第6話 「鍵」

   本の背表紙を上から見ると、紙が不自然につけられていた。ゆっくりと剥がすと、中には小さな空間があり、そこには白い布に包まれたものが入っていた。ゆっくりと手元にあったペンを使って私は取り出そうとした。すると少しずつ、棒状の何かに白い布が巻かれているのがわかった。布から中身を取り出すと金色の鍵が出てきた。長さはティースプーンよりは少し長い程度の大きさであった。





「これは、一体…」

「ジェームズさん、やっぱりこのノートには何か隠されているに違いないわ。」

「そうですね。しかも、この本かなり古い。そしてそこに入っているこの鍵は布に巻かれているにせよ、全く腐食が見られない。つまり…」

「…金?」

「アリスさん…その可能性は高いですね…」

 金は、腐食性が高く錆びにくい。特別な水溶液でしか溶かすことはできない。そのため、昔から装飾品としての価値も高かった。





 それが本から出てきた。しかも、暗号が示す通りの場所に。これは明らかに何かしらのメッセージ性があると私もアリスも確信した。

 鍵の棒状の部分には斜めの鍵かっこのようなものが両端に記されている。棒の中央にはページ数が書かれている。ノートとビーグル号航海記の該当するページを見てみた。ノートには数字が書かれており、航海記にはガラパゴス諸島での調査がまとめられているページだった。

「アリスさん、これは少し骨が折れそうですね。一旦宿に戻って続きを階段しませんか?」

「そうですね。一旦、一呼吸おきましょう」






 今朝、ご飯を食べたいつものパブに戻ってきた。広めのテーブル席に座り、ノートと本を確認する。

ノートの言葉と航海記の言葉に共通の言葉が存在する。しかもかなりの量が共通の言葉になっている。

その後に残った言葉もある程度の量となった。その言葉を並び替えても、ダーウィンの墓石に書かれた言葉、取り除いたり足したりしても全く解読出来なかった。



 そうこうしている内に、数日の時が過ぎた。謎が解けない日がしばらく続いていたので、少し散歩に出ることにした。アリスはまだ部屋で寝ている。昨日も夜遅くまで、色々試していたようだ。

 朝、こうしてホテルの周りを歩くのも久しぶりな気がした。朝つゆで草木は濡れている。レンガでできた道を進んでいく。街の家々を眺めていると、小さなツタの植物が巻き付いている家があった。葉は少なく、茶色のツルがからまっている。その家の前で私はふと立ち止まった。


 



 つるを見ていて何か引っかかることがある。どれくらい時が経ったのかはわからない。しかし、ふとした瞬間に私は昔読んだ本のことを思い出したのであった。

 思わず、その昔の出来事をアリスに伝えるべく、ホテルに向かって走り出したのであった。おそらく、これが暗号解読の答えであると確信していた。


  




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ダーウィン ノート ぜろさん @030303

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