第10話

ボクが女中さんに【お漏らし娘】のレッテルを貼られ、穴があったら入りたい状態で真っ赤になっていると、旅館内の探検を終えてニコニコ顔でメルたんが戻ってきた。


「テリアたん、大体のお風呂の位置とか分かったから、浴衣に着替えてお風呂に行こぅ?んん?どうしたテリアたん?どす黒いオーラが背中から出てるよぅ?」


メラメラメラメラメラメラッ

「コノウラミハラサデオクモノカ!」


「テリアたんは面白いなぁ。とにかくお風呂行こ。臭いから」

「ボクの怨みを簡単にスルー!?うわわーん!!」


ボクはメルたんに怨み事をスルーされ、泣きながら走り出しす。

走りながら、途中見つけた女中さんに館内案内パンフレットを貰い大浴場に向かった。


「あんれ、お嬢ちゃん。館内はマラソン厳禁だべ。滑ったら危ねぇだ」

「はい………」


室内でのマラソンは常識的にマナー違反です。よい子はマネしないでね。


とにかく大浴場に辿り着き、脱衣所にダイブ!

「あんれ、お嬢ちゃん。お風呂は静かにはいりましょうだべ」

「はい………」


何故か、途中で館内パンフを貰った女中さんが大浴場に居て注意された!?

ボク、走って大浴場に来たはずだけど?


ま、まあ、いいや。

とにかくお風呂に入って、この臭いを取らないと【お漏らし娘】のレッテルのままだ。

ボクは静かにスク水を脱ぐと、貸し出しのタオルと手拭いを取る。

入り口に姿見があったので、恐る恐る見てみると………


輝くような銀髪、均整の取れた幼さの残る顔、そして透き通るような白い肌。

まさに、神の奇跡で生まれたような美少女が其処にあった。

でも、ぜんぜん何も感じない。

すでにこの姿が自分だと認識してるみたい。

お子ちゃまボディーは相変わらずだ。


「へぇ……女の子の裸って、こんなもん…」


「あはぁ、テリアたん。何、自分の裸、見てんのぉ?成長を確かめてる訳?かっわいいねぇ」

「ぶへぇ!?」


いつの間にか、背後に居たメルたん!

一気に抱きつかれた?!

は?この背中にあたる弾力は!?


「じゃあ、今からあたし達、裸の付き合い、いってみようかぁ。せい!」


ひゅんっ

いきなり風呂に投げ飛ばされたあ?

どひゃあっ、お風呂は静かに入りましょう!


「アバババッ!???」ドボンッ


ゴボゴボゴボッ!?

お風呂に強制入浴させられたボク。

え?意外に深い???


『『でゅふっでゅふっでゅふっ、役得、役得、なんだな。ゴボッゴボッ』』

「?!」


ぶはぁっ

「な、何か居る!?」

「どうしたのぉ、テリアたん?」


「え?うわっ、メルたんの裸が眩しい!?」


完璧なボディーライン。

バストFカップ並の形のよい胸。

そして輝くヒップに愛らしいウサギ尻尾。

めちゃくちゃ我が儘ボディーが其処にあった。


「何、目を隠してるのぉ?」

「前を隠して下さい。眩しいです」


ボクの前に仁王立ちのメルたん。

さ、流石にマジ見は はばかるよう。


「あっははは、あたしが羨ましいのぅ?成長すればテリアたんもこうなるよぉ」プルンッ

「い、いや、その」


動くたびに弾むその豊満な胸は完全な凶器です。はい。じゃ、なくて!


「そ、そうだ?!お風呂の底に変な人影を発見したんです。痴漢かも知れません!」

「人影?人影ってアレの事ぉ?」


「え?」


メルたんの指差した先には、真っ赤に茹で上がった白ブタが一匹………いや、変態ロリコンフィギュアニストが満足げに浮かんでいた。

おい!


「こ、コイツは……」

「あら、知り合い?」


「変態に知り合いはいません」

「そうだよねぇ」


「て、天国………なんだ……な」


はあ、ボクは溜め息をすると、旅館の女中さん方を呼び、変態は御用となって担架で運ばれていった。

なんでも奴は、この浴場に昨晩から入浴して待ち伏せしてたらしい。

とんでもないな?!


「まったく、女湯に昨晩から潜むなんて、ろくでもないな」

「女湯?テリアたん、ここ混浴だよぅ。この旅館は混浴しかないからねぇ」


「ここ混浴だったの!は?なら奴は合法だった???」

「そうそう、そういう事になるねぇ。知ってるかと思った。どこの宿のお風呂も混浴しかないよぅ」


知らなかった。

だから、大きい手拭いが貸し出しだったのか?

はあ、次からは用心しよう。

じゃなくて!


アイツ、風呂の中に潜ってたんだよ!

絶対、覗き目的だよね。

だって、天国って……天国?


なんで奴は天国と思った?

は?あの時、風呂に居たのは三人。

ボクとメルたん、そして変態。


そんで風呂に入ってたのは、ボクと奴………



「どうしたん、テリアたん?顔が真っ赤だよ?」

「ボク、もう、お婿に行けません……」


「あははは、何でそう思ったのか知らないけど、それを言うならお嫁さんでしょ。女の子なんだからぁ。大丈夫よぅ。テリアたんの器量ならどんな男もイチコロでしょ。罪な子ねぇ」



メルたんは豪快に笑いながら、ボクの頭をグシャグシャした。


ああ、そうか。

ボクはお嫁さんになるのか…お嫁さん………


絶対無理!

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