第13話「鼻くそのガン」

『ガチャ』

玄関を開ける扉の音が聞こえる。


「ったくよー、上は本当に何やってんだよっ!」

ドスドスと恐竜のように足音を鳴らし、大声で電話をしながらこちらに向かってくる。


近所迷惑なんて言葉は、嫁の脳内には全くない。


「あー疲れた~」

『ドスン!バンッ!!』

ドスンとソファーに座りカバンをその辺にほっぽり投げる。


出逢った頃と全然違う……もはやこれは詐欺だっ!!

と、回想してみるも、何年前に思い出を遡っても同じ光景が目に浮かぶ。

「ハァ……」

己の節穴っぷりにため息がでる。


「お~い、お茶」


「……」

(ムカツクからシカトしよう)


「オイッ!聞こえねーのかよ!お茶だよお茶」


「……」

(耐えろ耐えるんだ。おゆたん、絶対に今日こそはシカトしてやるんだ!)

※おゆたん=作者の名前


「ヤバッ、黒い鼻くそ出て来た」


「それ鼻くそのガンだよ」

僕は間髪いれず反応してしまった。


「鼻くそのガンなわけあるか!」

こっちだって、音速でボケを振ったのに、奴は光の速さでツッコミを返してきた。


『チッ』

(何が「鼻くそのガン」だ。今思えば、小学生が言いそうなセリフ。こんな事の為に沈黙を破ってしまった自分を恨みたい)


「鼻血が固まっただけだから、それに鼻くそのガンだったら、もう摘出したから治ったわ」

嫁はレスバになればなるほど頭の回転が早くなる性格の悪い人間なのだ。


もう何も言えない。


「お~い、お茶」

と何度も何度も命令する嫁を尻目に、僕はこうしてカタカタとパソコンを叩きこの物語を完成させるのであった。

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