幕間の物語~中学二年生クリスマス前①~
初体験の日から季節は過ぎ肌寒くなってきた十一月下旬。私は下校途中公園に立ち寄っていた。
別に公園に何か目的があって立ち寄ったわけではない。ただ何となく寄り道するみたいに自然と足が動いていた。
小学校低学年ぶりの公園は閑散としており小学生の時に味わったあの賑わいは嘘のように感じる。
誰もいない落ち着いた公園は悩み事をするにはうってつけだ。
私は悩んでいた。
今年の夏に私の初めてを捧げた彼のことでだ。
私は彼が好きだ。
だから私の大事な初めてを捧げられた。
後悔はしていない。悔いもない。むしろ誇らしいと思う。
彼との体の相性はたぶん最高だった。
それゆえに私は今悩んでいる。
彼と付き合うべきかどうかを。
身体を重ねる前は付き合う気はあった。
だが、体を重ねてからというもの彼には興味を感じなくなってしまった。
これが倦怠期というものなのかどうかはわからない。
ただひとつわかっていることがある。
正確にはわかったことである。
わたしはどうやら男の子より女の子が好きだということだ。
思春期になり身も心も大人に向けて成長し始めたころ、保健体育の授業で男女の身体の違いについて勉強した。
それまでは男女の垣根なくみんな一緒だと思っていたが、その授業を発端に途端に男の子を意識し始めた。
それと同時に興味も沸いた。
気になる男の子もできた。
タイミングが良かったのか運が良かったのかわからないが彼と初めてを交換した。
そこでまた男女の違いを知った。
知れば知るほど自分が女の子だと意識するようになった。
そして自分が男の子より女の子のほうが好きだと自覚した。
女の子が好き。だが別に男の子が嫌いなわけではない。私と初めてを交換した彼のことは好きだ。
でも、女の子の方が好きだ。
理由はわからないが、自分の気持ちはよくわかった。
彼に抱かれて私はこの感情を知ることが出来た。
この感情を知ってしまった今、私は彼と付き合うことができない。
だって、彼はもう私の恋愛対象じゃないのだもの。
私の恋愛対象は男の子でもなく彼でもなく女の子だからだ。
たとえ彼と付き合ったとしても長くは続かないだろう。
私は悩んだふりをしていたが、その実答えはすでに出ていた。
彼と付き合うぐらいなら行為を持って接してくれている後輩の女の子と親しくする方がましだと考えていた。
彼はきっとクラスの女の子が言うには優良物件のなのだろう。
大企業の御曹司で顔とスタイルが良い。ついでに性格まで良い。
おおよそ完璧なイケメンだ。
同じく家が大金持ちでお嬢様学校に通う私とつり合いが取れている。
その後輩女子で思い出したのだが、そういえばその後輩女子はおとこの娘(?)というジャンルにはまっていると私に熱く語りかけていたような。
なんでも見た目は女の子だが体は男の子というのが後輩女子の言うところのおとこの娘らしい。
理解に苦しむ。
それの一体何がいいのやら。
男女の違いを知った今なら男は男らしく。女は女らしくあるべきだと考える。
ジャンダーレスの今の時代こんな考えは古いと分かっていてもこれ以外の考えを私は持っていない。
そんなことを考えながら公園内をブラブラと散歩をしていると私はある女の子を発見した。
無人だと思っていたこの公園にはどうやら先客がいたようだ。
女の子はこの地域にある公立中学校の制服に身を包みブランコを漕いでいた。
何とも儚げで可憐だった。
私はその女の子をなぜだか妙に気になってしまい、思わず声をかけてしまった。
「あの、何をしてらっしゃるのですか?」
今思えばその行動が私とその女の子とその恋人と後輩女子の運命を大きく捻じ曲げたのだろう。
ついでに私の初めてを捧げた彼の運命も変えたと思う。興味はないが。
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