第三話:術師系

「さて。ここからは最後のカテゴリーである術師系だけど、ミサキは疲れてないかしら?」

「はい! 大丈夫です!」

「それなら続けていくけれど、今までと違って術師毎に説明が必要になるから、慌てずいきましょうか」

「はい! お願いします!」

「じゃあ、まず何時も通りに書き出すわね」


下位職     上位職

───────────

魔術師─┬┬──魔術剣士

    │├──魔術槍士まじゅつそうし

    │├──魔術槌士まじゅつついし

    │└──魔術騎士

    ├───聖魔術師せいまじゅつし

聖術師─┴┬──聖剣士

     ├──聖槍士せいそうし

     ├──聖槌士せいついし

     └──聖騎士

精霊術師──┬──万霊術師

      └──万霊弓師ゆみし

付与術師ふよじゅつし────創生術師そうせいじゅつし

幻影術師げんえいじゅつし

古龍術師こりゅうじゅつし

幻獣術師げんじゅうじゅつし


<例外>

闇術師あんじゅつし

───────────

「何か、魔術師と聖術師の派生で目が泳ぎますね。フィリーネさんの文字が綺麗だから良かったですけど……」

「そんな事はないわよ。ちなみにこの世界で主たる術師といえば、今ミサキが挙げた魔術師と聖術師。そして精霊術師になるかしら」

「他の術師はマイナーなんですか?」

「はい。あまり人口は多くなく、武芸者同様希少な術師も多いですね」

「へー」

「じゃあまずは魔術師から説明するわね」

「はい! お願いします!」

「魔術師は術師の中でも攻撃に特化した術を得意としているわ。直接的な攻撃の術だけじゃなく、前衛の火力を上げるような属性付与や、相手を眠らせたり束縛したりする間接魔法も多いわ」

「私達の世界でイメージできる魔術師と近いかも。聖術師はやっぱり回復や支援が得意だったりするんですか?」

「あら。よくわかっているわね。聖術師の主体は傷を癒やしたり、毒を治したりする回復魔法。そして相手の攻撃を止める障壁を張る防御魔法や、術への耐性を上げたり防御力を高める補助魔法がメインとなるわ」

「僧侶みたいなものなんですね」

「ソウリョ? それは貴女の住んでいた世界で、聖術師の役割を持っているのかしら?」

「はい。使う魔法も同じような感じです」

「そうなのね。世界も変われば呼び名も変わる。こうやって聞くと、やっぱりミサキはこの世界の人じゃないって改めて感じるわね」

「私もそうですよ。こうやっていろいろ聞くと、こっちが別世界なんだなって感じますもん」


───


「戦士系の説明でも思いましたが、魔術と聖術ってすごく派生が多いじゃないですか。これって、元の職業が違っても、上位職としては同じなんですか?」

「ええ。でも厳密にはちょっと違うわね」

「え? どういうことですか?」

「例えば、魔術剣士になる為には、剣士からと魔術師から目指すことができますが、下位職の特性がそのまま上位職に影響しやすいのです」

「それって、剣士から目指すと魔術剣士になっても、より剣士としての実力が抜きん出るって感じですか?」

「あくまで傾向ではございますが、その認識でお間違い無いですよ」

「へー。それって聖魔術師も一緒なんですか?」

「そうね。私は元々下位職は魔術師なのだけど、だからこそ魔術の方が自信があるわね」

「つまり、基礎になる下位職もちゃんと考えて選んだほうがいいってことなんですね」

「流石はミサキ様ですね。素晴らしい気づきだと思います」

「えへへ。ありがとうございます」


───


「じゃあ、次は精霊術師をお願いします!」

「はい。精霊術師は、世界に存在する精霊の力を借りて、様々な術を行使する、聖魔術師に近い職業となります」

「精霊の力を借りる、ですか?」

「ええ。この世界には炎、水、風、地、森、光、氷、命の八つの精霊が存在するの」

「八つですか?」

「そうよ。これらは普段目には見えないけれど、それぞれに精霊が宿っているの。その力を借りてるって訳ね」

「何かちょっと神秘的ですね。あ、じゃあ精霊がいない場所では術は使えないんですか?」

「ええ。この世界で魔法を使うには、殆どの職業で術の媒体がいるの。魔導書や杖。錫杖など、使う物は様々。そして精霊術師にとっての媒体が精霊になるの。だから、例えば水のない場所では、水の精霊術は使うことができないのよ」

