第11話この夢か…

——恵……って呼んでください



と、澪詩が顔を近付け、普段よりも柔らかい声でねだる光景がふと脳内をかすめる。


はぁっ……はぁはぁ。


ゆ、夢……かぁ、といつのまにかうたた寝していた俺は安堵して呟く。

瞳が捉えるのは白い天井で両腕で支えながら上半身を起こした。

閉め切った自室を見回し、窓の外からこぼれた朱色の陽光で陽は沈みきっていない時刻かと認識した。

閉め切った自室の外から階下で何やら言い争っている母と姉の声が聞こえる。

珍しいな、と思っただけで、ベッドをおりることなく二人の言い争いを仲裁する気すらおきなかった。


澪詩と夏祭りに行き、二ヶ月が経過したある日の昼休みに澪詩から呼び捨てで呼んでくれないかとねだられた。

その際の光景を、うたた寝の最中で夢にみた。

気恥ずかしく、その日限りしか、彼女を恵と呼ぶことはなかった。

女子を名前で呼び捨てにすることなんて慣れてないから。


彼女は……彼女の進学先はどこなんだろう、とふと疑問に思った。

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