を4人分に改造して屋根を付けた。


「リック様、どうするのです?」

「セフィーヌ、驚かないでよ」


いつもの様に乗り物専用にしている虫、防御力の有るヤクトビートルを出す。


「はあ、凄いですね」

「セフィーヌは怖く無いの?」


「この虫は、リック様にすごく懐いていますね」

「へぇ~、判るんだ」


「出発するよ」


「馴れて来たら、最高ね」

「ホント、気持ち良いわ」


「リック様は、何でも出来るのですね」

「ズルの塊なのよ、自分で言ってる」


「まあね」


「あの辺りが国境です」

「人が小さく見える」


「大勢の人達が集まっているわ」

「赤と茶が連合軍ですね。帝国は黒ですから」


「黒が圧倒的に多いわね。5倍以上じゃない」


「帝国の指揮官見たいのが、俺達に気が付いた様だ」


「攻撃して来ないわよね?」


「大規模な広域魔法でない限り、この高さまで魔法攻撃を出来る奴はそうは居ないよ」


「リック、居た様よ」

「えっ、マジか」


ただのファイアーボールが、ここまで来るってか。何者だ。


「リック!」

「くっ、対魔法結界。ドレインシールド!」


[バシュゥン] 音と共に、ファイアーボールは消滅した。


「さすがね。後、いくつズルが有るんだか」


くそ、お返しだ。


火の虫ボルケノンと雷の虫メイドウジュを2匹ずつ出す。オーガの魔石で作った、魔力ブースト機能の有る魔道具を装備している虫だ、覚悟しろよ。


「ボルケノン、メイドウジュ、懲らしめておやり」


ボルケノンには指揮官をメイドウジュには兵士を死なない程度に痺れさせる事にする。


先ず、メイドウジュは電気エナジーの青白い球体を作り出し、兵士の集団に落とす。落ちた球体は、その集団から放電し他の集団に襲いかかる。


合計5個の球体を帝国の兵士達に落とし、電気を帯びた球体の連鎖によって兵士達の動きは停止した。


次は指揮官の番だ。ボルケノンの火球が指揮官を襲うが、盾を上手く使い跳ね返し躱していく。


「やるわねアイツ」


「うん、盾も鎧も相当性能が良いが、かなり腕が立つ人だね」


「どうするの?」


「ワイバーンと同じさ。人には鍛える事が、そんなに出来ない所が有る、脳とか心臓とかね」


2頭のボルケノンに火球連弾を圧縮させ、頭と心臓の部分にレベルMAXで狙わせる。


2頭に狙われてはさすがに躱しきれず、頭と胸に立て続けに火球連弾を食らい、馬から落ちて動かない。


「死んだのかしら?」


「いや、肺と心臓を圧迫され、頭は、脳震盪を起こして気絶したのさ。鎧では護りきれないんだよ」


「完全に連合軍の勝利になるでしょう」

「リックに、ちょっかい出すから悪いのよ」


「さあ、行こう。お前達、戻って来い」


ヴァナ帝国を過ぎて、隣国のマーカス王国の近くに有る森に降りる。


「ここから歩きは仕方がないな」

「夕方までには着きますよ」


久々に歩いたので疲れた、今日も豪華な宿に泊まろう。


風呂に入った後、1階のレストランに行く。泊まりに来ている貴族達の間では、朝の戦争の話で盛り上がっている。


「連合軍の大勝利だったそうですな」


「帝国のデンタクル将軍は胸の骨を6本も折ったそうです」


「いい気味ですね」


「謎の魔獣に、絶対に復讐してやると言ってるそうです」


「そうそう、その謎の魔獣ですが、バンテン、ペントレスの両国では神殿を造り魔獣の像を作って祀るそうです」


「気持ちは解りますな。何せ、兵士5万に対し9千で勝ったのですから」


「神の使いとするのも、当たり前と言うものです」



「ぷぷっ。リック、神の使いだって」

「あの将軍、執念深い感じがするわね」


「まあ、もう会う事は無いだろう」

「だと良いのですが」


セフィーヌが言うと気になるな。さっさと帝国から遠くに行こう。


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