「つまり、キュリアさんはやっぱり精霊がいる場所じゃないと術が使えないってことですよね?」

「そう思われますよね。ですが、キュリアは万霊術師ですので、その制約を受けないのですよ」

「え? そうなんですか?」

「はい。万霊術師とは、各精霊の精霊王に認められた者のみなれる職業なのです。ですから、どこにいても精霊王や精霊を呼び出し、力を借りる事ができるのですよ」

「うわぁ。それって凄いですね! でもそれだったら皆万霊術師を目指しますよね?」

「そう思われがちだけど、万霊術師は世界でも殆どなった人がいない職業なのよ」

「え? 何でですか?」

「万霊術師になるには、万霊の儀式っていう試練を乗り越えないとなれないのだけど、これが本当に大変な儀式なのよ。私が知っている万霊術師なんて、キュリアとその母親であるフィネット。そしてキュリアの故郷にいる万霊の巫女、エスカさん位かしら」

「そんなに少ないんですか!?」

「世界も広いですから、実際にはもう少し数は多くなるのではと思います。ですが、私達わたくしたちでもこれだけしか知らないというのは、それだけ希少な職だと思っていただければ」

「へー。何かキュリアさんに対する見方が変わりそう……」

「確かにあの子は普段はあまり表情に出さないし、凄さは感じないかもしれないわね」


───


「その他の職業はどんな感じなんですか?」

付与術師ふよじゅつしは武器や防具の強化や、付与具エンチャンターをより効果的に使える職業ね。一応熟練すれば、付与具エンチャンターを作製する事も可能よ」

「上位職の創生術師そうせいじゅつしっていうのは?」

「これは所謂人為創生物シンセティカルと呼ばれる、自動で戦ってくれるゴーレムなどを作り出すことができる職業なのです」

「何か凄そうですね。何となくこれも職に就くのが難しそうじゃないですか?」

「はい。先程の万霊術師ほどではないですが、こちらも希少価値が高い職業ですね」

「まあでも、そもそも付与術師ふよじゅつし自体が魔法も限定的だし、付与具エンチャンターを使い熟すにしてもお金が掛かるってのもあって、正規冒険者としての人口はかなり少ないわね」

「確かに非正規冒険者として、付与具エンチャンターの作製、販売を生業にされている方が多い印象がございます」

幻影術師げんえいじゅつしは、やっぱり幻影を見せる職業ですか?」

「そうよ。相手を欺いたりする幻影や音などを出したりなんかができるのだけど、これも最近は不人気ね」

「どうしてですか?」

「確かに人を欺く事はできますが、直接的に敵を攻撃する手段に乏しいですし、精霊や人為創生物シンセティカルといった、自己意思が希薄な相手には効果を発揮しないといった欠点もあるのですよ」

「それは確かにあまり人気なさそうですね」

「近年は魔術師が近いことをできるのもあって、新たになろうって人は少ないわね。せめて二職持ちとしてだったら、かなり有用性もあがるのだけれど、まあそううまくはいかないわね」

「古龍術師と幻獣術師っていうのは……」

「これは亜神族限定の職業なのだけど、古龍術師はその中でも希少な龍種限定で使える物ね。それ以外の種の場合、基本的には幻獣術師になる事ができるわ」

「ちなみに別の術師には……」

「勿論なれるわ。あくまでこれらの術師は亜神族しかなれないっていうだけね」

「ちなみにどんな術を使うんですか?」

「基本的には同種を呼び出して使役したり、呼び出した物の力を肉体に宿せるっていう感じね」

「ルッテの場合ですと、ドラゴンを召喚できますが、ドラゴンの持つ耐性や力をその身に宿すことが可能です」

「へー。何か変わってますね」

「そうね。ちなみに幻獣の場合も基本同様ね。ユニコーンにペガサス、三首犬ケルベロスなんかを呼び出して、その力を得る事ができるのも一緒よ」

「何で龍だけ別なんですか?」

「それは、この世界の幻獣の頂点にドラゴンが存在するからにございます」

「ドラゴンこそこの世界で最も強い幻獣だからこそ、同種でないと認められないという事ね」


───


「この、最後の例外にある、闇術師あんじゅつしってなんですか?」

闇術師あんじゅつしは冒険者ギルドで認めている職業ではないけれど、世界で認知されている、知っておかないといけない職業ね」

「何か名前からしてもちょっと怖い感じがしますけど……」

「はい。闇術あんじゅつとは聖術と真逆の、呪いを力とした術を駆使するのです」

「呪いを……ですか?」

「そうよ。勿論呪い殺すような事もできるけれど、そもそも呪いは人の心に強く影響を与える職業なの。不安や恐怖、痛みを増幅するその術の力は、我々にとても厄介なものよ」

「何でそんな職業が存在するんですか?」

「起源は不明ですが、一節では魔王が狂気ある人間のために生み出した術とも言われております」

「やっぱり、ちょっと怖いですね……」

「そうね。できる限り会いたくはない相手ね」






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