報告書 特定機密事項 202×年00424号

 日本において発生した集団幻覚事件についての報告


                 アメリカ合衆国 中央情報局 日本支局長


 二〇二×年七月十二日午後五時十五分頃、日本の関東地方○○県城南市、城南医科大学で火災が発生し、一階フロア及び地下のコンピュータルームが焼損。

 居合わせた患者や事務局員の多くが負傷または死亡。更に、病院理事長の藤田源一郎氏も意識不明の重体。当初、国内の反体制派もしくは隣国によるテロ活動が疑われたが、主な監視対象者たちに動きはなく、その可能性は極めて低い。


 生存者の証言によると、複数の怪物が突然現れ、襲われたとのこと。この現象については、毒ガスや麻薬による攻撃も疑われたが、後の化学・疫学調査により、いずれも否定。しかしながら、被害を受けた人々のほとんどが負傷、もしくは死亡していることから、ただの集団幻覚で無いことは間違いない。なお、一般人によって撮影されたスマートホンの動画には、怪物の映像が映っているものは皆無であった。


 目撃情報の中には、鎧のようなものを身につけた少年が、剣で怪物を倒していた。更には、少年がフロアのスピーカーを壊して回っていたとの情報がある。

 また、更に、病院の外では一切これの現象は起こっていないという事実もある。これらの情報を総合的に分析すると、病院の中で何らかの音が流れ、その音が原因で幻覚が起こった可能性が考えられる。


 なお、地下のコンピュータルームが焼損したことと、一連の幻覚現象が収まったことが時間的に同一であることから、突飛な推測だが、スーパーコンピューターを発信源として幻覚を促す何らかの音が流れ、その音が原因で今回の事件が起こった可能性を記しておく。ただし、この仮説によって、幻である化け物に襲われ、肉体的ダメージを受けるということや、幻の化け物に対してダメージを与えるという現象についての説明は困難である。


 また、軍人風の男が二本の長大なナイフを使い、怪物を倒していたという証言もある。この軍人風の男の目撃情報との関連が疑われる事件として、直近で日本で頻発したオンラインゲームLODDのモンスター幻覚事件がある。この事件ではよく似た人物の目撃情報がいくつかあるためである。そのため、今回の事件も含め、何らかの国家的組織、もしくは軍事組織が関わっている可能性も否定できない。さらには、日本の自衛隊関連機関が、特殊兵器を秘密裏に開発している最中の事故であった可能性も考えられる。


 目撃された少年や軍人風の男、背景にある組織の正体については、目下調査中であり、事実が判明し次第、報告する。なお、本現象の原因についても調査・研究中であり、結果については併せて報告を行うことを申し添える。             (以上)

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ファントム・ブレイン~ぼくの幻影戦闘録 岩間 孝 @iwama-taka

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