第4話

◆キャバレー▪ルーラ

数日後



「ししょう~っ、ピコッ痛!?」



「だーかーらーっ、誰が師匠じゃぞい!」

ピコッ「あう!?すみません、店長」


「そうじゃぞい!間違えるなだぞい!」

「それでしっ、じゃなかった、店長!お話しがあります」


「何じゃぞい。ワシは今、忙しいんだぞい!」

「何をしているんです?おへそを出してって、やかん??」


「見えんか、ヘソで湯を沸かしとる」

「ぶっ、何でそんな事を」


「新しい魔法の開発中じゃぞい」

「それ、何の役に立つんですか?」


「驚け、野外で茶が飲めるぞい」

「………………」


その言葉に、僕は黙って近くにあったキワタニ製魔力簡易コンロを出し、そこに別のヤカンに水を入れて、お湯を沸かした。


「おおリア、お前は大魔法使いか!」

「店長、勘弁して下さい」


駄目だ、この人。

偏屈ばーさんモードだと、かなりのボケが入ってる!?


「それで、何の用だぞい!」

「あ、そうでした!まずは此れを見て下さい」


ボクは早速、この店の収支報告書をルーラにみせる。


「何じゃあ、この棒を書いたもんは?」

「この店のここ数ヶ月の収支を棒グラフで表したものです」



あの日、ルーラに無理やり借金奴隷にされたボクは、次の日からショーの踊り子兼接客を担当させられたのだが、その後何故か店の経理と運営まで手伝わされる事になっていた。

いくら前世の知識があって、企業経営に携わった経験があるからって人使い荒すぎじゃない!?


因みに、初日にボクが前世の記憶がある事はバレました。いや、自分から言ってないよ!

それでバレたから、どっかに売り飛ばされると思ったら、店の経理と経営もやって欲しいと言われ、前世の知恵が有るんなら賢いだろうと、有無を云わさずやらされました。

はい。


それで朝から晩まで働き通し?ボク、また過労死するの!?って思いつつ、頑張っちゃいました。なんせ、前世で簿記二級なんで。ええ、つい頑張っちゃいました。


そんで今、収支報告をしたんだけど!


「棒ぐらふって何じゃあ?それに後になるほど棒が小さくなってるのは?」

「一つの棒は一ヶ月の売上を表してます。棒が下線から上に伸びるほど、売上が良い事を表します」


「おお、カッキテキじゃの!」

「はい、画期的です」


「で?後になるほど、棒が小さくなるのは何でじゃ?」

「………売上が減ってる事を表してます」


「ほう?それでこの下線から下に向かう赤い棒のところは何じゃ?」

「売上が赤字な月を表してます……」


「ほう?最初の六ヶ月以降、ずっと赤い棒じゃの」

「そう、みたいですね」


「…………」

「…………」


「………何とかせい」

「はい?」


「………何とかせい。新しい企画で客をよびこむんじゃあ!」ごおおぉーーっ

「ひいいーーっ!?」


怖い!背中が燃えたルーラ偏屈ばーさんモードが、頭デッカチ湯ばーばモードで迫ってくるぅ?!

だ、誰か助けて!

はく~っ!!


「でゅふ、でゅふ、でゅふ、恐怖に怯えるリアちゃんも最高なんだな。あう、あう、なんだな」

「ぎゃいっ、出た!顔無し、じゃなくて、変態ロリコンフィギュアニスト!」


うわーんっ、ボクの周りには燃えた偏屈湯ばーばと変態ロリコンフィギュアニストしか居ないのかあああ!?



バーンッ

「ルーラさん!今日こそ滞納してる家賃3ヶ月分、六十万オルデ円!キッチリ払って貰いますからね!!」


その時、突然ドアが開き、ビシッとしたビジネススーツを着こんだ三角メガネの高圧ウーマン風女子が現れた!?

いったい何事??


「来いたぁなあ、この守銭奴がああ!」

「何ぃ?殺りたいわけ?いいわよぅ!」


な、何がはじまるの?

二人の背後に何かが見える!?

ここれは!


ルーラ師匠の後ろにはハヌーマンみたいな凶悪猿と、三角メガネ高圧ウーマン風女子の後ろは歯を剥き出しにした、フェンリル的狂暴お犬様!

これが俗にいう【犬猿の仲】ですか!って、そんなバナナ!?



ドッゴーンッ



バカでかい魔力衝突が始まり、二人の激しい応酬が店全体を暴風に巻き込んでいく。

わーん、店が壊れちゃうよ!?



「あらぁん、大家のリッキーちゃんじゃない?久しぶりねぇ」


ありゃ!?ルーラ店長、エルフ美人に変身してるよ!いや、あれが素だったっけ?


「私は久しぶりじゃないわ!そっちは呪いで覚えてないけど、家賃は無かった事には出来ないからね!」

「いやだわ、リッキーちゃん。私と貴女の仲じゃない。六十万オルデ円なんて私は知らないわよ。だ▪か▪ら無かった事に、ね🖤」


「何が、ね🖤だ!ちゃんと覚えてるじゃないかぁ!」


ドガガガガッドバババッ


「はひーっ!?」


ボクは頭を庇いながら、必死に舞台を後にする。

背後は、雷と暴風で店の備品が飛び回る。


ヤバい、ヤバい、ヤバい!

二人が目に見えない打ち合いを始めて、辺りは台風並みの暴風が発生中。


オタッキー達が竜巻に巻き込まれてる~!

ぐるぐる回って眼鏡が大量に巻き上がる?

なんて、はた迷惑なんだぁ?!


「でゅふ、でゅふ、でゅふ。これは毎月一回のイベントなんだな」

「ぎゃっ!また、いつの間にかに後ろに立たないで!?」


ひーっ、こんな事やってたら、また直ぐに赤字だよーっ!

何とかしないと大変だ。

どうしよう?


そうだ!

まずは新しい企画を考えないと!!

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