クリスティーヌ
「えっ、嘘でしょ」
クリスティーヌの顔が青ざめていく。
「本当よ、クリスティーヌ。バイデルは捕まったわ。だから、この屋敷は没収よ」
バイデル家で優雅に・・・というか、バイデル以上に使用人をこき使っていたクリスティーヌ。
「あの馬鹿、上手くやりなさいよねっ」
「貴女・・・・・・知ってたの?」
クリスティーヌが驚くべきことを口にした。
「ええ、もちろん」
「その意味分かっているの?」
「ええ、私がお姉様より女として優れているってことでしょ?」
(あぁ、もう・・・)
「貴女も罪を被る可能性があると言うことよ?」
私がそう言うと、びっくりして目を丸くするクリスティーヌ。
「あっ、えっと、えーっと、そうよ、知っていたけれど、私、か弱い女だから何もできなくてぇ、怖かったわっ、お姉さま」
と言って、抱き着いてきた。
「私の媚びても無駄よ。今回の件は、この国の洗浄。エディも徹底して行うと言っていたわ」
「まー、お姉様。バイデルに振られたからってすぐに王を陥落させたんですか? とんだ、悪女ですわね」
「ありましたっ!!」
遠くからバイデル家を捜索していた兵士が叫んだので、私はその兵士の元へと向かう。
「ここです・・・・・・」
「これは・・・・・・」
私は彼の持っていた手帳を貰い、クリスティーヌのところへ戻る。
「残念です。クリスティーヌ。貴女もこの件に関与していたなんて・・・・・・」
その手帳はバイデルの日記だった。
そこには、クリスティーヌが事件関与し、出資していたことが書かれていた。
「そっ、それは彼と私が喧嘩した時に、腹いせで・・・・・・」
「腹いせで、なぜ事件に関与したと書くの? この時期から彼は捕まる気だったの? そんなのありえないわ」
「えーっと、ちょっと、待ってね。動揺しちゃってるの、えーっと、えーー・・・・・・」
「貴女の財産は没収よ」
「はああっ!?」
兵士がクリスティーヌを連れて行く。
「ちょっと、変態っ。どこ触ってんのよ、止めてよねぇっ、ちょっと。あっ」
屋敷の外に出されるクリスティーヌ。
「くっそがぁ」
私は連れて行った兵士の二人に、辛い役目をさせて申し訳ないと伝えるけれど、二人は気にしないで欲しいと言う顔をした。
「あっ・・・・・・ふふふっ。お姉さま」
再び、クリスティーヌの甘え声。
「ねぇ、いいわ。没収しても。でも・・・・・・お金持ちになったのよね? だから・・・・・・おかねちょーだい」
いつものように彼女から欲しがるクリスティーヌ。
「あっ、あと、お屋敷没収って言っても、王家が没収するのよね? なら、お屋敷も・・・・・・ね?」
私は深呼吸をする。
すると、気持ちが穏やかになって、いつの間にか眉間にできていたしわが取れた。
「うんうん」
クリスティーヌは、自分の素晴らしいアイディアによって、自分に都合のいい答えが返ってくると思って、満面の笑みになっている・・・・・・が、
「駄目です」
私は笑顔できっぱりと回答した。
「なんでよっ!?」
姉からなんでも貰えると、思っていたクリスティーヌは逆ギレする。でも、
「私は王女です。私の持ち物はエディや王家の物。ひいては、国民の物です。身内・・・それも、犯罪者に渡せません」
「なっ・・・・・・」
私の言葉に口が塞がらないクリスティーヌ。
クリスティーヌはまだ、自分の行った愚かさを理解していないのかもしれない。けれど、その罪を償っていかなければならない。だから、
「これは、返しますね」
私は王女であっても唯一渡せる物。
母の形見のイヤリングを彼女に返してあげました。
「ううううぅっ」
クリスティーヌはイヤリングを両手で持って泣き出しました。
「それは、良い物です。売っても構いませんが、きっと持っていた方が貴女は幸せになれますよ?」
私は最後の最後で、クリスティーヌに最も大切な贈り物ができました。
FIN
最低な婚約者と何でも欲しがる妹。私から婚約者を奪うのは止めた方がいいと言っているのに妹はまったく聞きません。 西東友一 @sanadayoshitune
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます