第3話 一緒にお風呂へ...?

 気づけば、マンションの40階へ到着。

 緊張のせいで記憶が吹っ飛んでいるな、俺。小桜もずっと俺の手を握って黙ったままだった。


 エレベーターが40階に届いて、ようやく小桜は口を開いた。


「……天満くん、ここだよ」

「あ、ああ。降りよう」

「この先の奥がわたしの部屋」


 静かな夜の中、俺と小桜は歩く。

 幸い、住人とのすれ違いがなくて助かった。セキュリティ万全の高層マンションだから、ほぼ人気はなかった。


 ようやく部屋の前に辿り着き、小桜はスマホを取り出してカギを開錠していた。



「えっ、小桜それって……」

「うん、スマートロックだよ。高層マンションはこれが普通だからね」

「すげぇな。そんなスマホで部屋の扉を開けるとか」



 一般家庭にはないセキュリティだな。さすが最新のマンション、タップひとつで扉を開けられるとはな。


 ガチャっと音がしたので入れるようだ。



「さあ、入りましょ」

「お、おう」



 ついに中へ。

 小桜が扉を開けて先に入っていく。俺も続いていくのだが、玄関から広かった。これ、本当にマンション?


 いきなり良い匂いもしてきた。何かの芳香剤かな。女の子って感じがした。いかんな、早々変な気分になってきた。



「こっちがリビングだから」

「リビングがあるのかよ。広いなあ」


 廊下を少し歩いて直ぐにリビングはあった。あまりに広くてぶったまげた。これ、四人家族とかが住むような広さだぞ。


 リビングの中央には、おしゃれなテーブルと座布団。なんだがアンティークっていうか、異世界趣味がありそうだな。



「それにしても……小桜」

「う、うん」

「お前、生活用品とか散らばりすぎだろう」

「だ、だってまだ引っ越してきたばかりだし……整理が追い付いていないんだもん」

「そうなのか。って、この床に落ちているピンクの物体はなんだ?」


 拾い上げようとすると小桜が顔を真っ赤にして、それを先に取り上げた。


「ダ、ダメッ! これはわたしの……下着」

「あ……ああ。って、うわぁ! す、すまん!」


 びっくりしたぁ、そんなもんが落ちているものなのか。それにしても、小桜の生活能力はどうなっている。


 いくら引っ越してきたばかりとはいえ……散らかりすぎだ。



「お茶淹れるから、天満くんはそこのテーブルの前で座って待っていて」

「わ、分かったよ」



 下着を握りしめながら小桜は、台所へ向かった。キッチンもすげぇ広いな。冷蔵庫や電子レンジ、その他諸々も最新の機種ばかり。やっぱりお金持ちか。


 それにしても、落ち着かない。

 ずっと、そわそわが止まらないから困った。ちょっとだけ小桜の部屋を散策してみようか。俺は純粋な気持ちで適当な戸を開けてみた。


 すると、ドサァァァ……と物があふれ出てきて、俺はその波にさらわらてしまった。なんぞぉ!?



「ちょぉー! 天満くん、勝手に開けないでよぉぉ!」

「……いやいや、小桜。これは酷いぞ!」


「もぉ! 乙女の秘密を暴かないでよ!」


「これは乙女の秘密っていうか……だらしないっていうか。小桜にも意外な欠点があったんだな」

「うぅ……こればかりは苦手なんだよね」



 そうか、やっぱり小桜は整理整頓が苦手らしい。運動神経抜群の美少女とはいえ、欠点のひとつやふたつはあるものなんだな。


 でも、小桜の秘密を知れて俺は嬉しかった。整理整頓が好きな俺は、腕が鳴った。


「よし、小桜。これから同棲するんだぜ、俺が手伝うよ」

「て、手伝うって……さっきみたいに下着も出てくるもん、恥ずかしいよ」

「馬鹿。結婚しているんだぞ。もう下着とか関係ない」

「で、でもぉ」


 それに、小桜のこの生活能力を是正せねば。汚部屋で同棲生活なんて俺には無理だ。部屋とは人の心と一緒だ。汚いとそれだけで気分も落ち込むし、ストレスに繋がる。


 なんだけど、この場合は……小桜の心が汚れているという事になってしまうので、それは胸に閉まっておく。いや、正せばいいだけの話。

 汚れはいくらでも落とせる。落とせない汚れなんてないのだから――。


「分かった。そういうのは小桜に任せるから、整理を手伝わせてくれ」

「そうだね、人手が欲しいと思っていたし……天満くんならいっか」


 納得してくれたようで、小桜は座った。アツアツのお茶を淹れてくれて、俺は湯飲みを受け取った。


「ありがとう」

「ううん、いいの。だって、わたしと天満くんは結婚したんだよね」

「そうだ。手続きは明日しようと思う。早くしないと校長が役所に問い合わせちゃうからな。悪いが休んでくれ」


「そうだよね。うん、分かった」

「ああ、退学だけは避けないと」



 ずずっとお茶を啜っていると、小桜はぽつっとつぶやいた。



「赤ちゃん生んだ方がいいのかな」


「ブッ――――――!!!」



 予想外すぎる発言に俺は茶をふいた。いきなり飛躍しすぎだろう。そっちじゃねぇよ!


「だ、大丈夫!? はい、ティッシュ」

「俺の方こそすまん。だけど、子供とかは後だ。今は『婚姻届』が重要だろう」

「うん、婚姻届に名前とか書くんだよね。ということは、わたし『天満 遥』になるの?」


「嫁入りなら、そうなるよな。でも、なんか状況的には婿入りな気がする。小桜、お前の家って金持ちだよな。どう考えても」


「……実は、パパもママも社長なんだ。だから、二人とも忙しくて会えない。で、わたしは一人で転校してきた」



 両親共々、社長ときたか。

 そりゃ金持ちなわけだよ。

 そして、一人で転校してきた理由も判明した。



「そうか、いろいろ大変なんだ。まあ、状況的に嫁入りとなるのかな。俺としては、婿入りもしてみたいけど」


「なんで?」


「小桜って苗字がかっこいいし、可愛いからね。そんな理由でスマンけど」

「そういうこと。じゃあ、婿入りする?」


 悪戯っ子のような表情で笑う小桜。正直悪くない提案だ。この場合、俺が小桜の家族となるわけだ。つまり、自動的に金持ちに……いや、そんな玉の輿的な発想はやめておこう。


「小桜はどうしたい?」

「わたしはどちらでも。でも、天満の姓もいいなぁ。ほぼ見かけないし」

「まあ、珍しいよな、どちらも」


 となると、いったん保留かな。

 名前は後にしようとすると、お腹が鳴った。


「は、腹減ったな」

「そうだね。なんか作ってくるよ」

「それじゃ、俺も手伝う。お世話になってばかりも悪いし」

「そ、そぉ? じゃ、一緒にやろっか」


 台所へ向かい、小桜と共に調理を開始。時間もあまりないので、簡単なレトルトカレーを煮込んでいく。それとコンビニで売ってる野菜を冷蔵庫から取り出し、完成。


 って、めっちゃ簡単なヤツだ、これ!


 ま、まさか小桜って料理もできない? いや、今は時間がないから、たまたまかな。うん、たまたまだと信じたい。



 テーブルにつき「いただきます」をして銀のスプーンを手に取った。見た目は至って普通のカレーと野菜。


 口へ運ぶと――うん、驚くほど普通!


 当然ながら普通に美味かった。

 また時間のある時に料理したいな。


 食事を終えると、小桜は片付けを後回しにした。それよりも話があるらしい。なんだ、顔を赤くして。



「天満くん、先にお風呂に入る? そ、それとも一緒がいい……?」

「い、一緒に!?」



 俺と小桜が一緒にお風呂へ……マジ?



***おねがい***

 続きが読みたいと思ったらでいいので『★×3』をしていただけると非常に助かります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る