第12話 とんだ災難

 胡散臭い国、ダドウサ王国をさっさと出て、西へ進むが、その前に南に有るラダステリィ王国に寄って行く。


ここにはダンジョンが3つ有るからだ、セフィーヌの国に行くまで、効率よく出来る限り回りたい。


もちろん冒険者達にも聞いては見たが、"入口に魔物の像があるダンジョン"は知らないと言う返事しか返って来なかった。


「セフィーヌ、この国もどんな所か知ってるの?」


「はい、女性が治める国です。母系制を取っている国ですね」


ふ~ん、この世界では珍しいな。


「さすが、何でも知っているわね」


「この国の女王は16才で、周りの国と外交や戦争に於いても、堂々と渡り合っているので鉄の女と呼ばれています」


「へぇ~、凄いんだね」


その時、通りの向こうから走って来た男が、セフィーヌにぶつかって来た。


「きゃっ!」

「邪魔だ、どけ」


サキが追いかけようとしたが、既に角を曲がって行ってしまった。


「とんでもない奴だ、怪我は無い?」

「はい、大丈夫です」


直ぐに大勢の兵士達を連れて、上官らしき男が俺達の所にやって来た。


「お前達、怪しい者を見なかったか?」


「あっちに男が走って行きました」

「そうか、おい!」


「はっ」


「念の為にお前達も調べさせてもらう」


男は棒状の魔道具を、みんなの身体の回りで動かした。探知機の様な物か?



魔道具が反応した、赤く光る。


「娘、そのバッグの中を見せてもらえるか?」


「はい、どうぞ」


セフィーヌがバッグを開けると、布に包まれた卵くらいの大きさの魔道具があった。


「これはどうしたのかな?」

「私は知りません」


「これは王宮から盗まれた、我が国の秘密資料が入った魔道具だ。皆の者、こ奴らを捕まえよ!」


「何をするのよ」

「リック!」


「逃げるのも、倒す事もいつでも出来る。取り合えず行って説明しよう」


「解かった、そうする」


逃げ様と思えば出来たが、後々めんどうになるのは避けたい、どうしても解ってもらえなければ、蹴散らすだけだ。



城の一室に入れられ尋問を受ける。


「何度も言っています、ぶつかって来た男が彼女のバッグに入れたんです」


「お前らが仲間だからだろう」


ああ、もう埒があかない。サキを見て、ぶっ飛ばす合図を送ろうとした時、彼女がやって来た。



「城に潜り込んだ賊が捕まったと聞いたが、この者達か?」


「これは女王陛下、こんな所においで下さるとは」


この女が若干16才で"鉄の女"と呼ばれるクリスティン王女だ。


「あの文書は、私の一族の致命傷に成りかねない物ですから気になって。何ですか、まだ子供では無いか」


クリスティン、お前もな。


「大体、外の者が城に簡単に入り、魔道具の有る場所に忍び込む事が出来る筈が無い。内通者がこの城の中に居ます。女王様、賊は僕達では無いので、いくら責めても背後にいる者は判りませんよ。時間を頂ければ僕が捕まえて来ましょう」


「無礼な小僧だ!痛い目を見ないと解らんのか」

「待ちなさい」


クリスティンは、俺の目を真っ直ぐ見てくる。


「良いでしょう、3日間あげます。捕まえられなければ、お前を打ち首とする。お前が逃げれば、この3人の娘は公開処刑とします」



「分かりました。それではその魔道具を包んでいる布をお貸し下さい」


「この布をですか?」


「はい、この布に触ることが出来る人は?」


「私と父、それと大臣のザハテ公爵だけです」

「そうですか。後、そこの人も触りましたね」


「お、俺か、仕方ないだろ、持って来ただけだ」


「そうですね、大丈夫です」

「リック?」


「安心して。見つからなかったら、僕が助けに来るから大人しくしてて。とくにサキ、イラっとして騒ぎを起こさない様にね」


「うっ、分かったわよ」

「じゃ、行って来る」


「大丈夫よね?」

「リック様は凄いお方ですよ」


「そうだった、普通じゃなかったな」


ーー



さて、この辺で良いだろう。先ずは探索用の虫を出してと、匂いに敏感なガメ虫だ。こいつに布の匂いを覚えさす。そして131072匹まで増やして街に放った。


「お前達、頼むぞ」


もう1つは諜報用の虫、テレブスを城に32768匹おくりこむ。後は宿でゆっくりお茶でも飲んで待つとしようか。



(ねえ聞いた。騎士のアレン様、ゲボ侯爵夫人と出来てるらしいわよ)


(凄い、それって年の差20才の不義密通じゃない)


(アン、我慢できないよ)

(ケン、ダメよ。こんな所で、あ~ん……)


(また王子様はこんなにお野菜を残して、困った物だ)


(おい、アレックス、あの件はどうなっている?)

(はい只今、調査中です)


(デボネン、魔道具を手に入れるのを失敗したそうだな)


(申し訳ございません。アジン公爵)


(城に入れる手引きをしたとバレぬ様に、関わった奴は全て始末せよ)


(かしこまりました)


おっと、ヒットしたな。アジン公爵とデボネンですか、これで男の行方が判ればOKだ。



ーー


「誰だ!」

「私だ、デボネンだ」


「デボネンか、どうすればいい?」


「何もしなくていいさ。さあ、皆さん殺って下さい」


「くそ、俺も舐められた物だ。簡単には殺られんぞ」


「お前より腕が立つ人達だよ。無理」

「くっ」


「御免、その男を殺される訳には、行かないんだ」

「貴様、誰だ」


「音無真琴、45才」

「ふざけるな!」


「ふざけて無いよ。はい、お前達。動くなバインド!」


「何を、バカめ。先にお前を……なっ、動けないっ」


「お前達には、魔道具を盗んだのと企てた事を証言してもらう」


「言うわけ無いだろ。糞が」

「これオークの肉ね、見てて」


床に置いたオークの肉が1分も経たずに無くなった、魔物の蟻を、日本のアカアリの大きさにして食べさせたのだ。


「これバーバリアン蟻ね。今から小さくしてお前達の尿道から入ってもらうから」


2mのバーバリアン蟻を2mmに変える。それを奴らのイチモツヘ。


「止めろ、うぇ、あぁ、ひぃ、ダメ、堪忍して」

「わ、判った、俺は言う。だから止めてくれ」


「ダメ、本番で言わないと困るから全員、この蟻に入ってもらう」


「そんな、うぎゃ~」


「大体さ、お前がセフィーヌのバッグに、魔道具入れるから悪いんだろ」



よし、何だかんだで3日経ってしまったが、5人に蟻をしこたま入れたし、城に急いで行くか。



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