第14話 魔物狩り
「ん……これで大丈夫かな?」
洗濯物をたたんでからルナは一息つく。
本日は遥がお出かけしているのでしばらく一人で家事に専念していたが、残りは夕飯の準備くらいなので、余った時間をどう過ごすか悩むルナ。
(遥……いつ帰ってくるかな……)
無意識にそんなことを思ってしまうほどにルナは遥が側にいないことに寂しさを感じていた。
今までは別に一人でも平気だったのに……今は遥が側にいないと落ち着かないというのが不思議な気持ちだけど、嫌ではない。
「遥……」
不意に言葉にしてしまいルナは顔を赤くして首をふって頭に浮かんだ遥の姿を消そうとするが――当然そんなことで消えるわけもなく、目を瞑ると鮮明に思い出せる遥の優しい微笑みにルナは自然と頬を緩めていた。
(早く帰ってこないかな……)
そんなことを思いながらルナは遥の帰りを心待ちにしていた。
一方の遥は魔の森を一人で駆け回っていた。
目的は食材の調達……ではなく、魔物の討伐が目的だ。
だいたい魔物を倒してから再出現するまでのスパンは約1週間から2週間くらいなのでその辺りで一度数を狩っておけばしばらくは安全なのだ。
もちろんシルベスター周辺のみは今回も討伐はしない。
ちなみにシルベスター周辺の魔物が他のエリアに行かないのかという疑問に答えると、魔物は基本的には出現場所とそれぞれの持ち場というか、エリアから離れない習性なので、変に森に足を踏み入れなければ基本的には大丈夫なのだ。
まあ、とはいえ、人里に全く降りないとは言えないので、定期的には狩っておかなければならないが……
「ま……これでシルベスターから戦争でもふっかけてくれれば簡単に事が運ぶけど、そこまでアホではないか」
しばらくシルベスターとの交流を経っているので向こうもなんらかのアプローチをかけようとはしてるみたいだけど、そもそもシルベスターの連中では遥の家には文字通りの意味で近づくことも出来ないし発見も出来ないだろうから特に問題はないのだが……
(今のところシルベスターの連中からのアプローチが少ないのはおそらく戴冠式……国王の代替わりが原因だろうし、しばらくは慌ただしくてあちらも大胆なことはしないだろうしな)
そもそもの前提として魔物を一瞬で消せる実力を持つ遥からすればこの世界の最強と言われる騎士だろうと魔術師だろうと何人、何百、何千と束になっても敵わないほどの実力差があるので弱点と言えるものがルナだけなのだが、そのルナにしても遥の家から出なければそもそもルナを魔法で感知することも視認することも出来ないのでなんの問題もない。
いざとなったら家に展開してある術式で一網打尽にもできるし、そもそも遥の家につく前に魔物に全滅させられるだろうし、何より遥の家に入るには特別なマジックアイテム……遥手製の魔力の籠った道具が必要なので何の心配もないのだ。
(
郵便の奴と遥が呼ぶのは、遥の家に手紙などを届けてくれる人間のことで、そいつには絶対にシルベスターからの手紙を持って来ないように伝えてあるので問題ないのだ。
そもそも遥の家の場所を知る人間が少ないので他に届けることができる人はいないのだが・・・まあ、その郵便の奴にしてもそこそこ腕がたつ上にプライドの高い仕事人な人間なので変に裏切る心配をしなくて済むのは助かる遥だ。
基本的に遥が信じている人間はかなり少ない。
国王ですら遥の家にはたどり着けないし、招待する気もまるでないので、限られた友人……ロバートやマイヤ、郵便の奴の他に数名しか遥の家にはたどり着けない、というか色んな意味で見ることすら叶わないので何の問題もないが……
(子供を作るときにはどこかの国には居住を作らないとな。流石に俺には出産の経験はないし、その手の人間は必要だろうし……何よりこの付近では子供の教育に良さそうなものは何もないからな)
最強の子供を作るなら魔の森での修行などはもってこいな気がするが、流石に転生チート持ちの子供でなければそんな過酷なことは無理なので普通に町で暮らすことも視野にいれる遥。
ナチュラルにルナとの子供に関して真剣に考えているのは今さらだが。
「ま、やっぱり妥当なところでロバート達のアーカシア王国が一番安全かな」
アーカシア王国は他のどの国よりも治安が良いことで有名で、そこそこ規模の大きな国だし、なにより遥の知り合いが多いので住むにはぴったりの場所なのだ。
とはいえ……流石にシルベスターとの決着がつくまでは移住する気にはならないが。
「よし……とりあえずこれで大丈夫かな」
考え事をしているとこの付近の最後の魔物の討伐を終えたので遥は一息ついてから家に帰ることにした。
一刻も早くルナに会って本日のルナエネルギーを補充するために……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます