◆穴がある提案
「それじゃあ、次は
質問か。色々あるにはあるんだが一番知りたいことはやっぱりあのことだな。
オレが一番知りたいこと。それは
そういうことを訊くのは無粋だと分かりつつもやっぱり気になるものは気になる。
どんな男なのか?
オレたちと同じ中学なのか?それとも別の中学、もしくは高校生なのか?はたまた大学生なのか?かっこいい系なのか?可愛い系なのか?いろいろと訊いてみたい。
「念のため言っておくけど、私の恋人に関しての質問はNGだからね」
質問する前にでっかい釘を刺されてしまった。
なんだよ質問とかある?とか訊いておきながら質問をつぶすとかそんなのありかよ。
いつの間にか一人称も『私』に戻ってるし。
おとこの娘モードは疲れたのかな?
「う~ん。質問ねぇ」
「えっ。もしかしてないの」
色々訊かれるだろうと身構えていたのだろうか李奈が拍子抜けしたような顔を向けてくる。
「いや、あるにはあるんだが」
もちろん訊きたいことはある。
でも、ある程度の疑問には想像の余地がつく。
いつ手術したのか?
これはおそらく休んでいた二ヶ月間だろう。
費用はどうしたのか?
家族が出してくれたのだろうか?
他にもおとこの娘になった感想は?とか訊いてみたい気がするけど、訊いたところでどうしようもないしな。
「…… 質問は特にないかな」
「本当にないの?訊くならいまだよ。この時間が過ぎればもう質問しても答えないよ」
「なんで時間制限付きなんだよ」
「時間制限を設けた方が質問を思い浮かべやすいと思って」
タイムリミットがあると分かったら緊張して逆に質問しづらいだろうが。
「冗談だよ。いきなりですべてを受け入れるのは無理だと思うから。また、時間を空けて質問してきて」
「それなら助かる。じゃあ次に提案だな」
質問はなかったけど、提案はある。
李奈を部屋に通したのもこの提案をするためだ。
ここからがオレの本題だ。
オレが神妙な面持ちになったのを感じ取ってか李奈の身体が固くなるのが目に見えてわかる。
「提案は二つある。一つはメリットのこと。もう一つはこれからのことだ」
オレは大きく息を吸って吐いた。
これからいうことは以前にも一度口にしたことがあるセリフだ。そのときは失敗してしまったから、今度こそ成功させなければならない。
オレは一つ目の提案である。メリットを口に出す。
「李奈のおとこの娘になったという秘密をこの一年守り通すことが出来たら…… 。
李奈、もう一度抱かせてくれないか!」
あのときの失敗の原因は状況の把握が出来ていなかったこと。そして背中越しで目をみて話さなかったことだと分析している。
今は状況の把握が出来ている。それに、李奈の目をちゃんと捉えることでオレの本気度が伝わるはずだ。
「はぁ。君も諦めないね。あのとき断ったのは私がおとこの娘になったからダメって言ったの。わかってるの?」
あきれ顔の李奈が諭すように言ってくる。
まるで出来の悪い生徒の相手をするみたいに。
「そっちこそわかっているのか?オレは女の子が好きなのではなく、李奈が好きだということを!」
「///ッ」
いきなりの告白がそんなに恥ずかしいのか顔を急速に赤らめていく。
告白されて恥ずかしいのは思春期の乙女らしい。
告白の恥ずかしさに男も女もおとこの娘も関係ないか。
「それにおとこの娘だって穴はあるだろ。---ブハァッ!」
セリフを遮っていきなり顔が熱くなる。これは別にいやらしいことを言って鼻血が出たわけではない。
李奈の右ストレートが顔面にヒットしたからだ。
とても女の子のパンチとは思えない。おとこの娘になって筋力が向上したのか?
机の上へ乗り出しながら右腕を伸ばしている李奈にとりあえず感想を伝えておく。
「男顔負けのいいパンチだったぜ!」
笑顔でサムズアップ!
これで男の子とは何かを一つ教えられたかな。
「おとこの娘になったからと言って別に下ネタが得意になったわけじゃないんだよ」
てっきり李奈は男顔負けとか言われてうれしそうにすると思っていたのだがそうはいかなかった。
その目はひどく冷たい。
恥ずかしいところまでみられたくせに下ネタが駄目だなんて思わなかった。
オレも女の子について李奈に教えてもらうべきだろうか。
「悪かった。ごめん謝るよ。…… それで抱かせてくれるのか?」
「…… 君は本当に諦めないね。そしてブレない」
冷たい表情から今度はあきれ顔へ。
この数分間で李奈の表情がコロコロ変わるのを観られるのも彼氏の特権だな。
次はどんな表情を魅せてくれるんだろう。
「…… もうわかったよ。秘密を守ってくれたらもう一度セックスさせてあげる」
しばらくの沈黙の後、頬を赤く染めて提案もといメリットを飲んでくれた。
ご褒美が確約したことによってオレは李奈を裏切ることができなくなった。と同時に李奈に少しばかりの信頼と安心を与えることができたと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます